【作業療法士の苦手克服講座】精神科で身体リハを行う際の注意点とは?[身体に働きかける作業療法](02)

身体リハの注意点

前回までの「身体に働きかける作業療法」では、身体に働きかける作業療法を紐解きつつ、齋藤が関わる際に気をつけてきたことを加えてお話しました。

第1回の記事 精神科で身体介入をする目的とタイミングとは?
第2回の記事 精神科で身体リハを行う際の注意点とは?
第3回の記事 記憶に残るリハビリにする方法
プログラム紹介編
身体に働きかける作業療法のヒント(1)「身体感覚の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(2)「散歩の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(3)「アロマの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(4)「ストレッチの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(5)「合唱の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(6)「美容クラブの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(7)「農耕作業の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(8)「朗読会の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(9)「調理実習の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(10)「外来・デイケアの最適化」

 

今回は、精神科作業療法で行う身体に働きかける作業療法、その具体的な方法を紹介します。

 

精神科で身体リハを行う上で最も大切なこと

目的

いきなりですが問題です。

「精神科で身体リハを行う上で最も大切なこと」

って何でしょうか?
PT、OT、ST関係なく、まずは考えてみましょう。

……考えました?
…………考えたよね?
………………考えた、ってことで!

精神科で身体リハを行う上で最も大切なこととは……

「枠組み」です。

え~前回は「感覚やイメージ、身体性を取り戻すこと」って言ったじゃない!
とか思いましたよね?
そうなんですが、それらの介入をする上でも、「枠組み」は大事な事なんです。

 

枠組みが大事な理由って?

枠組みが大切な理由

枠組みって何だよ! ……ですよね。
一言で言えば「安全な空間づくり」です。(あ、文字数増えた)
精神科……と言うよりメンタル不調になっていると、周囲の情報を適切に処理する力が低下します。
結果、普段は気にならないことでも必要以上に気になってしまうと言うことです。

例えば……

      • 普段なら同僚に軽口を叩かれ、突然怒りの頂点に達してしまう。
      • 先輩の指導が、自分の全人格を否定しているような錯覚に陥る。
      • 以前した失敗以降、周囲の目が気になって、何をするにも不安になってしまう。

などでしょうか。

こういった、普段なら何てことない事も大きく気になってしまい、普段の生活全てに影響を及ぼしている方たちを対象とすることが多いのが精神科作業療法です。

なので「安心・安全な状態」で作業のできる環境を意図的に作ることが作業療法のキモだったりします。

 

枠組みに種類はあるの?

あそび

では、質問からです。

「安全・安心な状態を保障するにはどうしたらいいでしょう?」

既に取り組まれている方もいるでしょう。
先輩から教えられて考えている方もいるでしょう。
初めてのOTさん、PTさん、STさんは今のリハ室を思い浮かべてくださいね。

……考えましたね。

大きく分けると3つです。

      • 時間、参加形態の枠組み。
      • 物理的枠組み。
      • 内容の枠組み。

これら3つを分けてお話ししましょう。

1:時間、参加形態の枠組み。

いわゆる疾患別リハと大きな違いの部分かもしれませんね。

開始と終了時間。休憩時間を明確に決めておき、それを守ること。
 いつ終わるかわからない校長先生の話より、終わりの時間が決まっている授業の方が楽じゃないですか?

疲れたら休める、途中で抜けられる。
 逃げ道をちゃんと作っておくことで、継続して参加しやすい場として知ってもらえます。

無理に参加せず見学だけもOK。
 参加にも色々な形がありますよね。お酒が飲めないけど飲み会に必ず来て結構楽しんでいる人がいるように、「○○しなければならない」場所ではないという事前のルールがその方にとって救いになる場合があります。

2:物理的枠組み。

今話題のソーシャルディスタンス(社会的距離)ですね。ん……誤用……か?

              •  公衆衛生上では「感染拡大防止の為に適切な距離」
              •  社会学上では「個人と個人、個人と集団、集団と集団におめる親疎の程度」

なので、意味としては社会学上のものですね。

先にも話題にしたように、情報処理が適切に行えず、緊張感などが生まれやすい方たちです。

物理的に個人と個人の間に適切な距離を作りながら、回復段階にあわせて物品を共有したり、お互いの身体に触れるなどをしていきます。

3:内容の枠組み。

プログラムの流れ
 これは僕の大好物。基本的な流れを作業療法士毎、あるいは集団毎に持っています。
僕の行っている基本的な流れは脳科学の要素も入っているので教科書やマニュアルと若干の違いがあります。ので、今回は作業療法マニュアルに沿った記載にしますね。

プログラムの流れ

プログラムの内容
 流れは大きく変えずに、メインとなる内容を変えながら行っていきます。
ヨガ→ストレッチ→ボール遊び→セルフでできる組織滑走法……などなど。
同じ内容を繰り返しやる場合でも、その日の目的となる部位を中心にやっていました。
例えば、1週目「体幹」、2週目「上肢」、3週目「下肢」とか。
目的と自身の気にしている部位を意識してタイトルにつける場合もありました。
「腰痛改善ストレッチの日」とかね。

ルールの設定
「遊びとレクリエーションの違いって何か言えますか?」
答えは「ルールを守るか守らないか」です。
遊びはルールを守らないと言うより、集まったメンバー間でルールが変化し続けるものです。
小さなお子さんがいる方はピンとくるかもしれませんが、一緒に遊んでいるとその子のマイルールがどんどん変化していき、合わせるのが大変!ってことがありませんか?
それが「遊び」
対して「レクリエーション」はあらかじめ決められたルールが存在します。
スポーツやゲームを思い浮かべてくれればすぐにお気づきと思います。
そう、それがルール設定という形での枠組みです。
情報処理が……ってもういいですよね……大変なので、枠を決め、そのルールが破られないことで「安心と安全」ななかで参加ができるんですね。

 

早速組み立ててみよう!

折り紙

さて、ここまで読み進めていただいたのなら「身体に働きかける作業療法」のベースが整ってきたかと思います。
PTさんやSTさんはどう感じたでしょうか?

「OTさんって、こんなことを考えていたのか!」
「その考え方は疾患別でもつかえそう!」

って部分が発見できていたら嬉しいですが……っとっと、話を戻します。
ベースが整ったなら、早速具体的に組み立ててみましょう!

……ん?

もっと具体的に今すぐ使えるテンプレがほしい?

とか思ってる……のかな?

う~むむむ……
流石に紙面だけでは足りなそうだなぁ……

なので!動画を紹介します!

昨年、リハカレメンバーシップ向けに行った講義の編集公開版動画です。
前回や今回ピックアップした講義スライドなどを使っ講義したものです。
あわせてご覧くださいね。

ということで、次回に続きます!
次回は、脳科学の要素を加えてお話しします。

お楽しみに!

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本日は、最後まで読んでいただきありがとうございました。

サイトー
リハカレ認定講師 齋藤 信

 

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骨盤帯、体幹Back(脊柱・胸郭)、体幹Front(腹部軟部組織)、上肢、下肢、それぞれの働きかけ方を紹介しています。

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