血圧と脈拍、なぜ測る?〜バイタルチェックはリスク管理〜

毎日・毎回の血圧・脈拍測定

療法士であれば、必ず運動前に行うバイタルチェック。最近はデジタル血圧計が増えたので、一回で血圧と脈拍の両方がとれて便利になりました。マンシェットを巻きながら、「今日の調子はどうですか?」なんて会話のとっかかりにしたり、毎日のルーティン作業になっていないでしょうか。普段は運動前に計測し、「運動負荷をかけて大丈夫か?」という判断材料に。運動中、運動後は「運動量が多くなりすぎていないか?、中止基準に達していないか?」の判断材料に使われていると思います。

数字だけみていて大丈夫?

ここでみているのは、単純に血圧や脈拍が高いか低いか、その数字を運動中止基準に照らし合わせて、運動の可否と安全性を確保すること。しかし、それだけで十分でしょうか?バイタルチェックとして、血圧、脈拍がどんな役割をはたしているのか、「血圧」がどのように規定されているかを復習しながら考えていきましょう。

血圧を規定する因子

血圧は「心拍出量×末梢血管抵抗」で規定されています。心臓のポンプ機能と血管の抵抗感により血圧が決まっています。また「心拍出量」は「一回拍出量×心拍数」で規定されます。単純に安静時高血圧の人は心臓のポンプ機能に問題がなければ、末梢血管抵抗が高いことが高血圧を生んでいる可能性が高く、動脈硬化などが背景に考えられます。また運動中の血圧上昇は、運動により酸欠になるので、全身に酸素を行き渡らせるために「心拍数を増やすことで心拍出量を増やす」ことで血液循環量を増やして酸素を送ろうとするので、結果的に血圧が高くなります。

血圧のイメージ

血圧というのは、全身に血液を行き渡らせるために必要な圧力です。ホースでの水まきをイメージするとわかりやすいです。蛇口からホースに流れてくる水の量(拍出量)が同じなら、より遠くに水をまこうとしたらどうしますか?ホースの先端を少し握って(末梢血管抵抗)、出口を狭くしますよね?血圧も同じ原理です。

高血圧より低血圧の方が怖い

ここで大事なのが、血圧は「身体活動を行うために必要な血液(酸素)を全身に行き渡らせるために必要な圧力」であるということ。高血圧が長期間にわたる場合は後々心機能等のリスクがありますが、短期的にみれば血圧が若干高くても特に問題になりません。問題は低血圧です低血圧状態というのは「全身に必要な血液を十分に送り届けられていない状態」と考えてもらって結構です。脳の血流量が減れば、目眩等の貧血症状が。肺の血流量が減れば息切れ。筋肉の血流量が減れば疲労感に。血流不足=酸素不足です。

先程の血圧の式から考えると、低血圧という状態は「心拍出量の低下」もしくは「末梢血管抵抗の低下」かその両方です。末梢血管抵抗は、「拍出量低下」を感知して増える機序なので、何かに先行して末梢血管抵抗だけが低下することは考えにくいはずです。とすると、低血圧とは拍出量の低下(1回拍出量×心拍数)の状態であると考えられます。運動中止基準でも運動中の血圧低下が含まれているように、「全身に血液を必要としている場面で血圧が下がる」というのは、心臓のポンプ機能に何らかの障害がある可能性を秘めています。また、心拍数は交感神経系の作用を受けるので、心拍数が上がらないというのも、交感神経領域の問題を抱えている可能性があります。

バイタルチェックはリスク管理

いずれにせよ、いつも何気に計測している血圧と脈拍。高い低いではなく、それぞれが関わり合い意味を持っているということです。血圧の仕組みを知ることで、その数字になんの意味があるのか?どんな背景があるのか?この辺を予測できると臨床でのバイタルチェックもルーティンではなく本当の意味でのリスク管理につながっていくと思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうこざいます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀

 

 

関連記事

  1. エビデンス、サイエンスの活用法

  2. 統合失調症の疾患別リハ

    統合失調症の方への疾患別リハで注意する4つのポイント

  3. 認知症リスクの一つである海馬の体積減少に対して効果的なこと

  4. 食事動作の見るポイント④

  5. 動作分析をする前に?〜姿勢分析の基本:背臥位②〜

  6. 徒手療法は無意味なのか?

    徒手療法で変化を出すことは無意味なのか?