前回までの「身体に働きかける作業療法」は……
第1回では、身体に働きかける作業療法を紐解きつつ、齋藤が関わる際に気をつけてきたことを加えてお話しました。
第2回では、作業療法の流れと枠組みの大切さを紹介しました。
第1回の記事 精神科で身体介入をする目的とタイミングとは?
第2回の記事 精神科で身体リハを行う際の注意点とは?
第3回の記事 記憶に残るリハビリにする方法
プログラム紹介編
身体に働きかける作業療法のヒント(1)「身体感覚の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(2)「散歩の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(3)「アロマの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(4)「ストレッチの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(5)「合唱の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(6)「美容クラブの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(7)「農耕作業の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(8)「朗読会の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(9)「調理実習の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(10)「外来・デイケアの最適化」
今回は、精神科作業療法で行っている「身体に働きかける作業療法」のなかに、筆者齋藤が常に取り入れているポイントを紹介します。
Table of Contents
脳と学習メカニズムを組み込んだ枠組み
前回もお話しした通り、「枠組み」は大事です。
僕も例外ではなく「枠組み」を活用しています。
それが「脳と学習メカニズム」を組み込んだ枠組みです。
難しい事は言いません。
「学習効果が上がる」枠組みなんです。
なぜ学習効果を上げる必要があるの?
以前、臨床実習指導者会議に出席した際、面白い取り組みをしているという特別講義を体験しました。
- 「ただカラオケをしても、患者さんは翌週には何を歌ったか忘れている」
- 「でも、この方法だと忘れない!」
- 「演劇とうたのコラボレーションだ!」
っと……10余年前なので勝手に脚色しましたが、僕は非常に驚きました。
「確かに!そうなんだよ!」と……
実際、患者さんは作業療法中には打ち込むけど、それ以外の時間にやった事を忘れている方が多いんです。
あなたも心あたりあるのでは?
「中間テストで大変な思いをしたのに、期末試験頃には大変だった事を忘れている」
とかね。
リハ室の中で出来ても、日常生活のなかで使っていなければ意味はありませんよね。
そう、「その人にとって意味のある生活活動」=「作業」です。
な、の、で、「リハビリ中に記憶に残る作業活動を提供する!」という思いから「脳と学習のメカニズム」を組み込むに至ったわけです。
脳と学習メカニズム……具体的には?
より詳しい内容は「脳科学作業療法1日速習講座」か「作業療法OnLineコース」でお伝えしています。
脳は「新しい事」、「繰り返した事」、「特徴的な事」を、情報として残していきます。
それらをどのタイミングに持ってくるのか、が僕の枠のポイントです。
図にするとこうなります。
「なんだよ、作業療法マニュアルとほぼ変わりないじゃないか!」とか思わないでください。
それぞれのタイミングで、3つの要素が入っているのに注目してください!
要素1:新しい事
脳は新しい刺激を求めます。と言っても新しい情報だらけでは安心と安全が保障できません。
新しい事は1セッションに1つだけ。それをテーマにして行います。
要素2:繰り返した事
脳は刺激が繰り返されない事を忘れます。テーマと関連があって、繰り返されることで、記憶に残ります。
記憶に定着すれば、キーワードや特定の刺激を入れることですぐに想起されます。
要素3:特徴的な事
無意味な言葉などが繰り返されると、脳は不要なものとして認識すらしなくなります。
全体の流れのなかでも、どこに特徴的なもの(テーマ)を持ってくるのかを工夫しましょう。
作業療法で脳の生理的変化を!(蛇足)
さぁ、どうですか? 作業の流れも、工夫次第で様々な可能性を秘めています。
本当は、もっともっとあるのですが、先の3つをおさえておけば大丈夫。
蛇足な気もしますが、実践に向けプログラムに組み込む要素をお話ししておきますね。
蛇足
実は精神科作業療法の要素は「脳の生理的変化を促せる構造」になっています。
前回紹介した作業療法マニュアルで言うところの作業の流れ、そこに登場した「呼吸に意識を向けさせる」とありました。ベテランOTさんなら気付いていると思いますが、メンタル不調を持つ方の呼吸は浅くなっています。
目に見えて明らかなのは、姿勢が悪くなっていること。
猫背で、肩甲帯は外転気味。小胸筋周辺は短縮位で動きも少なく、胸郭の縦の動きがなく、肋間の滑走も悪い。
物理的にも呼吸は浅くなってますね。
そんな状況ですから、身体に働きかける作業療法を行い、自身の姿勢と呼吸を意識してもらえれば、酸素の供給量は増え、代謝しやすい身体になります。
血行が改善されれば、脳脊髄液のリンパ管排液も促され、睡眠パターンの改善につながり、睡眠中に身体の修復が進みやすくなります。
十分な休息により……うん、少し調子に乗って話しすぎましたね。詳しくは動画をご覧ください。
いずれにせよ、呼吸一つ取っても身体に及ぼす影響は大きなものばかり。
しかも、作業療法のなかでは「多重課題」をセットするのは当たり前。非常に効果的です。
呼吸以外にも、複数の課題を同時に行い、その日はどの要素を強く出すのか、の匙加減を集まったメンバーさんの顔を見て決めています。
……うん。この話題はもう少し話をしたいですが、あとは教材や配信中の無料動画にお任せしましょう。
まとめ
今回は……
- 日常で使ってもらえるよう、まず覚えていてもらう。
- 作業の流れには「新しいもの」、「繰り返すもの」、「特徴的なもの」を入れる。
- (蛇足?)脳の生理的変化を与えられる作業をするといわゆる回復が早くなる。
- 多重課題で複数の要素を組み込むと効果的。
などをお伝えしました。
もっと具体的な内容を学んでみたい方は、「脳科学作業療法1日速習講座」や「作業療法OnLineコース」がおすすめです。
一緒に練り上げていきましょう!
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本日は、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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