*2018年3月27日の記事を加筆修正しております。
代謝の働きを学ぶようになると、血液検査のデータはとても重要な位置を占めてきますね。
しかし、リハビリの現場で、トレーニング方法や評価方法、記録の書き方などは先輩から教わっても、血液検査データの読み取り方は教わらないことが多くないですか?
講習会とかのタイトルを眺めていても、
「〇〇に対して△△するための■■アプローチ」
みたいなのが多いですよね。
血液検査の読み方くらい、本を読んで自分で勉強しなさい、ということなのでしょう。
では、質問です。
血液検査データの読み方を過去に勉強されておりますでしょうか?
データの分析はバッチリでしょうか?
Yes!
の人はここで、読むのをやめていただいても何も支障ありません。
No…
の人は、この先から私と一緒に勉強していきましょう!
血液検査の項目はたくさんあります。
今回の内容で全てをお伝えすることは不可能ですので、少しずつ分けて学んでいきましょう。
【関連記事】
「血液検査データ(白血球数)は自律神経バランスの評価に利用できる【リハビリに役立つ血液検査データの見方5】」
「カルテの既往歴に「糖尿病」と書いてあった場合の検査結果解釈【リハビリに役立つ血液検査データの見方6】」
「「疲れてやる気が出ない・・・」 疲労の原因は乳酸なのか?」
「リハビリが上手く進まない時に確認したい血液データと栄養素」
◇タンパク質に関係する血液検査データ
タンパク質に関する数値は
- アルブミン
- グロブリン
- 総蛋白
などの数値から見ます。
◇アルブミン
・肝臓で合成される水溶性蛋白質の総称
・浸透圧の維持や物質を運ぶ輸送隊として機能
アルブミンの値は肝臓での蛋白質合成能力としても見られます。
アルブミンの値が低いと、「肝機能障害」「栄養不足」「腎機能障害(ネフローゼ症候群)」が疑われます。
ネフローゼ症候群ではアルブミンが排出されてしまうからなんですね。
また浮腫などで血しょう成分が多い状態の時は、アルブミンの割合が下がるので、その時もアルブミン低値と捉えられます。
浮腫が起こっている原因として心臓や腎臓の機能障害を疑います。
ではアルブミン値が高い時は?
タンパク質がたっぷりで素敵!でしょうか。
アルブミン値が高いと脱水を疑います。
脱水が起きている時は、アルブミン、ヘモグロビンの値が上がります。
アルブミンの基準値は様々に言われますが 4.2~5.1g/dl くらいが目安になるかと思います。
4.0g/dl未満になっていると、なんらかの病気を疑うことになりそうですね。
アルブミンは栄養や薬物を運ぶ役割もありますので、低アルブミン状態では薬の効果も薄くなります。
薬が効かない人のアルブミン値を見てみるといいですね。
◇グロブリン
グロブリンは慢性炎症や免疫反応の際に体内で作られるタンパク質で、血漿タンパク質の40~30%を占めます。
グロブリンはα1グロブリン・α2グロブリン・βグロブリン・γグロブリンの4種に分かれます。
免疫に関係するということから、炎症が生じた際に、生体内で作るタンパク質とも言えます。
グロブリンは、肝臓の他にリンパ節、腸管、骨髄などのリンパ装置と呼ばれる器官で合 成されます。
グロブリンの値が高いと、
- 慢性炎症
- 膠原病
- 悪性腫瘍
- 肝硬変
- 骨髄腫
などが疑われます。
逆にグロブリンの値が低いと、
- 免疫不全
- エイズ
などが疑われます。
グロブリンの基準値は 0.7~1.8g/dl と言われます。
◇総タンパク質/TP
総タンパク質は血漿中タンパク質の総量を指します。
総タンパク質から
- 栄養状態や全身機能の状態
- 肝機能や腎機能が正常に働いているか
をみることができます。
つまり、
- タンパク質が十分に作られ、消化吸収できているか
- タンパク質の機能が十分に果たされているか
の指標になることができます。
タンパク質量の低値は
・余計に排出されている?→腎障害
・タンパク質合成できていない?→肝障害
が疑われるのですね。
他にも、栄養不足、酵素不足も疑われます。
逆に総タンパク質量が高い時は、
・脱水
・炎症、感染
が疑われます。
高すぎても低すぎても異変が生じていると捉えられるのです。
総タンパク質量の基準値は 6.5~8.3g/dl と言われます。これも様々な言われ方をします。
こういった基準値は内服薬の影響でも変わってくるので、患者さんが何を飲んでいるか、というのも見極めるポイントになりますが、細かい部分は医師の判断になってくるでしょう。
◇A/G比
血しょうタンパク質は大きくアルブミンとグロブリンに分けられます。
総タンパク質量が基準値内だとしても、アルブミンとグロブリンの比率が異変を示し肝機能、腎機能障害が隠れていることもあります。
A/G比: アルブミン↓ か グロブリン↑ で下がることになります。
基準値は1.2~2.1 と言われますが、目安としては1.8前後とすることが多いようです。
◇まとめ
体を基礎付ける材料となる「タンパク質」。
不足していては当然トラブルの元となります。
そのタンパク質に関係するデータを見ることで、炎症や感染や脱水や予後について判断する材料になっていきます。
ただ、対象者が不足しているのかどうかを見た目で判断するのは難しいです。
そこで血液検査の数値は内服薬の効果(予後)、トレーニングの効果を判断する材料の一つにもなる大切な数値だと考えています。
体内のタンパク質量が高ければいいかというと、そうでもなさそうです。
炎症や脱水などが起きている可能性もあります。
その場合は他のパラメータ(CRPなど)も見て判断していかないといけません。
一つのパラメータだけで判断できるほど、体は単純な作りにはなっていません。
リハビリを進めていくにあたって、体の準備はできているのか?そのヒントになることは間違いありません。
血液から読み取れることはたくさんあります。
一緒に少しずつ頭に入れていきませんか?
【関連記事】
「血液検査データ(白血球数)は自律神経バランスの評価に利用できる【リハビリに役立つ血液検査データの見方5】」
「カルテの既往歴に「糖尿病」と書いてあった場合の検査結果解釈【リハビリに役立つ血液検査データの見方6】」
「「疲れてやる気が出ない・・・」 疲労の原因は乳酸なのか?」
「リハビリが上手く進まない時に確認したい血液データと栄養素」
IAIRメルマガ
オススメコラムや、オススメ情報が届きます。
ぜひご登録をお願いいたします。
https://iairjapan.jp/mailmagazine