股関節の支持性低下は中殿筋の筋力低下によるものか?

以前も下肢の支持性についてのコラムを書いています。

 

今回は股関節に注目していきます。

 

股関節の支持生徒は

股関節の支持性というと、良く中殿筋の問題が例に上がります。

トレンデレンブルグ徴候、ドゥシャンヌ跛行は、中殿筋の問題によって出現する歩行です。

 

「よしっ!じゃあ中殿筋の筋力トレーニングだ!」

 

しかし、実際中殿筋のトレーニングで歩容が改善したことありますか?

私の経験上ですが、中殿筋を単独でトレーニングしてもあまり改善は見られません。

その理由は...

 

支持性を作るローカルマッスル

中殿筋は比較的外側にある、いわゆるグローバルマッスルです。

股関節の外転や骨盤の傾斜といった、外から観察できる動きに大きく関係する筋肉ですので、静的な場面での支持性に関与してくるかというと、中殿筋だけではないようです。

それよりも、腸腰筋や小殿筋、深層外旋6筋といった関節の深層にある筋肉の方が、支持性に関与しているといわれています。

 

余談になりますが、これらローカルマッスルの果たす役割は、骨頭の中心化と言われています。

何のことかというと、

骨頭を関節窩にひきつけることによって、股関節が安定し、運動軸が形成され、動的な安定性が保障されるという機能です。

骨頭の中心化が不十分な場合、体幹の重量がダイレクトに骨頭や膝にも掛かってきますので、炎症や変形の原因になる可能性もあります。

 

固有感覚の問題

先ほどのローカルマッスルの問題と近いですが、股関節周囲の組織が硬くなり柔軟性が低下していると、足底からの感覚情報(荷重感覚)が伝わりにくくなります。

筋肉は適切な柔らかさと長さを兼ね備えていることで感覚を受容し、十分な出力を発揮することが可能になります。

硬いままでは機能を発揮できないのです。

 

この問題は筋だけでなく、関節周囲の軟部組織の硬さも影響してきます。

つまり、ストレッチやマッサージといった筋肉だけにアプローチする方法だけでは解消しきれないということです。

関節へのマニュピレーション(操作)など、深層にある硬さを解消していく技術を有していなければ、この固有感覚の問題は改善できません。

 

ダイレクトに中殿筋の筋力トレーニングをしても、患者さんはローカルマッスルに問題を抱えていることが往々にしてあります。

動作の変化には繋がらない理由は、筋力の問題ではなく、出力の問題だからです。

筋出力は、適切な神経伝達が必要であり、良好な関節周囲の状態があって初めて可能になります。

筋力があるから大丈夫なわけではありません。

 

スポーツ選手のケガ

スポーツ選手がケガをするのは何故だかご存知ですか?

そのパフォーマンスに必要な筋活動が、適切に動員できていないからです。

そこには、可動性の低下による不使用(マッスルインバランス)という問題が、大なり小なりあるのです。

 

テレビ画面ではダイナミックなパフォーマンスをしているように見えますが、実際はアンバランスな筋の動員による、代償性の活動を常に強いているのです。

だから故障やケガをするわけです。

 

患者さんでも一緒です。

同じような歩行でも、筋の動員のバランスは千差万別です。

それを見極めて、足りない部分の活動を引き出していくことが、我々セラピストの役割と言ってもいいでしょう。

 

盲目的に筋力トレーニングを続けていても、きっと目の前の患者さんは変わらないはずです。

 

過去のコラムはコチラです>>> http://iairjapan.jp/ccra/2018/01/21/1149/

 

CVAのリハビリにおいて、麻痺側への荷重を促していく方法。

お時間あるときに読んで頂ければ、今目の前の患者さんに対するアプローチの考え方がきっと変わります。

教科書や文献等と照らし合わせて参考にされて下さい。

 

それでは、最後まで読んでいただけて感謝です。

関連記事

  1. 何かと重要。血糖値に関するデータの解釈【リハビリに役立つ血液検査データの見方6】

  2. 神経性障害

    【作業療法士の苦手克服講座】身近で知らないココロのハナシ(9)神経性障害ってなんだっけ?

  3. 躁病のリハビリ

    【作業療法士の苦手克服講座】身近で知らないココロのハナシ(8)躁病のリハビリは何をする?何をしない?

  4. ガイドライン推奨の運動ってキツ過ぎない?〜日常生活の活動量が肝〜

  5. リハビリの初期評価〜介入初期に行うべきこと。

  6. 出し惜しみするな!失墜しない最後の行動【目考!リハ科経営塾2020】(207)