パーキンソン病のリハビリテーション⑥〜運動療法って何をどうするの?②〜

【前回までの内容はこちら】

パーキンソン病のリハビリテーション①〜疾患の機序を知ろう!
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/3792

パーキンソン病のリハビリテーション②〜薬物療法の役割とセラピストの目〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/3933

パーキンソン病のリハビリテーション③〜大脳皮質-基底核ループ①
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/4173

パーキンソン病のリハビリテーション④大脳皮質-基底核ループ②〜運動ループ〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/4271

パーキンソン病のリハビリテーション⑤〜運動療法って何をどうするの?①〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/4312

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前回は、歩行がまだ自立されている方に対する運動療法の考え方として、予防的側面」と「今後起こりうる可能性」に対するフォローが中心となるような内容でした。

先日、ネット上の記事で、「日常的身体活動と運動習慣がパーキンソン病の進行を長期的に抑制」という京都大学の発表があり、私たちセラピストの介入もパーキンソン病の進行に関与できているんだという後ろ盾がかいま見えた気がしています。
記事:https://is.gd/dZi3HJ
論文:https://is.gd/NdXdk2

では今回は歩行が困難になってきたケースの場合の運動療法について考えていきたいと思います。

【歩行が困難になってきた場合の運動療法(廃用予防)】

歩行が困難になってくる状態では、ヤール分類ではⅢに該当してきます。症状は両側性になり、筋強剛や姿勢反射障害が出現し徐々に動きにくくなっていきます。この段階に来ると非運動系の症状(鬱などの精神症状)も出てきている場合があるので、日常生活での活動量自体も減ってしまい廃用症候群の状態になることも考えられます。

このような観点で考えると、まずは「廃用の予防・改善」というところが一つ運動療法の意義になります。実際に行う運動は歩行でも自転車エルゴメーターでも、下肢の筋トレでもなんでも構いません。対象者に合わせて運動内容をチョイスしていただければ構わないと思います。

もちろん、歩行に限らず、基本動作の障害がすでに出てきている可能性のある時期なので、それらについても評価・運動療法が必要になっていきます。

【歩行そのものに対するアプローチ】

同時に考えなければならないのが、歩行機能そのものに対してのアプローチ。ですが、実際に関わるのは姿勢に対してです。
姿勢反射障害が出現している頃には、いわゆるパーキンソン病によく見られる下記のような姿勢を取っていることが多いですよね?

歩行障害で主に見られるのは小刻み・突進歩行なのですが、これが4大症状によるものなのか?もしくはこの姿勢から歩き出すから小刻み・突進現象が出るのか?という2つに分けられます。
まずはこの姿勢が何を表しているか?を力学的に考えていきます。

通常、直立位で立位保持ができている状態でも身体には前方へ回転するように重力からの回転モーメントを受けています。それを下腿三頭筋を中心とする姿勢保持筋が活動することにより(主に底屈の遠心性収縮)、前に倒れないように調整して立位保持を可能にしています

しかし、パーキンソン病特有の前傾姿勢になると、直立位よりもより前方に重心位置がずれるので、前方の安定性限界ギリギリで立位保持をしている可能性が高くなります。その状態で「一歩を出す」ということを試みた場合、非常に慎重になるはず。つまり一歩めのステップが難しくなります(歩行開始困難)

仮に一歩出せたとしてもすぐ次のステップを出さないと転倒してしまうので歩幅が狭い小刻み様になり、かつ突進していく様な形を取ります。これはみなさんでも体感できるので、ぜひ前傾姿勢で前方の安定性限界ギリギリで立っていただき、その姿勢のまま歩いてみてください。

【姿勢の影響と病気の影響を分ける】

ここで重要なのは、姿勢によって起こる影響と、パーキンソン病の症状による影響を分ける」ということです。
パーキンソン病特有の姿勢が歩行に影響しているなら、この姿勢をどうにか変えられないか?そのためには可動性や筋力の評価・介入も必要になります。

そして介入により姿勢に変化があった際、歩行に変化が出るか?出ないのか?それによって、「姿勢からの影響」なのか、「パーキンソン病の症状としての小刻み・突進」なのか?というふうに分けることができます。

残念ながら、症状が進行してしまった状況を戻すことはできません。しかし、2次的に作り出した可動域制限や筋力低下からくる前傾姿勢がメインなら改善の余地があります。どちらにせよ、「分けて考える」ることで介入に対する効果判定をし、その後の再評価・再介入につなげていければ良いと思います。

改めて、歩行障害のあるパーキンソン病患者さんの姿勢を力学的に考察して見てください。ヒントが隠されています。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀

 

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