【作業療法士の苦手克服講座】集団療法の組み立て方(2)「基本のほ」で学ぶ集団療法の構造とは?

集団療法の構造2

前回より「集団療法の組み立て方」をテーマにお話ししております。

前回は、今あなたがしている集団プログラムは「リハビリ」として成り立ってますか?
という確認をしました。
今回は、もう一歩踏み込んで行けたら……と考えています。

 

■集団療法の組み立て方の概要

今後、紹介する内容と順番をザックリ紹介しますね。

      1. 集団療法とは?定義と基本的な考え方
      2. 集団療法の基本構造
      3. サイトー流の構造

こんな流れで考えています。
全3回、3週間でまとめますね。

 

■先に注意点を!

発見

今回は「集団療法の基本構造」をお話しします……が、
先に注意点をお話しすると「シンプルにわかりやすく説明すると誤解を招く」部分が増えていきます。
初心者で、しかも集団療法を手っ取り早く作りたい!と考えている人を、落とし穴に嵌めてしまいそうで怖いです。
怖いですが、なるべくわかりやすく伝えられるよう頑張ってみます^^

 

■集団療法の基本構造を考える前に

フォローアップ

集団療法の基本構造を考えようとすると、必ずおさえておかなければならないことがあります。

それが「治療として集団を用いるのか」です。

集団を用いることで、集団を構成する参加者同士の関係性や、集団の持つ目的、課題、場所や場などの様々な要素が持つ効果を期待します。
逆に、集団の効果を期待しないのであれば、集団療法を選択する理由はない、と言えます。
集団を用いる意味、目的、効果が確認できているなら、先に進みましょう!

 

■集団療法の治療因子(ひとと集団・場より)

一応、集団を用いる意味、目的、効果を確認する足掛かりとして、ひとと集団・場より治療因子を引用しておきますね。

      • 希望をもたらすこと。
      • 普遍的体験。
      • 受容される体験。
      • 愛他的行為に伴う自己尊重。
      • 同じ病いや障害を生きる人たちからの情報。
      • 他者とのかかわりを通した自己の状況や自己能力の現実検討。
      • 模倣による学習と修正。
      • 自己開示を伴うカタルシス。
      • 凝集性。
      • 共有体験。
      • 実存的体験。

(ひとと集団・場 新版/山根寛著/より引用)

これらのいずれか、あるいは複数の効果を期待して集団療法を行なっていきます。

 

■ようやく集団療法の構造を

迷子

ようやく集団療法の構造について触れていきます。

既にお気づきかもしれませんが、集団は複数の人の集まりであり、個々の目的が一致しているわけではありません
集団を運用するうちに、変化していくことは避けられません流動的になることもあると覚えておいてください。

では、それぞれの構造因子を紹介します。

集団の大きさ(参加者数)

目的に応じて、参加者の人数を変えていきましょう。
参加者の人数が少ないと、相互交流が活発になります。参加人数が多い場合は相互交流は希薄になりがちです。
交流が目的なら少人数(4~5人程度)で行い、精神的侵襲の少ないなかで活動をするなら多くの参加者(14~15人程度)がいるなかで行うなどを検討しましょう。

参加者の特質等

作業療法士がよく気にする「患者さん同士のギャップ」がこれです。
性別、年齢、疾患、回復状態、目的など、参加する方たちのもつ特質……要素は、差が大きすぎないことがポイントです。
いわゆる健常者であっても「異物を排除しようとする」行為をとります。(新人いびりや出る杭は打たれるのアレです)
適度なギャップなら良い影響を与え合いますが、大きすぎれば集団が機能しなくなることもあるので注意が必要です。

開放度

これも作業療法士がよく使う「クローズド」、「オープン」、「セミクローズド」などと言う言葉がありますね。
これは集団に参加する自由度のことを言います。つまり、どれだけ出入り自由か?ってことです。
 クローズド:閉鎖集団。小集団で治療や訓練の要素が強く、参加者間の相互の影響が強く作用する。
 オープン:拘束力が少なく、制限がほとんどない。誰でも参加しやすい分、相互作用は希薄。
 セミクローズド(セミオープン):多少の参加者の出入りがあるなか継続される集団。作業療法の現場でみる広義の集団療法はこれ。

スタッフの役割

スタッフの(最低限の)基本構成は2名。メインで運営をする療法士が1名。その補助をするスタッフが1名。
経験からも患者5に対し療法士1が理想ですが……難しい現場が多いですね。
もちろん目的に応じてスタッフの役割が変わるので、性別、年齢、職種も考慮しつつ、知識や経験、またそれら以外のスタッフ個人の要素も含め、その場での役割を決めておくことが望ましいです。

表現・交流手段

ひとと集団・場で山根先生は「ことば、動作、作業」があると言っています。
それぞれ対象や目的によって使い分けられます。
ことばは説明に、動作は表現に、作業は関わりの手段として用いられる場面がよくみられますね。

集団プログラムの目標

治療には、何がどこまで進んだのか、変化したのかを測る尺度が必要です。
それが「プログラム目標」です。
なぜその場にいるのか。そこで何をしてどうなってくのか。
目標を共有することで集団療法が治療として成り立ちます。

集団のもつ空気

集団にはそれぞれ空気がうまれます。それは集団の内部にいるとわからなくなるので、外から客観視することが必要です。
そうすることで、その集団が外にいる人間からどのように見られているのか、どんな価値をもつ集団なのかを知ってもらうことでその集団に参加しているひとの自尊心を高めることにつながります。

時間・頻度・期間

結論から言えば、時間の長さよりも質優先です。
もちろん集団が目標とすることにもよりますが、参加者の意欲などがさがるようなら、短い時間で頻度を増やす方が良い場合があります。
生活改善などは特にその匙加減が難しいですね。短時間すぎても頻度を減らしすぎても効果が得られませんから。

場所・空間

基本的には物理的な環境に注目すればOKです。
ただし、その場所が持つ意味が本人に与える影響については考慮が必要です。
不良漫画のステレオタイプな例を出せば「放課後便所の裏にこい」と言われていい気分になる人はいないということです。

 

■今回のまとめ

今回は集団の構造に注目してお話ししました。
誤解や解釈の違いなどもあるかもしれませんので、是非参考・引用文献をチェックしてみてくださいね。
次回は、今回内容を踏まえて、齋藤がどんな集団プログラムをしていたのか、を紹介します。

《次回につづく》

 

現在、ご要望もあり「集団療法のつくり方」をeラーニング教材またはLIVE講義にむけ準備中です。
内容をいち早く知りたい方は、リハビリカレッジの公式LINEとお友達になって、トークで「集団療法」とコメントをくださいね^^
優先してお知らせできるよう頑張ります!

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本日は、最後まで読んでいただきありがとうございました。

サイトー
リハカレ認定講師 齋藤 信

 

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参考文献

 

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