「身近で知らないココロのハナシ」シリーズ。
「神経性障害」のおさらい中です。
なかでも、今回は「不安症群/不安障害群」に注目します。
前回までの内容が知りたい方は以下のリンクをチェックしてくださいね。
【まとめ記事】精神科作業療法・精神科リハビリテーションの基礎知識
・身近で知らないココロのハナシ(9)神経性障害ってなんだっけ?
・身近で知らないココロのハナシ(10)不安障害の概要とリハ介入
・身近で知らないココロのハナシ(11)強迫障害の概要とリハ介入
・身近で知らないココロのハナシ(12)ストレス関連障害とリハ介入
・身近で知らないココロのハナシ(13)解離性障害とリハ介入
・身近で知らないココロのハナシ(14)身体表現性障害とリハ介入
Table of Contents
■不安症群/不安障害群の概要
不安症群/不安障害群に共通する特徴は、
「過剰な恐怖および不安、そしてそれらに関連する著しい行動上の障害(回避行動など)」
標準精神医学より
と言われています。
また、DSM-5によれば、「恐怖」と「不安」を以下のように定義しています。
- 恐怖:現実の、または切迫していると感じる脅威に対する情動反応。
- 不安:将来の脅威に対する予期。
なるほどと言った感じですね。
■リハビリ中に気にしておきたい恐怖と不安
恐怖と不安は、それぞれ特徴的な行動などをします。
一般的な反応であったり、正常の範囲内と判断されるものがほとんどですが、病的と判断されるポイントにもなります。
恐怖
- 危険が差し迫っているという思考
- 闘争や逃避のために必要な自律神経系の興奮
- 逃避行動
不安
- 危険に対処するための筋緊張や覚醒状態の維持
- 警戒行動
- 回避行動
これらの反応や行動が、「過剰」であったり「発達的に適切な期間を越えて持続している」と、病的と判断されていくことになります。
■DSM-5の分類では?
前回に引き続きDSM-5の分類にて不安症群を見ていきます。
分離不安症
愛着を持っている人物からの分離に関する、発達的に不適切で、過剰な恐怖または不安を訴える状態。
選択性緘黙
言語能力は正常だが、選択された特定の場面や人(学校などの社会的な状況)に対して、話すことができないという状態。これにより、学業の成績やコミュニケーションを妨げてしまう。
限局性恐怖症
特定の対象または状況への顕著な恐怖と不安を示す。
飛行機や動物、高所や血などに対して、職業上の遂行ができなくなるなどの障害となる。
社交不安症
他者の注目を浴びる可能性のある、社交場面に対する著しい恐怖や不安を示す。
表面上普通に見せても、常に他者の言動や行動に不安を感じている。(文末紹介の動画参照)
パニック症
繰り返される予期しないパニック発作が起きる。
突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内にさまざまな症状(動悸、息切れ、窒息感、めまいやふらつきなど)が起きる。
広場恐怖症
公共交通機関の利用や広い場所、壁に囲まれた場所などで、著しい恐怖や不安を感じる。
パニック様の症状や、耐えられない感覚などが現れる。
全般不安症
仕事や学業などの多数の出来事または活動についての過剰な不安と心配(予期憂慮)が起こる日が起きない日より多い状態。
物質・医薬品誘発性不安症
パニック発作または不安が見られる。
薬物やアルコールなどの物質を服用、中毒中または離脱時に現れる。
■作業療法でどうする?
分類のさわりだけでも結構な量になりましたね。
ようやくですが、作業療法で何をしているのかを紹介します。
何度もお伝えしていますが、「社会生活に戻る準備」が大きな目的です。
そのために、少しずつ具体的に考えていく流れとなります。
◆不安障害に対する作業療法の目的、目標
- 不安に対する対処行動の獲得
- 不安や恐怖などの症状回避
- 日常生活行為の遂行困難の改善
◆不安障害の作業療法で行うこと
- 不安に支配されない健康的な時間をつくる。
- 作業選択は、助言しやすく、実用的で、手軽に取り組め、修正可能なものを選択する。
- 自己表現や感情表出の機会をつくる。
- 恐怖場面や回避場面への耐性づくり。
- 認知行動療法。
◆作業活動、アクティビティ例
- 革細工(少ない工程で日常生活で使えるもの。栞、小銭入れ、コースターなど)
- コラージュ(あらかじめ切り取った写真などから始め、段階的に自由度を増やす)
- スポーツ(ストレッチ、ヨガ、エアロバイクなど)
- リラクゼーション法の練習(呼吸法、漸進的筋弛緩法など)
◆作業療法時の注意点
- 適切な距離を保つ。
- 近すぎず遠すぎず。
- 不安発作を無視しない。
- 発作時には付き添い、生命的な危機がないことを保証する。
- 発作維持には、安全を図ったうえで楽な姿勢をとらせ安心を促す。
- 回避や逃避行動を止めたり指摘しない。
- 辛さを受け入れ、支持的に接する。
- 症状にはスタッフで一貫した対応を取る。
■今回のまとめ
今回は「不安症群/不安障害群」のおさらいをしました。
作業療法の内容は教科書通りですが、個別の患者さんにあわせてオーダーメイドしていくので仕方ないかなぁ……と思いつつも、もっと具体的な内容を知りたいのかな?とも思いました。
是非、ご意見くださいね。
今回は以上となります。
随時追記や分類を増やしていきますので、皆さんも是非ご意見やご要望をお寄せください!
具体的な質問やご相談、こんな記事をお願い!
という声がございましたらいただければ、リハビリカレッジの公式LINEとお友達になって、トークでコメントをくださいね^^
本日も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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■ 参考資料
- 作業療法マニュアル54:うつ病患者に対する作業療法
- 標準精神医学第7版
- 作業療法学全書第三版:作業療法治療学2精神障害
- 作業療法学ゴールドマスターテキスト精神障害作業療法学第三版
- DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き
- ICD-11概要について(厚生労働省)