【作業療法士の苦手克服講座】グラフィック・メディスン(5)マンガ表現と解釈

グラフィック・メディスン

グラフィック・メディスン」シリーズ第5回目。

グラフィック・メディスンとは、いわゆる「医療マンガ」をコミュニケーションのツールとして、とりこぼされがちな「個」にも注目し、相互理解を深めていこうというものです。

前回は「マンガは読みやすいのか問題?」を紹介をしました。

グラフィック・メディスンまとめ記事
グラフィック・メディスン(1)医療マンガはひとを救うのか?
グラフィック・メディスン(2)医療マンガで医療教育は変わるのか?
グラフィック・メディスン(3)マンガをつを使うワークを紹介!
グラフィック・メディスン(4)マンガは読みやすいのか問題?!

今回は「マンガの解釈」の話題です。

 

 

■復習「グラフィック・メディスンとは?」

日本の医療マンガ50年史(一般社団法人日本グラフィック・メディスン協会:編)ではこのように書かれています。

「グラフィック・メディスン」とは、医学、病、障がい、ケア(提供する側および提供される側)をめぐる包括的な概念であり、数量化による捉え方(一般化)が進む中でこぼれ落ちてしまいかねない「個」のあり方に目を向け、臨床の現場からグラフィック・アートまでをつなぐ交流の場を作り上げようとする取り組みです。その一環として、マンガをコミュニケーションのツールとして積極的に取り上げたり、漫画の制作を通して気持ちや問題を共有する活動がさまざまに展開されています。

「個」のあり方に目を向けることは「ひとを見る」ことにつながります。
リハビリテーションの基本的な考え方にも合致しますね。

 

■あるツイートを見て思ったこと

少し前にTwitterで話題になったマンガがある。

「誰も傷つけないマンガ」

として投稿されたものだ。

ツイート元リンク(https://twitter.com/pisiinu/status/1422564909422768130

ご覧いただいたかと思うが、その内容とは……白紙。
コマ割りはしてあるが、コマの中は白紙だった。

僕は素直にこれは面白いと思った。

最初は「あぁ、うん。これは確かに誰も傷つけないわ」と、コロンブスの卵よろしく感心した。

が、それはまだまだ表面的なものでしかなかった。

 

■マンガの作法から言ってもマンガだ!

前回紹介したように、マンガには様々なお作法がある。

それと照らし合わせても、これはマンガなのだ。

マンガは、描き手と読み手の間にコミュニケーションを生み出す道具だ。

このTwitterの投稿に誰一人として反応しなければ、これはマンガとしては成立しなかっとと言える。

タイトルと発表の場、そして読者がいて、リアクションをした時点で、この空白のコマ割りだけされた紙はマンガになった。

 

■批判されなければ成立しなかった?

このマンガに対して、結構辛辣な批判がリツイートされていた。

曰く

      • 「誰かを傷つけることを容認している」
      • 「思考停止のあらわれ」
      • 「作者が発想をひけらかしたいだけ」

なるほど、とも思う。

だが、マンガのお作法から言えば、そのコマの中で表現されたものをどう解釈するかは、読者次第。

作者の意図とは関係のないところまで話が拡大していくのだ。

だから、これはマンガなのだ。

 

■医療マンガの視点で見ると?

さて、改めて医療マンガの話をしよう。

前回、LLマンガ(読みやすいマンガ)を紹介した。
そこに照らし合わせると、このマンガは難易度が高い。

非常に高い。

何しろ、「誰も傷つけないマンガ」として「何も描かれていない」のに、「誰かを傷つけた」と「解釈」されているのだ。

LLマンガとして、ストーリーやキャラクターの心情を意図した通りに伝えるものとは一線を画する。
だが、医療マンガの医学教育、療法士教育として見た時、この無限の解釈は、これ以上ない教材に見えてくる。

「空白のコマ」と「タイトル」

この二つの組み合わせは、まだまだ可能性が隠れていそうだ。

 

■あとがき?

今回は久しぶりに目からウロコが落ちたので、皆さんに紹介しました。
あなたは、どう解釈しますか?

 

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本日は、最後まで読んでいただきありがとうございました。

サイトー
リハカレ認定講師 齋藤 信

 

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参考文献

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