「疲労が溜まっていますね」と、患者さんに話していたり、
「疲れが取れない・・・」と同僚にぼやいたり、していませんか?
疲れを取るための作戦に関して、あれこれ探して実践してはみるものの結局疲れは取れなかったり・・・
疲れの正体って何なのでしょう?
「疲れ」を解説した記事です。
乳酸は疲労物質?
かつて「疲労物質」と呼ばれることもある「乳酸」。
疲労物質という呼び名を見たら「これが疲労の原因か」と思ってしまいます。。。
そうなのだとしたら「乳酸の値を計測して、乳酸の値が少なくなる何かを行えば済む」、という解釈になりますね。
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それほど簡単ではないようです。
疲れの正体は?
さて、そもそも「疲れている」とはどんなことなのでしょう?
この辺り、上手く説明するのは難しいのではないか、と思います。
wikipediaに聞いてみましょう。
疲れには身体的原因と精神的原因がある。身体的疲れは最適な身体能力を維持するための筋肉の一時的な能力の低下であり、強い身体運動によってよりひどくなる[1][2][3]。精神的疲れは長期の認知活動が原因となる最大認知能力の一時的低下である。精神的疲れは傾眠(眠気)、無気力、選択的注意の疲労として現われうる[4]。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%96%B2%E5%8A%B4より引用)
ここだけ読んでも、わかりにくいですね。。。
疲れは主観的な感覚のものですので、測定は難しいのだと思います。
先ほど乳酸値を測定すれば、疲労は測れるのではないか?と書きました。
だけど、乳酸を処理する能力次第で、乳酸値の大きさが意味するものは変わってきます。
そう考えると、乳酸値を測定しただけでは「疲れの度合い」を知り、対策を練るのは難しいのではないか、と。。。
疲れている、とはどんな状態は?
疲れの正体がまだ見えてきません。
ひとまず、疲れている時のことを考えてみましょう。
- 「動きたくない/体を動かしたくない」
- 「体を動かせない」
- 「体が動かない」
こんな感覚になっていたりしませんか?
なぜこのような状態になるのでしょう?
それは、体を動かすためのエネルギーが足りない、つまり「ガス欠」状態だからです。
疲れの原因は「エネルギーが足りない!」こと
体を動かすためのエネルギーが不足するから、動かせない、こうなっていることを「疲れた」と感じ、表現しているのでしょう。
(精神的疲労という意味ではちょっと違ってきます)
では、そのエネルギーとは何なのでしょう?
人間の体の活動は、突き詰めれば「細胞の活動」です。
細胞が働くために必要なエネルギーを内蔵しているのが「ATP」です。
ATPはそれ自体がエネルギーなのではなく、ATPがADPに分解されるときに生じるものがエネルギーなのです。
だから、ATPはエネルギーを内蔵したエネルギー通貨と表現されたりします。
体が動かせない、動かしたくない、という感覚が生まれたり、体が重いと感じるというのは、「動かすためのエネルギー」が不足していて、それは「ATPの不足」が起こっていることが考えられます。
エネルギーを作る
足りないなら、足せばいい
これはとてもシンプルな考え方です。
では、ATPを足す(多く作る)にはどうしたら良いのか?
そこは代謝について学んでおく必要があります。
(→代謝を学ぶためには https://iairjapan.jp/tga-biochemistry)
食べ物から作り出したり、体に蓄えている物質を使って作り出したり、しています。
その工程が行われる環境も様々ですし、その状況も様々です。
ですから、「足りないなら足せば(増やせば)いい」というアイデア自体はシンプルでいいのですけど、その実行となると複雑さが増します。
乳酸が疲労物質と呼ばれるのは・・・
乳酸の話に戻ります。
なぜ乳酸が疲労物質と呼ばれることがあるのか?
それはATP不足を引き起こすだろう代謝活動の時に乳酸が産生されるから、というのが一つの理由と考えます。
乳酸が作られる代謝活動の時は、産生されるATPの量は少ないと言われます。
逆に乳酸が産生されないような代謝活動の時は、前者に比べてATPは多く産生されます。
まとめますと、
このようになります。
疲労した状態になっている時の代謝活動では、乳酸が多く産生されてしまうので、乳酸のことを疲労物質と呼んでいたのかもしれません。
しかし、乳酸自体は疲労物質ではなく、ただの代謝産物。。。
でも、乳酸がエネルギーを作り出す原料になったりもしますので、人間の代謝活動というのは興味が尽きませんね。
疲れが取れない状態から抜け出るための対策
疲労の原因は「ATPを多く作り出す代謝活動が行えないこと」であるとするならば、対策はどうしたら良いでしょう?
これは「ATPを多く作り出すための準備をすること」に他なりません。
そういった環境を準備すれば良いのです。
体の仕組みを理解すると、適切な指導が可能になるのです。
「疲れたら休めばいいじゃん」
のように眠ることで解決する場合もあります。
でも、「強い疲労」や「長く続く疲労」の場合はそうはいきません。
栄養の準備が必要だったり、酸素供給が必要だったり、老廃物の除去が必要だったり、様々な準備が対策となります。
例えば、トップレベルのサッカーの試合を1試合行った後、その回復のために食事を重視して指導しているサッカー指導者がいます。
試合が終わったらビールを1杯飲んで「これのために頑張ってるよな〜」なんていうのは疲労の元であり、回復を遅らせる原因です。
(エンジョイレベルだとしても推奨しません・・・)
運動後の疲労を残さないためには、消費しきって不足に傾いたATPをなるべく早く産生するために、行われる「代謝活動」を変えないといけません。
そのために必要なことを準備すれば良いのです。
「疲れ」とリハビリ
「疲れてリハビリする気が起こらない」患者さんと療法士に役立つのは、「代謝の理解」かもしれませんね。
さて、疲労状態で行うリハビリテーションは効果的でしょうか?
疲労状態を作り出し続ける関わりは、社会復帰後にどのような結末を生むでしょうか?
身体的な疲れを訴えている場合は、エネルギー不足が疑われます。
なぜエネルギーが不足するかを考えてみましょう。
エネルギーを生み出すための代謝活動が行われていないと推測します。
それは、なぜでしょう?
エネルギーの生産には、栄養、酸素、水分などが細胞に届いていることがポイントです。
届いているかどうかを目視することは不可能ですね。
食事の摂取量、飲水量、尿量(回数)、血液データ、血色、皮膚の状態、生活習慣などなど、複数のチェック項目を統合することで見えてきます。
具体的な対策をどうするかというと「理論的に」そうなるであろうことを選択します。
理屈上、栄養や酸素や水が細胞に届くであろうことをするのです。
TGAはそれを目指しています。
疲れを訴える人に、考えなしに休息を促すのではなく、代謝を理解して理論的に対応していけるといいですね。
生理学、生化学から考えると、リハビリテーションプログラムの見直しを余儀無くされることもあります・・・
代謝について学ぶには
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