*2018年4月のコラムを加筆修正したものです。
リハビリの臨床現場で、血液検査結果を活用できると多くのことが見えてきます。
では、血液検査の見方はどこで教わり、どのように臨床所見と結びつけていくでしょう?
前回に引き続き、血液検査の見方を一緒に学んでいきましょう。
【関連記事】
「血液検査データ(白血球数)は自律神経バランスの評価に利用できる【リハビリに役立つ血液検査データの見方5】」
「カルテの既往歴に「糖尿病」と書いてあった場合の検査結果解釈【リハビリに役立つ血液検査データの見方6】」
「「疲れてやる気が出ない・・・」 疲労の原因は乳酸なのか?」
「リハビリが上手く進まない時に確認したい血液データと栄養素」
◇タンパク質に関するデータ
前回は、アルブミン、グロブリン、総蛋白のデータについて学びました。
しかし、タンパク質に関するデータは他にもあります。
タンパク質に関する他のパラメータも見ていきましょう。
◇CRP
ご存知、感染症や炎症性疾患で上昇するタンパク質です。
この数値を見ながら、炎症反応をモニタリングします。
炎症や感染が見られても、タンパク質量は上がってきます。
栄養が充実してきてもタンパク質量は上がります。
そのときに、CRPもチェックしておくと、体にどんな反応が起きた結果のタンパク質量↑なのかが見えてきます。
◇BUN
BUNは尿素窒素のことを指します。
タンパク質の最終代謝産物ですので、体内のタンパク質代謝の目安になります。
タンパク質をどの程度代謝したか、という意味ですね。
この数値の変化は、消化吸収したタンパク質の量や、異化のスピードで変わってきます。
BUNは通常、腎臓で濾過されて尿中に排出されます。
しかし、腎機能の異常があると血中に排出される分が生じるので、その場合もBUNの値は高くなります。
BUN高値:タンパク質摂取多い、消化管出血、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、脱水、腎機能異常などが疑われます。
BUN低値:タンパク質不足、重症肝障害、肝不全などが疑われます。
BUN値が低いということはタンパク質を代謝できていないということなので、最近流行りの「肉食」なんかは体質的に向かない可能性もあります。
タンパク質の代謝は生命にとって極めて重要なテーマなので、アルブミン、グロブリンなどともセットで見ておく必要があります。
あくまで「代謝能」や「腎機能」を見ているので、BUNから体内のタンパク質量を推測するのではありません。
基準値は33〜120U/l(15~20mg/dlと表記しているものもあります)
◇γ-GTP
γ- GTP(ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ)はタンパク質代謝(合成、分解)に関わる酵素です。
肝臓でのタンパク質代謝にグルタチオンという物質が重要です。
γ-GTPはこのグルタチオンの生成に関係する酵素なのです。
アルコールや薬剤などが肝細胞を破壊したり、結石や癌によって胆管が詰まった時に血液中に出てきます。
γ-GTPは細胞障害によって血中遊出するのではなく、何らかの原因により臓器で 増加して血中に出てきます。
例えば、肝臓でグルタチオンの生成を大量に行わないといけない状況(お酒飲みすぎとかでもそう)にあると、γ-GTPの需要が伸びます。
大量に作られたγ-GTPという酵素が血中にも出てくるという運びですね。
なので、血中γ-GTP濃度が高いということは肝臓でトラブルがあった?と疑いをかけるわけですね。。。
γ-GTP濃度を調べることで肝臓や胆管における異常の有無を把握していきます。
肝臓や胆管に病気がある時には、ALPやLAPなどのほかの胆道系酵素よりも早く異常値を示すので、スクリーニングとして使用されるそうです。
γ-GTP高値:慢性・急性肝炎、肝硬変、肝臓がん、薬剤性肝障害、胆石や癌など で胆道が詰まる場合の閉塞性黄疸、膵臓疾患、心筋梗塞などが疑われます。
γ-GTP低値:タンパク合成能低下、酵素活性低下が疑われます。
合成の仕事は肝臓が中心で行なっています。
タンパク質の合成能力が落ちていると酵素が生成できなくなっていきます。
この数値が低いということは肝臓での合成能力低下を疑わせます。
我々の体は、食物として摂取したタンパク質をアミノ酸まで分解し、吸収した後、再び体の様々な場所で必要とされるタンパク質の形に合成しています。
その機能を見ているわけですね。
基準値は男性で15-72U/l、女性で5-44U/lと言われています。
◇まとめ
タンパク質に関するパラメータである「CRP、BUN、γ-GTP」について見てきました。
病気や怪我の診断は医師が行うことですが、血液検査のデータを見ながら、リハビリのプログラムを検討したり、予後(ゴール設定)を考えたりが可能です。
例えば、タンパク質が体内で不足している、あるいはタンパク質を合成する能力が低下しているときに、筋力トレーニングの負荷を上げることは得策でしょうか?
上記のような状態で、右肩上がりにグングン回復していくことが可能でしょうか?
ゴール設定とそれに伴いそうな期間を考える指標にもなってくると思います。
「肉食べて力をつけなさい!」
「プロテインで筋肉をつけるんだ!」
というのは、適する人とそうでない人が存在するわけですね。
データに基づくリハビリテーションの一助になれば幸いです。
続く・・・
【関連記事】
「血液検査データ(白血球数)は自律神経バランスの評価に利用できる【リハビリに役立つ血液検査データの見方5】」
「カルテの既往歴に「糖尿病」と書いてあった場合の検査結果解釈【リハビリに役立つ血液検査データの見方6】」
「「疲れてやる気が出ない・・・」 疲労の原因は乳酸なのか?」
「リハビリが上手く進まない時に確認したい血液データと栄養素」
IAIRの考え方で臨床を捉えたコラムをメールでお届けします。
https://iairjapan.jp/mailmagazine