心不全に対するリハビリテーション⑥〜心不全の運動療法〜

【前回までのおさらい】

心不全に対するリハビリテーション①〜心不全を知る〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/4904

心不全に対するリハビリテーション②〜心臓の機能を知る〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/4948

心不全に対するリハビリテーション③〜心機能分類と運動の目安〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/5011

心不全に対するリハビリテーション④〜心機能が低下すると腎機能も低下する! 心腎連関〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/5101

心不全に対するリハビリテーション⑤〜看護師国家試験問題を解いてみよう〜
https://iairjapan.jp/rehacollege/archives/5151

今回はやっぱり気になる運動療法ということで、心不全の運動療法について書いていきます。

【心不全に対する運動療法の運動強度】

心不全に対する運動療法の基本は低強度・低頻度からの監視運動からスタートがマストで、
徐々に状態を確認しながら運動強度と頻度を上げていくというものになります。

一般的には歩行やエルゴメータをメインの運動として、5〜10分以内のごく軽い強度から進めていきます。
(歩行なら50〜80m/分、エルゴメーターなら10〜20w)

もしくは目標心拍数を安静時HR+30程度に設定して、かつボルグスケールで「楽である〜ややきつい」の
範囲で、自覚症状や身体所見に注意しながら1か月程度をかけて徐々に時間と強度を増やしていきます。

*出典:心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012 年改訂版) 2020/1/6更新版

【心不全に対する運動療法の効果】

枠組みが大切な理由

運動療法の効果として一番に挙げられるのが「運動耐容能の改善」です。
そのほとんどが、筋骨格系の作用によるもので、筋量増加・筋力増加、呼吸筋の機能改善などが
挙げられ、それらの向上によってQOLも向上していきます。

また、この運動療法の最大のメリットとしては、適切な運動療法をしていれば心臓のリモデリングを悪化させない
(もしくは抑制する)ということがあり、運動=心負荷という不安を払拭できる内容でもあります。

また長期的にみても心不全入院減少、無事故生存率改善、総死亡率の低下などがあり、
運動で直接心臓を回復できなくても、多大なメリットが運動療法にはあります。

*出典:心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012 年改訂版) 2020/1/6更新版

【運動を継続するためには?】

心リハの集団運動療法など、入院中はDrやリハの管理下で運動を継続することは可能です。
しかし、一度退院して外来等で運動療法を継続するとなると、ドロップアウト問題
必ず起きてきます。

良くも悪くも、外来通院できる状態になれば日常生活が主となります。その中でわざわざ軽めの運動
をするためだけに病院に通うとなると足が遠のくのも感覚としてはよくわかります。

しかし、心不全の再発・再入院、今後のQOLの向上を考えると、運動は継続してほしい。
そこで必要になってくるのが「活動と参加」という概念です。
こちらはPTさんよりOTさんが得意とするところだと思います。

管理のしやすさ、わかりやすさだけを取れば、トレッドミルやエルゴメーターでの運動がベストです。
しかしこれらの一番の問題点は「つまらない」ことです。

「心不全状態を改善するために運動しましょう」ではモチベーションを保つのは難しく、
これらの運動を継続できるのは入院中〜退院初期が限度だと思います。
私たちがスポーツジムに途中から通わなくなるのと似たようなものです。

【活動と参加】
留意点

なので「活動と参加」という概念が必要になっていきます。「日常の中に運動を取り入れる」のではなく、
「日常生活が結果的に運動になる」そんな提案ができると良いと思います。

もちろん運動強度の設定は必要です。でもその運動強度ならどんな活動が可能なのか?
庭いじり?部屋の鑑賞植物の水やり?新聞を取りにいく?茶碗洗い?洗濯物を畳んだり干したり?
その人個人の生活の中に役割と活動を見出して、運動強度と比較して提案していくのも良いかと思います。

そのためにはしっかり入院中に患者さんの生活について把握しておく必要があるので、
問診能力やコミュニケーション能力が問われていきます。

どんなに運動療法が優れていても、最後は患者さん自身がそれを継続してくれるかどうか?
にかかってきます。OTさんに限らず、PTさんもこの「活動と参加」をちょっと意識して
患者さんと関わってみると、運動療法が「歩行・自転車漕ぎ運動」だけではないということに
気が付くと思いますので、そんな視点を持ってみてください。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀

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