【作業療法士の苦手克服講座】身近で知らないココロのハナシ(14)身体表現性障害とリハ介入

身体表現性障害

身近で知らないココロのハナシ」シリーズ。
神経性障害」のおさらい中です。

なかでも、今回は「身体表現性障害」に注目します。

前回までの内容が知りたい方は以下のリンクをチェックしてくださいね。

【まとめ記事】精神科作業療法・精神科リハビリテーションの基礎知識
身近で知らないココロのハナシ(9)神経性障害ってなんだっけ?
身近で知らないココロのハナシ(10)不安障害の概要とリハ介入
身近で知らないココロのハナシ(11)強迫障害の概要とリハ介入
身近で知らないココロのハナシ(12)ストレス関連障害とリハ介入
身近で知らないココロのハナシ(13)解離性障害とリハ介入
身近で知らないココロのハナシ(14)身体表現性障害とリハ介入

 

■身体表現性障害とは?

さまざまな身体症状を訴える症状群です。
共通する特徴は「著しい苦痛と機能障害を呈する身体症状の顕在化にある」とのこと。

DSM-5になり、
「身体症状が医学的に説明不能」
から
「身体症状に加え、それに対する思考・感情・行動の異常な反応にある」
と変わった点が大きな変更点と言えます。

前回の解離性障害と同じく、「疾病逃避」や「疾病利得」の心理特性があることもおさえておきましょう。

 

■DSM-5の分類を確認しよう

今回もDSM-5の分類から、代表的なものを見てきましょう。

◆身体症状症

一つ以上の身体症状のために苦痛を感じているか、日常生活が障害され、さらにその身体症状や健康不安に関連した過剰な考え、感情、行動が認められるもの。自分は重篤な病気にかかっているのではないか、と健康不安に向ける時間やエネルギーが過剰な状態。

◆病気不安症

いわゆる心気症。身体症状はないか軽度なのに、重篤な病気にかかっているという過度のとらわれや先入観のある状態。

◆変換性/転換性障害

随意運動機能あるいは感覚機能の変化を示唆される症状が一つ以上ある。そのため著しい苦痛または社会的・職業的機能の著しい障害を引き起こしている。症状と神経、身体疾患の間に臨床所見上の不一致があるので、説明が困難なものでもある。
よくみられるのは、全身を弓なりに反らせたり、ひきつけ、痙攣、四肢の脱力、運動失調に失立失歩、失声、嚥下困難、視力・聴覚消失など。

◆他の医学的疾患に影響する心理的要因

ストレスに代表される心理的因子が、症状の進行や悪化、回復からの遅れなどに関連するような身体疾患のこと。
過敏性腸症候群、過換気症候群、円形脱毛症、アレルギー性鼻炎、片頭痛、腰痛症、慢性疼痛、更年期障害、月経前症候群など。

◆作為症/虚偽性障害

身体的または心理的な徴候・症状の捏造あるいは偽りの病気や怪我を引き起こすこと。
患者は捏造や偽りであることを認識しており、詐病のような個人的な利益や報酬……例えば保険金や休暇……のために行っていないことが特徴。周囲の同情を買ったり、子供を看病する良い親として見せたいなどの理由で傷害致死罪になった母親のニュースなどをきいたことがあるのではないでしょうか?

 

■どんなリハ介入をするのか?

今回もまた特徴的なものですね。
療法士として関わる上で、身体症状の原因追求をしないなど、心理的な距離感を適切に保つことが求められます。
まずは基本をおさらいしてみましょう。

◆作業療法評価と基本方針

訴えを傾聴し身体症状を把握する。
身体的対応を優先する。
身体機能の向上を図る。
症状への意識を高めないために症状の原因などにはあまり触れない。

◆作業療法の目的、目標

訴えに耳を傾け不安や苦痛を聴き取る。
受容的、師事的態度で精神療法的に関わる。
心理的距離を保ち、過度な依存や退行を防ぐ。
自己愛を満たし、自己表現できる機会を提供する。

◆作業療法で何をするか

その人に合った身体的練習や対応を優先する。
同時に、創作的な作業活動を提供し、自己愛を満たし健康的な自己表現を行う。
難易度は、修正可能で本人のペースで行えるものが良い。

◆注意すべき対応

適度な心理的距離を保つ。
身体症状を意識させすぎないよう、親身に話を聞きすぎない。
安易に家族関係など心理的葛藤に触れないようにする。
身体的症状や創作的な活動の話題を優先する。
検査結果で異常なしと出ても、身体症状があることを否定しない。
その苦痛を理解し、協力していくことを伝える。
身体症状と心理的葛藤の関連性を追求し過ぎず、時期を待つ。

 

■まとめ

検査で異常所見がなく、身体症状を訴えてくる方の背景は非常に複雑なものです。
ネグレクトの経験などから、満たされない子供時代を経ている方もいます。
自己愛を満たしつつ、健全な自己表現ができる機会を作業療法のなかで作り出せるといいですね。

 

今回は以上となります。
随時追記や分類を増やしていきますので、皆さんも是非ご意見やご要望をお寄せください!

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リハカレ認定講師 齋藤 信

 

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■ 参考資料

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