【作業療法士の苦手克服講座】身近で知らないココロのハナシ(15)摂食障害とリハ介入

摂食障害

身近で知らないココロのハナシ」シリーズ。
摂食障害」に注目しておさらいをしましょう!

前回までの内容が知りたい方は以下のリンクをチェックしてくださいね。

【まとめ記事】精神科作業療法・精神科リハビリテーションの基礎知識
身近で知らないココロのハナシ(9)神経性障害ってなんだっけ?
身近で知らないココロのハナシ(10)不安障害の概要とリハ介入
身近で知らないココロのハナシ(11)強迫障害の概要とリハ介入
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身近で知らないココロのハナシ(13)解離性障害とリハ介入
身近で知らないココロのハナシ(14)身体表現性障害とリハ介入

 

■摂食障害とは?

摂食障害は、心理的背景を持つ食行動の障害です。
典型例としてあがるのは、

      • 神経性やせ症/神経性無食欲症(拒食症、神経性食思(欲)不振症)
      • 神経性過食症/神経性大食症(過食症)
      • 過食性障害

です。
現在、有病者の年齢層が広がっていると言われており、当初10歳代だったものが思春期発症後長期化するもの、成人や小学生での発症も見られている。
女性に多いとされているが、過食性障害は男性にも珍しくないそうですね。

 

■どんな症状が見られる?

典型例として3つ挙げましたが、それぞれどんな症状が現れるのでしょう?
なんとなくわかりそうで忘れていませんか?

神経性やせ症/神経性無食欲症(拒食症、神経性食思(欲)不振症)

        • 食事制限により著しい低体重を示す。
        • しかし本人はその深刻さを理解していない。
        • 体重増加を恐れる「肥満恐怖」の感情を持つ。
        • 体重や体型を示す数値が自己評価に過剰な影響を及ぼす。

神経性過食症/神経性大食症(過食症)

        • 過食をとめられない「失コントロール感」をもつ。
        • 過食後は、体重を減少させるために「代償行為」が見られる。
          (自己誘発性嘔吐、下剤使用、利尿剤使用、絶食、過剰な運動など)
        • 夜間の過食による生活リズムの障害。
        • 自分の感情を言葉にできない。
        • 空腹感、満腹感がよくわからない。

神経性やせ症、神経性過食症の診断基準以外の症状

        • 失感情症
        • 過活動、運動強迫。
        • 骨粗鬆症、歯のエナメル質酸蝕、など。

過食性障害

        • 神経性過食症と同様の過食が見られるが、代償行為は激しくないため、過体重の場合がある。

なるほど、いわゆる過食症にも種類があることが分かりましたね。
では、ここから治療としてどう関わっていくのか、リハ介入はどうするのかをおさらいしましょう。

 

■治療方針は?

摂食障害の治療は、身体面と心理面の両方に対して行います。

神経性やせ症

        • 患者と計画を具体的に相談しながら栄養回復を行う。
        • 急激な大量の飲食は再栄養症候群を呈する危険があるため注意する。
        • 体重の回復が治療のゴールではない。
        • 患者の低い自己評価に対して働きかけ、再発の兆候に自分で気がつけるよう心理面の治療を行う。

神経性過食症

        • 過食嘔吐症状以外にも目を向ける。
        • 過食以外はほとんど絶食であることや睡眠が不規則になっていることに注意し、生活の規則化を促す。
        • 過食・嘔吐の背景にある自己嫌悪やうつなどの症状に対する心理的治療や、SSRIなどの抗うつ薬による薬物療法も有効。

リハ介入としては、心理面のサポートが鍵になりそうですね。

■リハ介入は何をする?

摂食障害の特徴に、本人に病識がないというものがあります。
そのため、関係性を構築することが大前提となります。
そのうえで、リハ介入をしていくことになります。

特に作業療法……作業活動には「投影的機能」があります。

投影とは
“自分の心の状態や思考パターンを人や物に映し出すこと”
無意識に抑圧していることや我慢していること、心の痛みを知ることができる。
作業活動には、作品にそのときの心の状態が映し出されているので、それを題材に介入と支援を組み立てることになる。

作業活動や作品の完成を通じて、「適応行動」や「自己愛充足」の機会とし、「症状の安定」や「健康な機能の強化」に働きかけることになります。

◆関わり方と注意点

        • 自尊心が高く、傷つきやすい。
        • 共感的、受容的な態度で接する。
        • 問題行動に注目させるのではなく、その行動に込められた心理状態を取り上げていく。
        • 健康な行動が見られた時は、その場ですぐに肯定的評価を伝える。
        • 時間、なしょ、ルールなど限界設定を明確にする。
        • 曖昧な約束や態度をしない。

◆活動例

        • 早期:構成的な活動、簡単で完成が容易で心理的負担の少ないもの。
          完成までのプロセスが少ない工作など。
        • 回復期:投影的な活動や、退行を促せるもの。
          フィンガーペインティング、コラージュ、箱庭、陶芸など。
          投影された内界を整理できるように声がけや促しをしていく。

◆その他の対応など

        • 自傷他害や自殺、窃盗、性的逸脱などの問題行動があるため、品物や環境の管理、改善を要する。
        • 本人をさりげなく監視下に置く。
        • 身体管理が優先される。身体状態が悪い時には生命維持が優先される。
        • 集団カウンセリングも有効。
        • 家族療法として主にキーパーソンとなる母親への支援を行う。

■まとめ

今回も、国家試験以来あまり関わることがない摂食障害についておさらいしました。
基本的な対応や関わりでは共通する部分が多いものの、具体的にどうしたらいいものか悩ましいですね。
摂食障害の方とは僕自身も関わったことがないため、色々と考えさせられました。
あなたはどうですか? 何かヒントは見つかりましたか?

ということで、次回は「パーソナリティ障害」をおさらいしてみようかと思います。
お楽しみに。

 

今回は以上となります。
随時追記や分類を増やしていきますので、皆さんも是非ご意見やご要望をお寄せください!

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リハカレ認定講師 齋藤 信

 

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■ 参考資料

 

 

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