「身近で知らないココロのハナシ」シリーズ。
「神経性障害」のおさらい中です。
なかでも、今回は「心的外傷およびストレス因関連障害」に注目します。
前回までの内容が知りたい方は以下のリンクをチェックしてくださいね。
【まとめ記事】精神科作業療法・精神科リハビリテーションの基礎知識
・身近で知らないココロのハナシ(9)神経性障害ってなんだっけ?
・身近で知らないココロのハナシ(10)不安障害の概要とリハ介入
・身近で知らないココロのハナシ(11)強迫障害の概要とリハ介入
・身近で知らないココロのハナシ(12)ストレス関連障害とリハ介入
・身近で知らないココロのハナシ(13)解離性障害とリハ介入
・身近で知らないココロのハナシ(14)身体表現性障害とリハ介入
Table of Contents
■心的外傷およびストレス因関連障害
外因(脳などの物理的病変)、内因(原因不明)、心因(心理的原因)のうち、ストレスという心因が大きく影響を与える疾患群です。
発症メカニズムは、ストレスによって過剰に分泌されるコルチゾールを介した、脳内の遺伝子発現の変動が密接に関連するのではないか、と推測され、研究が継続されています。
ちと難しいですね。
つまり、ストレス過多だと脳の遺伝子が変化し、ストレス耐性低下などの状態になりやすくなると推測されている、ということ。
ストレスが身体に悪い、とは一般的に言われてわかっていても、脳の遺伝子が変化するほどの影響を与えているとは驚きですね。
■どんな障害がある?
DSM-5では、心的外傷およびストレス因関連障害を大きく7つに分類されていますね。
◆心的外傷後ストレス障害(PTSD)
甚だしく外傷的な出来事に遭遇することにより引き起こされる反応性の精神障害。
臨床症状として、①外傷となった出来事の侵入▶︎②出来事から持続的に回避▶︎③認知や感情のネガティブな変化▶︎④覚醒度や反応性の変化、が1ヶ月以上みられるとPTSDと診断される。
治療は薬物療法(SSRI)と認知行動療法(持続曝露療法推奨)。
◆急性ストレス障害(ASD)
甚だしく外傷的な出来事に遭遇することにより引き起こされる、急性の反応性精神障害。
PTSDの臨床症状と類似するが、3日~1ヶ月未満でおさまる。おさまらない場合、PTSDの診断となる。
◆適応障害
ストレスの発端となる要因に反応してストレスの発端から3ヶ月以内に見られる情動面や行動面の障害。
治療は、支持的精神療法、認知行動療法などでストレス対処機能を養う。薬物療法は補助的役割。
◆反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害
幼児・小児期に、養育者である大人に対して愛着行動を示さないという不適切な社会的関係を呈する関係性の障害。
発達上の障害ではない。虐待などの著しく不遇な養育体験から発生。
◆脱抑制型対人交流障害
幼児・小児期に、ほとんど初対面の人物に対して警戒心なく過度に馴れ馴れしい態度や行動をとるなど不適切な社会的関係を呈する関係性の障害。
発達上の障害ではない。虐待などの著しく不遇な養育体験から発生。
◆その他
以下の二つは分類名通りですね。
・他の他の特定される心的外傷およびストレス因関連障害群。
・特定不能の心的外傷およびストレス因関連障害群。
■どんなリハ介入をするのか?
さて、この神経性障害のシリーズになってから度々出てくるのが「認知行動療法」ですね。
統合失調症の際にもお話ししましたが、ストレス対処(ストレス・コーピング)が鍵となりそうです。
ストレス関連障害は、「ストレスの体験」が原因です。
その内容や大小に関わらず、支持的な対応や、温かいケアがポイントになります。
それを踏まえて作業療法を行うポイントを確認しましょう。
◆症状を評価する
外界からどのような刺激が加わると、反応してしまうのか? また反応が鈍麻していないか? など、ストレス体験に関連した反応や行動がどんなものか? そしてそれらが日常生活にどんな影響を与えているかを確認します。
◆作業療法の目的
精神療法的な支持的な対応や、曝露療法を多部門と連携して行うことも必要だが、作業療法の特性を活かすこともポイントとなる。
作業には絵画など心理面が投影されるものもありますね。
性急な曝露体験ではなく、穏やかに、緩やかに安心できる場を提供しながら、安心できる環境で自己表現の場を提供することが作業療法の目的となります。
◆作業療法の実際
作業療法の利点は、人と人との間に「作業」を置くことができることです。
刺激や負担の少ない作業をおこないながら、少しずつ自己表現の機会や、安心できる場を体験することになります。
直面させるのではなく、作業を通じて、認知や知覚をし直していくことにあります。
◆作業療法士の態度や注意点
受容的な態度で接する。
作業療法士自身が負担の原因にならないよう、注意する。
さて、作業療法、作業療法士としての注意点を見ると、認知行動療法として行う持続曝露療法と真逆に見えますね。
スタッフの数が担保できるなら、作業療法を行う者と、認知行動療法を行う者が、別な作業療法士でできるといいんですけどね……
■まとめ
今回は「ストレス関連障害」について振り返ってみました。
ストレス体験が原因となり、さまざまな反応が引き起こされる障害です。
日常生活を安心して送れるよう、継続的な関わりがポイントなありますね。
今回は以上となります。
随時追記や分類を増やしていきますので、皆さんも是非ご意見やご要望をお寄せください!
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■ 参考資料
- 作業療法マニュアル54:うつ病患者に対する作業療法
- 標準精神医学第7版
- 作業療法学全書第三版:作業療法治療学2精神障害
- 作業療法学ゴールドマスターテキスト精神障害作業療法学第三版
- DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き
- ICD-11概要について(厚生労働省)