Table of Contents
【前回までのおさらい】
心不全に対するリハビリテーション①〜心不全を知る〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/4904
心不全に対するリハビリテーション②〜心臓の機能を知る〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/4948
心不全に対するリハビリテーション③〜心機能分類と運動の目安〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/5011
心不全に対するリハビリテーション④〜心機能が低下すると腎機能も低下する! 心腎連関〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/5101
ここまで心不全のリハビリテーションについての概要をお伝えしてきました。
まとめとアウトブットを兼ねて、看護師の国家試験問題に挑戦です!
【2014年度 第104回看護師国家試験問題】
問題文はこちら↓↓
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A さん(54 歳、男性)は、10 年前に心筋梗塞 (myocardial infarction) を発症し、 2 年前に慢性心不全 (chronic heart failure) と診断され外来受診を続けてきた。 1 週前からトイレ歩行時に息苦しさがあり、 4 日前から夜に咳と痰とがみられ眠れなくなっていた。本日、A さんは定期受診のため来院し、心不全 (heart failure) の増悪と診断され入院した。入院時、体温 36.3 ℃、呼吸数 24/分、脈拍 96/分、整で、血圧 124/72 mmHg であった。心エコー検査で左室の駆出率 28 %であった。体重は 1 週間で 4 kg 増加し下肢の浮腫がみられる。
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この文を読んで下記に答えよ
Aさんのアセスメントとして適切なのはどれか
1.ショック状態の可能性が高い。
2.左心不全の症状はみられない。
3.NYHA心機能分類のⅠ度に相当する。
4.浮腫は右心不全の症状によると考えられる。
答え:
Aさんの咳嗽を軽減する方法で最も良いのはどれか
1.起坐位を保つ。
2.腹式呼吸を促す。
3.部屋の湿度を30%に保つ。
4.超音波ネブライザーを使用する。
答え:
- 入院治療により A さんの症状は改善し、 2 日後に退院予定である。退院後の受診についての説明で最も適切なのはどれか。
1.「夜間の咳で受診する必要はありません」
2.「体温が38.0℃以下なら受診の必要はありません」
3.「今回のように体重が増加したら受診してください」
4.「仕事から帰って足に浮腫がみられたら受診してください」
答え:
さあどうでしょう?
・
・
・
・
・
答えは上から順番に4、1、3となります。
ではこの解答の解説をします。
【解答の解説】
まずこの問題文にある症状のポイントを抜き出しましょう。
①1週間前からのトイレ歩行での息切れ (平地歩行で息切れはNYHAⅢ)
②4〜5日前からの夜間の咳と痰による不眠 (肺うっ血?)
③定期受診での来院で「心不全増悪」の診断 (救急ではない)
④バイタルは血圧・体温は特記なし。呼吸数・HRは高め (呼吸困難感あり?)
⑤%EFは28% (左室のポンプ機能低下)
⑥1週間で4kg増、下肢の浮腫あり。(右心不全の症状)
この症状から考えられる状態として、まずは左心不全を直接疑うポイントは⑤。左心不全による肺うっ血症状が①②④
次に右心不全を疑うポイントは⑥
つまりAさんは左心不全が増悪して右心不全に移行している両心不全状態にあります。
ということで最初の設問の答えは4の「浮腫は右心不全の症状〜」になります。
二番目の設問は夜間の咳嗽は肺うっ血症状で、臥床すると悪化しやすいので1の「起坐位を保つ」が答えになります。
最後の設問はAさんは「1週間で4kgの体重増加」があります。これは体静脈うっ血の症状なので、右心不全が進行している可能性を示唆します。つまり答えは3の「今回のように体重が増えたら〜」になります。
【病態理解の重要性】
心不全患者さんをみるにあたり、どんな運動療法を提供すればいいか?ということばかりに頭がいくと、基本的な病態評価が疎かになります。過去4回を通して学んだ知識だけでも看護師の国家試験を突破できるだけの知識としては十分です。
患者さんの病態理解が療法士と看護師の間で共通認識できていれば、連携もスムーズですし、リハビリ側も過剰な運動の提供や誤った退院指導を防ぐこともできます。
詳しくは専門領域の方々にお任せしますが、少なくとも一般の療法士でもこのような知識を幅広く持ち合わせることで、
日々の臨床の幅は大きく広がっていくと思います。基本はいつでも私たちの臨床を支えてくれます。何回も復習しましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀