似ているようで違う、慢性腎不全と透析患者の運動療法に対するリスク管理

透析は失った腎臓機能を補完する「腎代替療法」

血液透析は慢性腎不全の末期になると実施される、「腎代替療法」の一つです。
人工透析患者さんのリハビリを行う際には腎機能や心機能についてのリスク管理が重要になってくるのですが、人工透析の導入前の患者さんと、導入後の患者さんでは、リスク管理に違いがみられます。

慢性腎不全について

腎不全とは、何らかの原因で腎機能が低下し、体液の恒常性を保てなくなった状態を指します。
慢性腎不全は、糸球体濾過量が60ml/分/1.73㎡未満もしくは0.15g/gCr以上のタンパク尿が3ヶ月以上続いている状態で、自覚症状に乏しいのが特徴です。そのため、症状を自覚した時点ですでに慢性腎不全の末期にあたることが多く、腎代替療法(人工透析含む)を提案されることが多いのが現状です。

腎不全の状態をごく簡単にいうと、腎臓で血液を濾過する機能が低下することにより、老廃物や余分な水分の排出が困難になり体内に残るため、水分過多や老廃物の蓄積によりさまざまな症状を起こします。つまり、慢性腎不全の状態では、水分コントロールも老廃物のコントロールも上手くできていない状態です。

慢性腎不全患者さんと透析患者さんの違い

慢性腎不全患者さんと透析患者さんでの大きな違いは、血液を十分に濾過する機会が有るか無いかです。
もともと慢性腎不全の方が透析に移行するので、腎不全症状は透析患者さんにもあります。しかし、2日に1回透析で濾過をすることができるので、体液内の水分や老廃物のコントロールがある程度できている状態になります。

つまり、慢性腎不全患者さんは体内に水分や老廃物が溜まりっぱなしですが、2日に1回透析で濾過ができる慢性腎不全の患者さんでは、抱えるリスクが違うということです。

運動リスクの違い

筋肉が活動することによりCr(クレアチニン)が産生されます。また、タンパク質を接種すると肝臓で代謝されBUN(尿素窒素)が産生されます。この2つの物質は通常は尿として排出されます。これらの物質が身体に蓄積されると尿毒症という危険な症状を引き起こします。

慢性腎不全患者さんは腎機能低下により尿の生成が難しいので、常に尿毒症の危険性にさらされています。また水分過多になっているので、心臓にも負担がかかっています。つまり、運動すると老廃物が産生され、かつ排出されにくく尿毒症になるリスクがあり、また運動自体が水分過多の心臓に負担を掛ける可能性が高い状態です。

透析患者さんは2日に1回透析で濾過ができるので、十分ではありませんが、老廃物と水分のコントロールが可能なので、心負荷に対するコントロールをメインに運動を考えれば大きなリスクはありません。

同じ病態を起因としていますが、治療の状況(投薬治療中なのか透析に移行したのか)によって、運動時のリスク管理が変わります。まだガイドラインでも慢性腎不全患者さんへの運動療法についての明確なエビデンスは出ていないのが現状です。(運動により腎不全症状を悪化させる可能性があるから)

慢性腎不全患者さんの運動療法をするなら、心機能と腎機能(CrとBUN)を常に気にしておく必要がありますし、透析患者さんであれば、心機能(特に心不全の状況)の把握をメインにして運動を進めていくことが必要です。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師
理学療法士 中嶋 光秀

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