褥瘡予防のために用いいられるベッド用マットレス。
近年では各社から様々な製品が出ており、
その性能も私が新人だった20年前とは比べ物に
なりません。
マットレスには大きく分けて、
ウレタン系の徐圧マットレスと、
エアマットレスの2つに分けられます。
ウレタン系といっても種類は様々で、
高反発系、低反発系、部位別で硬さが違う
など、褥瘡予防には除圧が重要という概念は
メーカにもかなり浸透しています。
当院に導入されている低反発系のマットレスも、
体圧分散を参考に作成されたもので、体圧分布計のデモ
においても通常のマットレスに比べて、仙骨部や
踵、後頭部などの徐圧がうまくできています。
しかし、除圧という面に関してはエアマットレスに
は敵いません。
寝たきりで自力体交ができず、栄養状態も悪く
痩せ気味の方のような、褥瘡リスクが高い方は
褥瘡委員会による評価のもとエアマットレスが導入
されます。
エアマットレスが導入されると、病棟は一安心します。
徐圧の効果が高いので、褥瘡リスクが減らせるからです。
製品によっては自動体交機能もありますのでそれを
活用することも多いです。
しかし、エアマットレスの徐圧機能が高いという
だけで、スタッフによる体交、ポジショニング
を怠っていいわけではありません。
寝たきりの患者さんの場合、徐圧効果による
褥瘡のリスクは減らせますが、「不動」による
拘縮のリスクはエアマットレスでは減らせません。
エアマットレスには徐圧という最大の武器の代わりに、
不安定であるという最大の弱点があります。
皆さんもエアマットレスに乗ったことがあると
思います。乗ると身体が沈み込んでいきませんか?
特に、ベッドサイドで端座位保持練習をしようと
隣に座った際、思った以上にエアマットレスが沈んで
自分のバランスがうまく取れなくなったなんて経験は
一度ぐらいはあるはずです。
あとは、子供の遊び場によくある「ふわふわドーム」
子供は飛び跳ねて楽しんでますが、よく転んでますよね?
あれは、着地した際、自分の予想に反して床面の変形が
素早く起こるので対応できなくなるからです。
(空気の移動が早いため)
大人が一緒に入ると、もっと大変(汗)
普通に歩くだけでも足がパンパンになります。
何が言いたいかというと、
エアマットレス上で過ごす患者さんは、
「とても不安定な物の上で寝ている」ということ。
不安定なところにいるとどうなるか?
身体が必要以上に緊張します。
不安定さを感じた身体は、それを止めようとして
踏ん張ります。
そして、その踏ん張りは、踏ん張りやす筋肉を
選択的に使用します。
踏ん張る時に使いやすい筋肉は、身体を中心に集める
ように使う筋肉です。
(屈曲拘縮が多いのはここに一因があります)
また、自力体交ができない患者さんであれば、
頭頸部を伸展させることで身体をマットレスに
押し当てて安定を図ろうとしたりもします。
エアマットレスを使用している患者さんこそ
適切な体交やポジショニングが必要なのは
想像つきましたでしょうか?
体交や離床により「不動」を解消し、
ポジショニングにより、患者さんが安定して
リラックスできる状態を作る。
この2つはどのマットレスを使っても
怠ってはいけないところです。
エアマットレスを導入したからこそ
増える拘縮リスクもあることを念頭に
入れながら、病棟スタッフと連携が取れる
といいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
国際統合リハビリテーション協会
理学療法士 中嶋 光秀