【作業療法士の苦手克服講座】新人向け!身体に働きかける作業療法のヒント(5)「合唱の活用」

合唱

身体に働きかけるシリーズもとうとう5回目。
現場でよく見るアプローチ、その内側や何を考えて組み込んでいるのかを紹介してきました。

第1回の記事 精神科で身体介入をする目的とタイミングとは?
第2回の記事 精神科で身体リハを行う際の注意点とは?
第3回の記事 記憶に残るリハビリにする方法
プログラム紹介編
身体に働きかける作業療法のヒント(1)「身体感覚の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(2)「散歩の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(3)「アロマの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(4)「ストレッチの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(5)「合唱の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(6)「美容クラブの活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(7)「農耕作業の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(8)「朗読会の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(9)「調理実習の活用」
身体に働きかける作業療法のヒント(10)「外来・デイケアの最適化」

 

今回は「それって治療なの?リハビリになるの?」と思われがちな「合唱の活用」を紹介します。

■今回のコラムをアニメ化しています。

お時間の無い方は、2分のアニメ動画をお試しください^^

 

■合唱はリハビリになるのか?

合唱

理学療法士の皆さんにとってはピンと来ないでしょうか?
合唱がリハビリなの?」と、疑問符がついているのかもしれませんね。
言語聴覚士の皆さんなら、発話や嚥下機能に影響を与えそう……と思う事でしょう。
作業療法士は少し違った視点でみています。
それは「社会的つながりの準備」です。

 

■合唱が身体に働きかけるポイントとは?

身体に働きかける

身体に働きかける作業療法として紹介しているのに「社会性?」と思いましたか?
そうですね。確かに一見かけ離れたように見えます。
ですが、離れているだけで、道は繋がっています。

これまで「身体内界」に注目して身体感覚を取り戻すプログラムを紹介してきました。
今回は「身体外界」に注目する要素が入ってきます。

身体を整えつつ、自分はどのくらい歌えているのかを把握し、歌を通じて他人と合わせるために、他者の存在を確認していくことになります。

 

■合唱すると身体で何が起きているのか?

感情

とは言え、なぜ歌っただけで「社会的つながり」を促せるのでしょう?
そこには「セロトニン活性」が関係してきます。

セロトニン」は、高揚感・依存症に影響する「ドーパミン」、ワーキングメモリー・不安感に影響する「ノルアドレナリン」のバランスをとり、幸福感や集団の維持に影響する「オキシトシン」とも関連してきます。
セロトニン」が感情調整物質として脳内で働くと言われる理由ですね。
その「セロトニン」が脳内で分泌されるには、3つの方法があります。その一つが「リズム運動」です。

 

■合唱すると脳が整う?

脳が整う

代表的なリズム運動は「呼吸」です。
これまで紹介した「ストレッチ」や「ウォーキング」もリズム運動ですが、何が起きているのかと言えば……

同じテンポの繰り返し運動が5分以上続くと、脳内でセロトニンの分泌が始まります。

そう「歌をうたう」ことは、「セロトニン活性」そのもの。

一定のテンポで歌い続ける=一定のテンポで呼吸運動を意識して行う。

しかも、作業療法でよく使われる唱歌は、1曲平均2.6分(筆者ざっくり調べ)。
参加者にあわせてテンポを遅めにすることもありますので、5分なんてあっという間です。
もちろん120分の間に何曲も歌うので、確実に脳内セロトニンが分泌されます。

 

■脳が整うと身体にどんな変化が?

セロトニンの効果

セロトニン」には脳に与える5つの効果があります。

      • 大脳の覚醒
      • 自律神経の調整
      • 痛覚の抑制
      • 不安の抑制
      • 抗重力筋の活性

これらが働くため、合唱中に不安になることもなく、身体を動かしやすく感じます。
大脳、特に「前頭前野の血流量」が上がるので、他者に対する「共感力」が高まります。

「身体は元気に、心も軽く、仲間と仲良く」
OTさんが患者さんにフワッと説明する話の裏には、こんなロジックが隠されていたのです。

 

■改めて、合唱の目的は?

作業療法の目的

では、改めて合唱の目的を確認しましょう。

      • 基本的な心身機能の活性化。
      • 他者を意識し呼吸リズムを合わせる体験をする。
      • 他者と共にひとつのものを創り上げる達成感、喜びを体験する。

これらを通じて、「社会的なつながり」を促すための準備をしていきます。

そう、今回はあくまで「準備」です。

遊びやレクリエーションのように、心理的に「侵襲されない場」を使って「疲れた心を癒し」つつ、「社会に戻る準備」の「準備」を始めていくことが大きな目的になります。

 

いかがでしたか?
今回は「合唱」を「治療」として行っている作業療法士の頭の中を紹介しました。
もちろん、それらをより効果的に行うための具体的な方法などもありますが、それらは現場の先輩方に譲ります。
先輩が言語化して説明してくれない部分を気づくきっかけにしていただければ幸いです。

 

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リハカレ認定講師 齋藤 信

 

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参考文献

 

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