「うつ病のリハ介入と対応」シリーズ。
今回は前回に引き続き「うつ病のリハビリ」のお話をします。
概要をお話ししたものの、もう少しだけ詳しく考えられないかな?
と思い、筆を取りましたが……さてさて。
・身近で知らないココロのハナシ 動画まとめ記事
・身近で知らないココロのハナシ(1)うつ病になりかけた話
・身近で知らないココロのハナシ(2)うつ病のおさらいをしよう
・身近で知らないココロのハナシ(3)うつ病の治療には何がある?
・身近で知らないココロのハナシ(4)うつ病のリハビリ手順
・身近で知らないココロのハナシ(5)うつ病のリハビリ3つの方向性
そもそも「うつ病」ってなんだっけ?
となっている方は、先に前回までの記事をご覧くださいね。
Table of Contents
■うつ病のリハビリについてのアンケートをお願いします!
10月10日国際メンタルヘルスデーでも話題になったように、今や「メンタルヘルス危機」をどう予防するのか? は、関心のある話題かと思います。
次回以降、もっとこんな話をしてほしい!と言うがありましたら、以下のフォームからお知らせください^^
https://forms.gle/GYu7whrozEakByJX8
■うつ病のリハビリ、作業療法の目的~目標
うつ病のリハビリ、その目的は、
「再発」の要因となりそうな生活を見直しつつ、「生き方」そのものを見直していくことで、社会復帰を目指すことです。
作業療法士は、作業(その人にとって目的や価値のある生活行為)に注目し、具体的な作業活動を用いていきます。
その際、時期に分け、目標に応じた介入を計画します。
- 急性期(身体療法導入期):休息。
- 急性期(身体療法導入後):保護的関わり。
- 回復期前期:現実感の回復。
- 回復期後期:生き方の見直し。
(*身体療法:薬物療法など)
でしたね。
■うつ病セミナーをして思ったこと
先日「うつ病のリハ介入と対処法」というテーマで講義をしました。
その時……というか、このまとめシリーズを書いていて思ったことがあります。
「AにはB」と言った簡易な方程式なんてないな、と。
先に書いた目的から目標までを見渡しても、前回お話しした内容からも「こうすればいい」とシンプルに回答できることはないです。
全てがオーダーメイド。
誰一人として「一般的な患者」は存在しません。
正直、何を伝えたものか。困ってしまいました。
■論文を検索すればいい?
ここで助けを求めるなら、論文の検索……なのですが、意外と少ない??
検索された方も、症例報告が中心という印象を持ったのではないでしょうか?
とはいえ、そのなかでも出てくる共通点はあります。
- 運動療法
- 心理社会的プログラム
- 復職・就労支援
の三つです。
「再発」を防ぎながら「社会復帰」する新しい生き方を作るうえで大切な三つのリハビリ内容です。
■運動療法
「運動療法」と大枠で括ってしまいました。ですが、うつに対して中程度の効果があるという報告もあります。
一時、理学療法士協会の皆さんも「メンタルヘルスには理学療法を!」と言っていたのはこの辺りもあるからかもしれませんね。
他、中之条研究でも、1年の1日平均、歩数が4,000歩で中強度の活動時間が5分の方には、うつ病の予防効果が認められたと報告されています。
実際、有田によれば、5分以上継続される反復運動で、脳内セロトニンの生産が始まると言っています。
これらのことから、作業療法の時間にウォーキングや運動、スポーツを取り入れることが有用であると言われています。
残念ながら厳密なエビデンスの報告は症例を重ねる必要があるので、今後の課題でもあるのですけどね。
■心理社会的プログラム
これまで何度か取り上げてきたように、「認知行動療法」や「対人関係療法」がこれにあたります。
加えて「心理教育」として、患者さんやそのご家族の心理面に配慮した教育アプローチが行われます。
「家族会」という形で、隔月に1回うつ病で入院されている患者さんのご家族が集まり、勉強会をしたり、それぞれの体験などを共有するなどが行われる病院もあります。
これまで紹介していなかったものには「行動活性化療法」(本人にとって抗うつ作用のある活動を見つけ、生活習慣のなかにとりいれるもの)や、近年話題の「マインドフルネス」を行い、感情調整困難な方に対する効果の報告もされています。
認知機能に対して行う「認知リハビリテーション」もありますね。伝統的に脳トレや頭の体操と言いつつ行ってきたものも、あらためて見直されています。
認知の偏りや物事の一面的な捉え方に対して効果を期待されていますね。
■復職・就労支援
これまでの「休息」や「身体療法」とは異なり、自ら動くことも求められてきます。
ですが、この介入を行えば休職期間が減少することも示唆されています。
これまでの働き方を見直し、職場での対処技能や、環境調整を職場と連携しながら進めていくことになります。
個別では「仕事の負荷量の調整」、「本人の非効率的な対処法の理解」などを中心に行います。
グループでは「作業協力」や「情報共有」、「トラブルの対処」などを共に体験しながら学んでいきます。
これまでの働き方や、仕事量に対して新たな認識を持つことで、再発予防と社会生活を長く続けることにつながります。
■まとめ
- うつ病リハビリの大きな目的は「再発」を予防し「社会復帰」を目指すこと。
- 「生き方」を見直すことが中心となる。
- 介入の大きな方向性は「運動療法」、「心理社会的プログラム」、「復職・就労支援」の3つ。
- 一般的な患者は存在しない。オーダーメイドで一緒に組み立てていく。
そろそろうつ病についてのお話は出揃ってきましたね。
次回から各介入について、もっともっと詳しくお話ししてみましょうか?
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本日は、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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■ 参考資料
- 作業療法マニュアル54:うつ病患者に対する作業療法
- 標準精神医学第7版
- 作業療法学全書第三版:作業療法治療学2精神障害
- 作業療法学ゴールドマスターテキスト精神障害作業療法学第三版
- うつ病治療のガイドラインー精神科作業療法ー(日本うつ病学会HP)