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前回の内容はこちら
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/3792
前回から始まりましたパーキンソン病シリーズ。今回は薬物療法について。
リハビリテーションなのになぜ薬物療法?と思った方もいらっしゃると思います。
しかし、パーキンソン病にとっては薬物療法はなくてはならないものです。
なぜ薬物療法が必要なのか?
前回パーキンソン病の機序について簡単に説明しましたが、基本的になぜ黒質緻密部のドーパミン細胞が脱落・変性していくかは解明されていません。しかし、症状の基盤となるのはドーパミン不足が原因であることには変わりないので、とにかくドーパミンを外から増やして症状を抑えましょうというのが古典的な薬物療法の始まりであり、パーキンソン病治療の大部分を占めるところでもあります。
皆さんお馴染みのLーDOPAをはじめ、様々な種類の薬がありますが、皆さんしっかり把握できていますでしょうか?
単純にドーパミンを増やすだけでは、薬効が切れたり、ドーパミン過剰による症状(副作用)が出たり、ウェアリング-off現象が出たりと不具合も多く、そう簡単にはいかないのがパーキンソン病の難渋さをしめしています。
では代表的なものをいくつかご紹介していきます
パーキンソン病治療薬
代表的な薬を下記にご紹介します。
・レボドパ(LーDOPA):脳内に取り込まれるとドパミンに代謝される。長期服用でウェアリング-off現象やジスキネジアが出現する。
・ドパミン受容体作動薬:ドパミン受容体に作用し、ドパミンと同様の作用をする。ウェアリング-off現象やジスキネジアが出現しにくい。
・抗コリン薬:アセチルコリンに抵抗し、ドパミンとのバランスをはかる
・ドパミン分泌促進薬:線条体(基底核)でのドパミン放出を促す。
・MAO-B阻害薬:MAO-Bを活性を低下させ、ドパミンの分解を抑制する。レボドパの効果は延長するが、ジスキネジアは悪化することがある。
・COMT阻害薬:COMTの作用を阻害してドパミンの作用を高める。レボドパと同時に服用する必要がある。
・アドレナリン前駆薬:ノルアドレナリンの不足を補い、すくみ足を改善する。
*出典:パーキンソン病診療ガイドライン2018
大体この7種類が患者さんの症状に合わせて処方されています。
詳しくは皆さん各自で調べてみてほしいのですが、ドパミンを増やしたり、分解を抑制したり、作用を高めたり、といったドパミンの量や作用について関わる薬の他に、抗コリン薬やノルアドレナリン前駆薬など、一見ドパミンとの関係性がわからないものもあります。
これ実はドーパミンは神経伝達物質の一つであり、その他のホルモン・神経伝達物質とのバランスが良い状態が、いわゆる私達が健康であるという状態を作っているという側面があるためです。
その辺はドーパミンについて調べていただければ沢山出てきますので、ここはぜひ個人で学習してみてください。
(OTさんには結構楽しい内容が多いです。)
薬物療法が重要だからこそセラピストの目が必要
薬物療法が重要なのはわかりました。でもそれなら療法士の役割ってそんなに多くないの?といわれると違います。
QOLの向上、ADLの維持・拡大は療法士が関わることで達成できることです。
そして、療法士しかできないことがもう一つ。それは患者さんの「症状の変化に気がつく」ということ。
特にパーキンソン病ではその役割は重要です。パーキンソン病の薬物療法の効果は絶大です。しかし、同時に副作用との戦いであるということは皆さん日々の臨床で感じているところだと思います。
私達はマンツーマンで関わる時間が他の医療職よりも長いため、薬による身体機能や生活状況の変化というものに気がつきやすい土台を持っています。よくあるのは、「症状悪化に気が付く」こと。これは身体機能面やADL面でも同様です。「リハビリは順調に進んでいる。でも特段イベントはないのに最近動きが悪くなってきた」というのは一番わかりやすいサインです。
療法士としては「リハビリの内容が〜」と考えがちですが、ここはまず薬を疑ってください。
いつから今の種類と量を飲んでいるのか?をカルテで確認することでもしかすると薬効が切れてきている、あるいは副作用が強くなってきている?という可能性がみえてきます。
他職種連携?
そうなったら迷わずDrへ上申です。「リハビリは順調なんですが、最近動きが悪くなっています(具体的な症状があればそれも)」。普段からコミュニケーションが取れていれば、「薬の再調整」をしてくれます。
これは臨床的な感覚ですが、薬のさじ加減一つで身体の動きはガラっと変わります。多すぎても、少なすぎても✖️。
その時々によって量や種類の調整が必要ですし、Drの腕の見せ所です。
その変化をしっかり気づいてDrと情報共有することで、薬の調整もしやすくなりますし、何より患者さんのQOL・ADLが上がります。時には変化が出ないこともあります。大体2週間ぐらい様子をみて変化がなければそれも含めて報告します。
進行性疾患である以上、薬物療法にもリハビリテーションにも限界はあります。目標設定を下方修正する場合もあります。
しかし、全ては評価と検証の繰り返し。リハビリの効果判定を毎日積み重ねていれば変化に気づけるようになります。
状態が変化しているのに漫然と毎日同じリハビリを続けないように、変化に気づける目を養いましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀