身体に働きかけるシリーズ10回目。
「維持期」、特に「外来」や「デイケア」で行われる作業療法例を紹介しています。
第1回の記事 精神科で身体介入をする目的とタイミングとは?
第2回の記事 精神科で身体リハを行う際の注意点とは?
第3回の記事 記憶に残るリハビリにする方法
プログラム紹介編
身体に働きかける作業療法のヒント(1)「身体感覚の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(2)「散歩の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(3)「アロマの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(4)「ストレッチの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(5)「合唱の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(6)「美容クラブの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(7)「農耕作業の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(8)「朗読会の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(9)「調理実習の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(10)「外来・デイケアの最適化」
「外来作業療法」、「デイケア」では、既に社会生活に戻った方に介入します。
そのなかで、「身体に働きかける」意義はどこにあるのでしょうか?
何をしたらいいのでしょうか?
今回はその2つを簡単に紹介しますね。
■維持期の目的(おさらい)
まずは維持期の目的をおさらいいましょう。
維持期では、療養病棟で医療的支援を受けながら生活される方と、地域のなかで生活しながら社会参加する方に分かれます。
作業療法の目的は、
- 再燃・再発の予防
- 生活の質の維持・向上
- 社会参加の援助
となり、
その目的に向かって身体に働きかけるには、
- 楽しみながら生活体力を維持する。
- 健康の自己管理ができる。
ことを目指します。
今回は「地域のなかで生活しながら社会参加する方」向けに話を進めます。
■外来作業療法、デイケア、ショートケアの違いは?
大前提になるお話として、
- 外来作業療法
- デイケア
- ショートケア
それぞれの違いをおさえておきたいところ。
利用者さんにも、提供する作業療法士にも共通して気になるポイントをお伝えしますね。
それは「時間」が違うということ。
精神科作業療法は2時間、デイケアは6時間、ショートケアは3時間が標準です。
標準ってことは、必ずその時間を行わなければならないということ。
3時間や6時間、デイケアに参加し続けるのが難しい方は、外来作業療法を選択することがあります。
(もちろん、他にもたくさんの違いがありますので、厚労省の資料等で確認してくださいね)
■違いはあるけど、大きな目的は一緒!
繰り返しますが、この時期の作業療法目的は
- 再燃・再発の予防
- 生活の質の維持・向上
- 社会参加の援助
となり、その目的に向かって身体に働きかけるには、
- 楽しみながら生活体力を維持する。
- 健康の自己管理ができる。
となります。
外来、デイ、ショートでそれぞれ時間や人員配置、最大参加人数などが異なっていても、目的は一緒です。
特に「生活体力の維持」に関連して、「疲れない身体づくり」、「仲間との一体感を感じる」などのプログラムを提供することになります。
■疲れない身体づくり
入院中と異なり、全て自分の裁量で生活を維持することになります。
そんななか、入院中と同じ生活リズムを維持するためにデイケアなどを利用することとなります。
なかでも、「運動」はよほど好きな方でない限りあまりしません。
生活体力……日常生活を送るうえで最低限必要な体力を維持しようとすると、意図的に運動をする時間が必要です。
簡単なものでは、作業プログラムに入る前に、必ずラジオ体操を2番まで全てやるなど、軽度の負荷でも毎日継続する内容を行えるようにします。
加えて、週2~3回は、日々の体操以外に「体力をつける」目的で、
- ウォーキング
- ダンス
- 強めの負荷の体操
- 個人競技のスポーツ
などを行います。
■仲間との一体感を感じる
次に「仲間との一体感を感じる」プログラムです。
こちらは「社会生活の援助」につながるプログラムとして行います。
今回は「身体に働きかける作業療法」として紹介しますので「健康の維持」にも効果的です。
先にプログラムの例を挙げると、「集団競技」のスポーツやゲームを提供します。
ただし、サッカーやバスケットボールはあまりお勧めしません。
双方のチームメンバーが入り乱れるので、参加者の性別や年齢などにバラツキがあると怪我の原因になります。
バレーボールやソフトボール、草野球、ゲートボールなどがお勧めです。
適度に身体を動かすことになるので、ストレスの発散や、感情の開放、身体を動かすことの爽快感を感じていただけます。
また、チーム戦なので、「仲間との一体感」を「協力プレイ」、「課題に向けてのコミュニケーション」などを通じて実感できます。
自分一人ではなし得ないことを協力して達成する体験が、「集団への所属意識」を高め、社会生活を維持する原動力になります。
■まとめ
今回は、外来、デイケア、ショートケアで行う、身体に働きかける作業療法を振り返ってみました。
基本方針は、その方の「生活体力」、「生活の質」を維持しながら「社会生活の支援」を行うことです。
目的を確認しつつ、今行っている介入が、その目的に近づくためのものになっているのかをチェックしましょう。
今回で「身体に働きかける作業療法」シリーズを一旦修了にしようと思います。
より具体的なプログラムの紹介……あった方がいいかな?
次回からはそんな方向で考えております。
集団療法の組み立て方シリーズとセットで読んでいただけるものにしますね。
では、また次回のコラムでお会いしましょう!
具体的な質問やご相談、こんな記事をお願い!
という声がございましたらいただければ、リハビリカレッジの公式LINEとお友達になって、トークでコメントをくださいね^^
本日は、最後まで読んでいただきありがとうございました。
身体に働きかける集団セッションをしたい方
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個別の身体介入法と集団で行うものを動画で収録しました。
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疾患別リハでしっかりと身体に働きかけていきたい方
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骨盤帯、体幹Back(脊柱・胸郭)、体幹Front(腹部軟部組織)、上肢、下肢、それぞれの働きかけ方を紹介しています。
参考文献
- 作業療法マニュアル31精神障害:身体に働きかける作業療法アプローチ
- 作業療法学全書2基礎作業学
- ひとと集団・場【新版】治療や援助、支援における場と集団のもちい方