【作業療法士の苦手克服講座】身近で知らないココロのハナシ(16)パーソナリティ障害とリハ介入

パーソナリティ障害

身近で知らないココロのハナシ」シリーズ。
パーソナリティ障害」に注目しておさらいをしましょう!

前回までの内容が知りたい方は以下のリンクをチェックしてくださいね。

【まとめ記事】精神科作業療法・精神科リハビリテーションの基礎知識
身近で知らないココロのハナシ(15)摂食障害とリハ介入
身近で知らないココロのハナシ(16)パーソナリティ障害とリハ介入

 

■パーソナリティ障害とは?

よく「パーソナリティの障害」と誤解されますが、「人格的問題」ではありません。
その人の所属する文化から期待されるものより、著しく偏った想像や、脳内イメージと行動をとってしまいます。
その行動には柔軟性がなく、個人的な事、社会的な事の広い範囲に影響を与えてしまいます。
本人も苦痛に感じていたり、周囲の人や集団とうまく付き合えずに、障害となってしまいます。

以前は「人格障害」と呼ばれていましたが、前述の通り、誤解を招きかねないので「パーソナリティ障害」となりました。

パーソナリティ=人格ではなく、その人の物事の捉え方(認知)や、考え方、反応の仕方(行動や感情)、対人関係の持ち方など、その人特有のものを総称しています。

回復が期待できないものではないことも忘れてはいけません。

 

■DSM-5,ICD-10の10の分類をみてみよう!

DSM-5とICD-10では、パーソナリティ障害を10の類型に分けています。
それぞれ見ていきましょう。

◆クラスターA群:奇妙で風変わりな群

        • 猜疑性(妄想性)パーソナリティ障害
          広い範囲への対人的不信感や猜疑心が強く、周囲の裏切りや危害を加えられることへの警戒をする。自身の正当性を主張するので周囲と摩擦が絶えない。
        • 統合失調質(シゾイド/スキゾイド)パーソナリティ障害
          感情に温かみが乏しく、非社交的。孤立しがちで他者への関心が希薄。自然科学や芸術で大きな業績をあげることがある。
        • 統合失調型パーソナリティ障害
          奇妙で普通ではない行動や思考を示す。外見や行動の奇妙さ、会話が風変わりで内容に乏しい。

◆クラスターB群:演技的、情緒的で移り気な群

        • 反社会性パーソナリティ障害
          他者の権利を無視・侵害する反社会的行動パターンが中心的特徴。自己中心的で自分の利益を優先し、公共のルールを軽視する。
        • 境界性パーソナリティ障害
          感情や対人関係の不安定さ、衝動的行動が中心的特徴。否定的感情や緊密な葛藤に満ちた対人関係を持つ。周囲の人を感情的に強く巻き込み、理想化と価値切り下げのような両極端な対応をとることも少なくない。
        • 演技性パーソナリティ障害
          他者、特に異性の注目や関心を集める派手な外見や大げさな演技的行動が中心的特徴。
        • 自己愛性パーソナリティ障害
          自己誇大視と尊大・傲慢な態度が中心的特徴。周囲の人々軽視するが注目や賞賛を集めようとし、自分を例外的存在とみなす特権意識を持つ。それらを周囲に求めるが、受け入れられないと感情的な行動化をする。

◆クラスターC群:不安、恐怖を示す群

        • 回避性パーソナリティ障害
          自分自身の失敗を恐れ、周囲からの拒絶などの否定的評価や強い刺激をもたらす状況を避ける。
        • 依存性パーソナリティ障害
          他者への過度の依存が中心的特徴。行動や決断に他者の助言や指示を必要とする。
        • 強迫性パーソナリティ障害
          一定の秩序を保つことに固執し、頑固で融通性に欠ける行動を取る。完璧主義などから物事の完遂を困難とさせる傾向がある。

なるほど、たくさんありますね。
ですが、大分類からの各障害と見ていけば分かりやすそうですね。

 

■治療方針は?

他の多くの精神障害より、ゆっくりではあるものの、長期経過のなかで多くが回復すると考えられています。

治療は薬物療法と精神療法が実践されています。
特に、患者との適切な治療関係、距離感が重要となります。

作業療法場面で、作業療法士が一人で抱え込んだり、自身の無力感から必要以上に距離を縮めてしまうことも注意点として上がってきます。
できないことは「できない」とはっきりとした線引きを行うことも時には大切になります。

 

■リハ介入は何をする?

パーソナリティ障害の作業療法は、対人関係の難しさ、相手との距離感に悩まされますね。
目的や対応などをおさらいしていきましょう。

◆作業療法の目的

        • 依存欲求の適応的充足
        • 衝動の適応的発散
        • 達成感と有能感の獲得
        • 対人関係の改善
        • 感情のコントロール
        • 生活習慣を整える

◆活動例

        • 作業活動の利用
          適度に依存欲求を満たす。(助長しないよう注意)
          自己評価が流動的なため、単回で完成するものなどを提供。(絵画、書道などで衝動の発散も同時に可能)
          作業能力は保たれているが、比較的容易にこなせる課題設定をする。(集中が持続しないことも)
        • 集団の利用
          並行グループ(パラレル)での個人作業療法を基本とする。
          回復の段階にあわせて少しずつ他者との亢龍場面を増やす。
          集団場面で生じた葛藤などを個人面接や個人療法の場面で振り返りを促すと効果的。
          集団凝集性の高いグループは避ける。
        • 参加ルールを設定する
          所属する文化で求められることから逸脱してしまう障害なため、導入前からルールを共有しすることがポイントとなる。
        • 治療者の態度・言動
          治療者は、一貫した対応を取ることで、相手の信頼を得ることにつながる。
          強い感情をぶつける、理想化や脱価値化、行動化などに振り回されることになるが、動揺せず、同じ態度で関わりを継続することが望ましい。
          逸脱した行動を取った際もルールに基づき「できません」とはっきりと伝える。
          また、治療者への依存やイライラが高まった際も我慢させる対応が必要となる。
          我慢できた際は、それを評価し本人の自信につなげる。

◆その他の対応など

        • 作業療法士が一人で抱え込まないこと。
        • 作業療法士のニーズをみたそうとしないこと。
        • 濃密な関係を作らないこと。
        • 変化が激しい環境をせっていしないこと。

 

■まとめ

今回はパーソナリティ障害についておさらいしました。
感情的に振り回されることがあり、療法士自身も悩みが絶えないリハ介入となります。
チームで協力して行うことで、多くのことが解決していきますので、禁忌にあるように、一人で抱え込まないよう注意して介入しましょう。

 

今回は以上となります。
随時追記や分類を増やしていきますので、皆さんも是非ご意見やご要望をお寄せください!

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本日も、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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リハカレ認定講師 齋藤 信

 

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■ 参考資料

 

 

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