*2018年5月の記事を加筆修正したものです。
厚生労働省の調査による「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」の合計が2000万人を超えているそうです。
リハビリ現場でも、糖尿病の合併症による下腿切断などでリハビリオーダーを受けることがあります。
あるいは、オーダーを受けた理由がなんらかの機能制限であったとしても、基礎疾患として糖尿病の治療をしているケースも多く見受けられます。
そんな糖尿病と関係する血液データについてまとめます。
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◇血糖値
血液中に含まれるグルコース濃度の値をさします。
「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」
によりますと、採血と75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値をベースに体重や家族歴など総合的に判断されます。
【基準値】
空腹時血糖値<110、OGTT2時間値<140
の両者を満たす場合を正常値とされています。
【糖尿病型】
空腹時血糖値≧126、OGTT2時間値≧200
のいずれかを満たす場合を糖尿病型とされています。
【境界型】
正常にも糖尿病型にも属さない場合を境界型とされています。
◇HbA1c
HbA1cはグリコヘモグロビン(糖化したヘモグロビン)の1種です。
採決時から2ヶ月までの血糖の平均値を反映すると考えられています。
HbA1cは全ヘモグロビン量に対する割合で示されます。
【基準値】
糖尿病≧6.5%(NGSP)
※日本糖尿病学会では、2012年4月1日より日常の診療におけるHbA1cの表記を国際標準値(NGSP値)を使用する事を決定しています。
血糖の正常化を目指す時の目標値は6.0%未満とされているようです。
HbA1cを見る意味
日々の食事や生活習慣で、血糖値の変動は大きいのが普通です。
なので、ある時血糖値が高くても、それが「たまたまである」ことを1回の採血だけで否定するのは難しくなります。
糖尿病かどうかを判断するときに重要なのは「瞬間的な高血糖状態」もそうですが、「慢性的な高血糖状態か?」というのも重要な指標となります。
HbA1cはその部分を反映していると考えられています。
約4ヶ月でターンノーバーする赤血球(ヘモグロビン)の中で、「グルコースと結びついたヘモグロビン」がどの程度の割合で存在するのか、を見ているわけです。
◇グリコアルブミン(GA)
血液中のタンパク質の1種であるアルブミンがブドウ糖と結合したものを言い、血液中の全アルブミン中における、グリコアルブミンの割合を占めします。
インスリン治療中などで血糖の変動が激しい場合、HbA1cと同様に過去の血糖値の変動を推定できる指標として利用されます。
HbA1cが過去1~2ヶ月前の血糖状態を反映しているのに対し、グリコアルブミンは過去1~2週間前と比較的短期間の血糖状態を反映します。
【基準値】
12.4-16.3%
◇間質液グルコース濃度
血液検査(末梢血)以外にも、間質液中のグルコース濃度を測る検査機器も出てきています。
保険適用にもなっているようですね。
(参考:革新的なグルコースモニタリングシステム「FreeStyleリブレ」保険適用)
ホルター心電図のように、数時間単位の血糖値変動をモニターすることができるので、生活指導とかに生かしやすそうです。
睡眠中の血糖値変動も見れそうですね。興味深い。
間質液中のグルコース濃度を見るわけですから、
末梢の血管→各細胞
に取り込まれる前のグルコースを見ることになるのでしょうか・・・。
末梢血の検査結果と合わせて解釈することで、インスリン活性の程度を知ることができるのではないか?と考えます。
しかし、機能とは違う理由で普及はしていないようですね。
(参考:FreeStyleリブレ、医師が赤字じゃ普及せず?)
◇糖尿病
血糖値が慢性的に高い状態を糖尿病と読んでいます。
通常は尿細管で再吸収される糖が、血糖値が高い状態が続くと再吸収されなくなって、尿に出てきてしまうわけです。
糖尿病そのものは痛いわけでもなんでもないので、自覚するのは難しいようです。
(血糖値の上がり下がりくらいは自覚できると思うのですけどね、、、)
そのせいもあってか、糖尿病そのものは軽んじられているのかもしれません、一般的には。
しかし、糖尿病というのは「グルコースの代謝異常」です。
決して甘く見れない病態なんです。
血液中のグルコース濃度が高い。
これを「血糖値が高いんですよね、ハハハ」みたいに済ませていると危険です。
「グルコースが細胞に取り込まれない」故に血糖値が高いのだとしたら、細胞でのエネルギー産生はどうなるでしょう?
脂質中心のエネルギー産生も不可能ではありませんが、それはそれで、制約付きです。。。
グルコースを適切に代謝できることに越したことはないです。
その代謝機能に異常が出ている状態なので、のほほんとはしていられないはずなのです。
「怖いのは合併症だ」みたいな表現を聞いたことがありますが、そこに加えて代謝機能の異常が恐ろしいのです。
◇まとめ
血糖値に関する指標をまとめました。
診断の際には、1種類の検査数値だけでなく、多くのデータをもとに診断が行われます。
それは、他の指標(病態)を見るときも同様です。
なぜ、グルコース濃度が高いのか?
なぜ、グルコース濃度が下がらないのか?
グルコース濃度が上がる場面とはどんな状況か?
グルコース濃度が高いままだと、体にどんなことが起こるか?
といった具合で考えていけば、リスク管理にも生活指導にも生きてきます。
手術後のリハビリテーションなどにも間接的に影響してくる「糖尿病」。
理解しておいて損はないですね。
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