動作分析の前に姿勢分析?〜姿勢分析の基本⑧坐位バランスと上肢活動?

前回のおさらい

前回の内容はこちら

坐位は抗重力位での頭頸部・体幹の振る舞いをみているというお話でした。
中でも坐位バランスはその振る舞いによってバランスの取り方が決まるので、
頭頸部・体幹の可動性の有無は重要な要素になります。

安定した坐位とは?

臨床でもよく坐位が安定しているので自立できてます。というような表現をすることがありますが、
「安定した坐位」とはどのような坐位を指すのでしょう?


上図のような3つの坐位姿勢をみたときに、どの坐位が安定していますか?と尋ねたら、
皆さんならどう答えますか?(3つとも静止できているのが前提です)

良姿勢か?と問われれば右端は×ですが、安定しているか?といわれれば、「静止できている」なら
3つとも「安定」しています。

安定=固定ではない

静止ができていれば、物体的には安定しています。しかし、私たちは動くことが前提にあります。
私たちが求めているのは、その場にとどまること(固定)ではなく、動きの中で坐位を安定して取れる
というような「動的安定性」のことを、「安定した坐位」「坐位バランスが安定している」
と表現します。

そのため、安定した坐位を求める場合

1.坐位保持ができるかどうか?
2.前後左右に荷重していく際に、頭頸部をヘッドアップしたまま骨盤・体幹が動いていくか?
3.2の動きが他動運動・自動運動それぞれでどんな反応をするのか?

に着目する必要があります。

坐位バランスをADLに活かすには?

バランスをみるという側面だけでいえば、頭頸部・体幹の振る舞いだけでもOKですが、
ADLになるとまた違ってきます。坐位になると上肢を使うことができるので、リーチ動作
がバランスとの関連を帯びてきます。

上肢を空間で操作するためには坐位バランスが安定していなければなりません
わかりやすい場面だと、坐位バランスの悪い方は、手でベッド端を掴んでいたり、両大腿の上に乗せた手を離せない、すぐ何かに捕まろうとするような反応を示します。

つまり、本来なら自由に使わなければならない上肢を「バランスを取るため」に活用してしまい、
上肢操作の妨げになる=ADLの阻害因子になるということです。

そこで、「上肢活動がスムーズにできる坐位であるか?」というのが
坐位バランスを要る上でのポイントの一つになります。

リーチ動作の誘導(プレーシング)を応用したバランスの見方

ここでみたいバランスは、対象者の現在の身体機能において自動的に調整されたバランスです。
そのため、評価の段階で「バランスの練習をするのでその前に前後左右のバランスを見ます」というような
口頭指示はしません。(随意運動としてどこまで手を伸ばせるか?ということとは別)

方法は

1.対象者の片手もしくは両手を他動的にゆっくり挙上していきます(軽度外転位で)
2.その際に抵抗感があるか?どこまで挙上すると抵抗感が増えるのか?を感じます。
3.挙上で抵抗感が少なければ、前ならえのポジションから肘を後ろに引くような方向に誘導して、
その際抵抗するのか?(初めから?途中から?)外力に追従して肘を後ろに引くのか?
をみる

ここでみているのは上肢が活動しようとした際に、坐位バランスが機能しているか?
ということです。上肢の抵抗が強い・押しつけるような反応が増える場合は、上肢がバランスを取ることに参加している証拠になるので、円滑な上肢活動に必要な安定した坐位ではないという判断をします。

また、上記の1の状態(上肢の挙上外転位)から、リーチアウトの方向(左右、前)にリーチを誘導した際に、
骨盤・体幹が追従して動いてくれるか?も重要な視点になります。上肢は空間で操作できるけど、「リーチ」になると範囲が狭いとなると、安定性限界の狭さがADLの阻害因子となります。

最後に

このように、坐位は上半身が抗重力位になることで上肢活動が可能になるという側面を持っています。
意外と見落としがちな坐位姿勢・バランスですが、上肢活等やADLに直結する重要な姿勢・バランスである
ということを再認識していただき、臨床のヒントにしていただければ幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋光秀

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