4月は新人さんが来たばかり。臨床実習の経験がない新人さんの教育が思うように進んでいないとの声も聞こえてきます。
そこで今回からは、少しでもヒントになれば……と、「身体に働きかける作業療法」をテーマに進めていきます。
第1回の記事 精神科で身体介入をする目的とタイミングとは?
第2回の記事 精神科で身体リハを行う際の注意点とは?
第3回の記事 記憶に残るリハビリにする方法
プログラム紹介編
身体に働きかける作業療法のヒント(1)「身体感覚の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(2)「散歩の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(3)「アロマの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(4)「ストレッチの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(5)「合唱の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(6)「美容クラブの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(7)「農耕作業の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(8)「朗読会の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(9)「調理実習の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(10)「外来・デイケアの最適化」
新人さんが困らず、考える足がかりになりますように。
Table of Contents
テーマの前に目的を確認!
精神科リハビリテーションの現場で疾患別リハが始まりましたね。
精神科の現場で行われてきた身体リハの考え方と、疾患別リハの考え方……最終的には、その人の人生が健康で幸福に送れるよう支援することに違いはありません。
ゴールは一緒。そこを忘れず、なるべくシンプルに見ていきましょう。
身体に働きかける作業療法って?
日常生活のなか、あなたは自分の身体の状態を気にかけているでしょうか?
多くの方は、気にかけずに過ごしているのではありませんか?
以前、講義の中でお話しした通り「心身一如」
心と身体はお互いにバランスをとっているものであり、どちらかが欠けても病気になります。
病気になって初めて、それが大切だと気が付くのでしょう。大きなショックとともに。
だからこそ、どんな治療を行うにも、どんな人生を歩むにせよ、身体の基本的な機能が安定しているのかどうかが鍵となります。
リハビリテーションを必要とする回復過程ごとに介入の目的、方法は異なるものの、ゴールは一緒。
「その人の人生が健康で幸福に送れるよう支援すること」です。
ワーク1:確認しよう!
- 目的は「その人の人生が健康で幸福に送れるよう支援すること」
- 「心身一如」身体と心はバランスをとっている。
- まず身体に働きかけ、基本的な機能の安定を図ろう。
回復過程を考える
回復過程に明確な定義をつけるのはなかなか難しいので、リハビリテーションにおける回復過程で考えるのがいいでしょう。
急性期→回復期→維持期(生活期)→終末期
が大枠になりますね。
よく図にもかかれていたりします。
ですが、もう少しわかりやすくならんかなぁ……というこで、図にしてみました。
身体を土台として、社会的な関わりまで一つずつ登っていくイメージにしてみました。
ワーク2:あなたが介入しようとしている方は、どの段階の人でしょう?
- 回復過程を確認し、どの段階の人に介入しているのかチェック!
作業療法の目的・身体的働きかけの目的
何を行うにしても、「いつ」、「何のために」、「何をする」のかをおさえておきましょう。
つまり……
- 「いつ」……回復段階
- 「何のために」……作業療法の目的、身体的働きかけの目的
- 「何をする」……アプローチ
これらをまとめていけば、大きく足を踏み外すことはないでしょう。
精神科では図のような例として提示されていますが、目の前の方を当て嵌めてはダメ。
主体はその方ですがから、対話を通じて、お互いの考えをすり合わせる過程を大切にしてくださいね。
その方とあなたとの間に、認識のズレは必ず存在するのですから。
考えをすり合わせるヒントが欲しい方は、作業面接のコラムはいかが?
ワーク3:記入してみよう!
- 「いつ」、「何のために」、「何をする」のか書き出してみよう!
身体のどこに、どのように働きかける?
言い過ぎかもしれませんが、精神科で関わる方は、身体感覚が唯一自分自身を感じて実感できるものです。
見て、触れて、感じるものです。
人はイメージフィードバックシステムを備えています。
脳の中でイメージした運動を、実際に身体で再現し、その感覚を脳にフィードバックして、イメージと運動と感覚を統合させます。
ですが、いわゆる統合を失調している方などはその情報処理が上手くできないように、「イメージ」、「運動」、「感覚」の三者のバランスが崩れていると健康で幸福な人生にならないことが往々としてあるのです。
さぁ、では身体のどこに、どのように働きかけていくといいのでしょうか?
……そうですね、「イメージ」、「運動」、「感覚」それぞれに働きかけながら、その人にとっての最適解を一緒に見つけることが鍵になります。
- 「イメージ」:想像力であり、想像すること。運動の前に行為の目的となるもの。目的や目標に向かうための未来予測もある。身体運動と社会活動を分けて考えよう。
- 「運動」:ベースとなる身体機能面と、日常生活などの活動で必要となる能力面に分けて考えよう。活動では「できる」と「している」に分けるとなおいいですね。
- 「感覚」:いわゆる五感に働きかけること。加えて、呼吸や関節運動、何らかの活動をしている時の身体の感覚に気付いているか働きかけましょう。
ピンときた方は、ICFもチェックしておくとGOODです。
ワーク4:確認しよう!
- 「イメージ」、「運動」、「感覚」それぞれに働きかけよう。
- ICFも確認しよう。
具体的な手段の前に注意点を
まだ抽象的でしたね。もっと具体的に働きかける手段が気になるところです。
ですが、身体に働きかけるには、いくつかの注意点があります。
1:身体性を尊重しよう
その人の身体の状態を尊重するということ。
精神作業療法では身体性を尊重すると言ってますね。
- できる-できない
- よい姿勢-悪い姿勢
- 正しい-正しくない
- 勝ち-負け
- 強い-弱い
などで、その方の状態を裁かないでください。
身体性はその人固有のものであり、誰かとの比較や、上記のような社会的評価をしない事がポイントです。
2:呼吸を促す
生理学で学んだ通り、酸素の有無でATPの量に差が出ます。
有酸素で起きる代謝を促すことで、身体活動の為のエネルギーが効率的に生み出せるんでしたね。
他にも、呼吸はセロトニン神経核に刺激を与え、脳内セロトニンの分泌に関わります。
セロトニンは夜間にメラトニンへと変わりますので、睡眠の状態に影響を与えます。
夜間の睡眠の質が上がれば、睡眠中の代謝と心身の修復が進みます。
結果、その方の身心機能の回復に働きかけることとなります。
3:無理をさせない(疲労に気付いてもらう)
回復過程によって、その方が自分の疲労の度合いに気づかないことがあります。
気持ちに身体がついてこない、とはよく聞く話ですね。
また、昔は「痛い」や「苦しい」くらいが丁度いいといわれていましたが、今や迷信です。
心身の回復を期待するのであれば、ストレスの少ない範囲で行う事が肝要。
心身の回復には副交感神経優位な状態を意図的に作る事が鍵です。
ストレス負荷が大きいと、例えばその分副腎皮質ホルモンを消費してしまい、免疫抑制が不安定になることもあります。
それでも「やった気がしない」などと言う方もいます。ご本人と対話し、すり合わせていきましょう。
おっと……具体的なプログラムの立案まで今回は進まなかった!
仕方ない……ここの続きはリハカレの教材に任せるとします。
ここまでの話を踏まえ、いくつかプログラムを紹介します。
具体的な質問やご相談、こんな記事をお願い!
という声がございましたらいただければ、リハビリカレッジの公式LINEとお友達になって、トークでコメントをくださいね^^
本日は、最後まで読んでいただきありがとうございました。
身体に働きかける集団セッションをしたい方
精神科OTの為の身体アプローチ入門講座がオススメです。
個別の身体介入法と集団で行うものを動画で収録しました。
疾患別リハでしっかりと身体に働きかけていきたい方
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骨盤帯、体幹Back(脊柱・胸郭)、体幹Front(腹部軟部組織)、上肢、下肢、それぞれの働きかけ方を紹介しています。
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参考・引用文献
- 1)作業療法マニュアル31 精神障害:身体に働きかける作業療法アプローチ
- 2)作業療法学全書 改定第3版 作業療法治療学2 精神障害
- 3)脳内物質のシステム神経生理学
- 4)はじめの一歩のイラスト生化学・分子生物学
- 5)統合リハビリテーションVol.1