【前回までのおさらい】
心不全に対するリハビリテーション①〜心不全を知る〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/4904
心不全に対するリハビリテーション②〜心臓の機能を知る〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/4948
心不全に対するリハビリテーション③〜心機能分類と運動の目安〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/5011
心不全に対するリハビリテーション④〜心機能が低下すると腎機能も低下する! 心腎連関〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/5101
心不全に対するリハビリテーション⑤〜看護師国家試験問題を解いてみよう〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/5151
心不全に対するリハビリテーション⑥〜心不全の運動療法〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/5211
心不全に対するリハビリテーション⑦〜運動の効果と自律神経〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/5463
心拍出量が低下すると心臓の代償機転により交感神経優位となり、心拍数・心収縮力を向上させ、
心拍出量を増加させる方向に傾きます。
しかし、心不全患者さんには逆に交感神経優位になることで心負荷を増やすという負のループに繋がっているので、
運動療法方として「軽めの運動」が交感神経系を落ち着かせる可能性を秘めていますよというのが前回の内容でした。
では、実際患者さんが交感神経優位の状況になっているのことをどこでみていけば良いでしょうか?
【交感神経優位になると何が起こる?】
交感神経は副交感神経と対をなす自律神経として存在します。それぞれが拮抗した役割を持っており、
ざっくり分けると、活動を促すのが交感神経系、休息を促すのが副交感神経系となります。
交感神経が優位になると、心拍数は上昇、血管は収縮し、血圧も上昇します。
その他の症状としては、腸の蠕動運動の抑制、筋肉の緊張、発汗が増えるなどがあります。
では実際の患者さんの生活の中でこれらの状況に当てはまることって何か起きていないでしょうか?
【院内生活の中での交感神経優位症状を見つける】
まず一つは「腸の蠕動運動の抑制」です。これは便秘に繋がります。
皆さんの患者さん、便秘気味ではありませんか?便秘自体も色々な要素でなるものでは
ありますが、交感神経優位のため腸の蠕動運動が抑制されている可能性もあります。
その他には睡眠不足も挙げられます。睡眠は副交感神経系の働きの最たるものです。
本来であれば副交感神経が優位になりしっかり睡眠を取れるといいのですが、入院のストレス
(同室者の声、夜間の体交、夜間頻尿など)により睡眠自体が中断されることもあり、
その都度交感神経が高まってしまうので、十分に副交感神経系が働きにくくなります。
2つほど挙げましたが、入院生活中の患者さんってもしかするとほとんどの方が交感神経系が優位に
働いてしまう環境にいるのかもしれません。
心臓の問題で交感神経系が優位になっていることでの症状という側面もありますし、
入院生活自体でも交感神経優位になるような状態があるとなると、運動だけではない
生活という側面からも何かアプローチできるかもしれません。
前回に引き続き、自立神経(交感神経)について関連付けて考えていきました。
「心不全のリハビリ=心リハ=運動」
なんてなんとなく思っていると、私たちは大きな見落としをするかもしれません。
疾患の機序から生活までの流れが繋がると、よりリハビリテーションとして良いものを提供できるかもしれませんね。
最後まで読んでいただきありがとうございます
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀