前回までの内容はこちら
パーキンソン病のリハビリテーション①〜疾患の機序を知ろう!
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/3792
パーキンソン病のリハビリテーション②〜薬物療法の役割とセラピストの目〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/3933
パーキンソン病のリハビリテーション③〜大脳皮質-基底核ループ①
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/4173
パーキンソン病のリハビリテーション④大脳皮質-基底核ループ②〜運動ループ〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/4271
前回まではパーキンソン病の機序や脳に起きていることを中心にお話ししてきました。
今回は運動療法についてのお話し。
運動療法に効果はある?
私たちが関われることとして第一に挙げられるのは運動療法。理学療法的視点だったり、作業療法的視点であったりとはありますが、全ては患者さんのADL、QOL向上のため。しかし、パーキンソン病は緩徐進行性の疾患。ゆっくりではありますが、確実に症状が悪化していきます。
そして残念ながら、パーキンソン症状そのものを止めたり、改善したりということは運動療法ではできません。
これは前回までの内容のように、「ドーパミン細胞の脱落・変性によるドーパミン不足からくる基底核障害」という根っこは変わらないから。薬物療法でドーパミン量や作用をコントロールできていることが、症状に大きな変化をもたらします。
では、運動療法しかり、私たちの介入には意味がないのでしょうか?決してそうではありません。
そこで大きな視点となるのがQOL。身体の症状は直接的に変化させられなくても、より良い生活を送るための介入は可能ですし、現状の状態をふまえ、将来を見据えた介入ということも可能です。
リハビリテーション(運動療法)介入を考える
まずは、患者さんの現在地を知ること。発症からの時間経過とヤール分類ではどこなのか?歩行は自力で可能か?どんな生活をしていて、どんな症状が生活のバリアとなっているのか?などなど、パーキンソン病に限らず、基本的な情報をおろそかにせず聞いていきます。
どんな生活をしていて、この先どんな生活を送りたいのか?、セラピストとして予想される今後発生しうる症状とそれによる生活障害。それを見越して何をするべきか?というのがやはり軸になると思います。
結果的に対処療法に過ぎないということもありますが、対処できる方法やアイデアが多ければ、それだけ多種多様に関わることができます。これはリハ職のみとかの介入ではなく、他職種、家族をも巻き込んだ関わりになってっくると思います。
では実際に考えてみましょう。
大事なことは現状把握。今歩行で生活できていて、今後が心配?なのか、歩けなくなってきているのか?、歩かせれば歩けるけど、自力で立てない・起きれないのか?そもそも車椅子レベルなのか?それぞれの状況で関わることが全く違ってきます。
歩行がまだ自立されている方の場合。
この状況でリハビリが処方されることはあまりありませんが、できれば介入したい時期。この時期は将来的に確実に起こりうる、筋強剛や無動による可動域制限を2次的に増やさないことと筋力、体力の向上。
歩行そのものより、体幹の回旋が必要な動作に障害を受けやすい時期なので、体幹の回旋を多く含んだ運動を多めにチョイスしたりします(メニューなんでもいいです)。あとは手軽なエルゴメーターや、日中の散歩(日光を浴びてセロトニンを活性化させる目的もあり)を進めたり、下肢の筋力トレーニングとしてスクワットを取り入れたり。また、日常生活でも座り過ぎを避けたりと、どちらかというと、一般高齢者向けの介護予防+αような介入がメインになってくると思われます。
この時期は患者さん自身も症状が少ないため、実はあまりピンときていないことも多いので、症状が悪化した時のための運動という側面より、今元気に生活するための楽しみの一つとして「運動」が生活に入ってくるというような形が理想だと思います。
この時期に提供する運動には「趣味性」や「スポーツ性(競争)」、「レクリエーション的要素」などドーパミン活性が活発になるような要素を取り入れたいので、OTさんは特に活躍できる時期ではないでしょうか?アクティビティーを利用して脳の活動性を上げるという視点でもOTの関わりが重要になってきます。(PTでできる人はもちろんやってくださいね)。
症状がまだ少ない分いろんな介入は可能ですが、その分何をしていいかわからない、別に介入しなくてもまだ大丈夫なのでは?なんて思ったりもしがちですが、「楽しく身体を動かして体力・筋力を維持向上していく」ということができる唯一のタイミングだと思うので、可能な限り積極的に関わっていきたい時期でもあります。
長くなってきたので、歩行が怪しくなってきたら・・・?という場合は次回にしたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀