脳卒中リハの中でも、特に時間を掛けるであろう麻痺側への荷重練習。
立位、歩行といった生活範囲を拡大していくための重要なアプローチです。
何故荷重できないのか?
長時間正坐をして、足が痺れてフニャフニャになった経験あるでしょうか?
あの状態では立つこともままならないですよね。
ある意味で、脳卒中患者さんの麻痺、感覚障害に近い状態だと思います。
多くの要因がある中で、
- 麻痺
- 感覚障害
- 高次脳機能障害
これらの問題点に対するアプローチが、脳卒中リハの主流と言ってもいいでしょう。
もちろん持久力や可動域へのアプローチも必須ですが、この3点は脳へのダメージによってもたらされる最初の症状と言えます。
今回はこの3つの問題点を整理していきます。
麻痺
脳へのダメージによって皮質脊髄路(脳の運動野から骨格筋へ伸びる伝導路、錐体路と同義)が障害され、上下肢を動かせなくなる状態。
運動野や一次感覚野からスタートした運動ニューロンが、放線冠、内包、大脳基底核といった部分を通って四肢末端まで下降していきますので、脳がダメージを受ければ、その伝達は阻害されます。
意図した行動の伝達が阻害されてしまうということで、麻痺とは情報の「出力」の問題と言えます。
感覚障害
こちらは反対に上行する伝導路の異常によって引き起こされます。
上行する伝導路とは、脊髄視床路、脊髄小脳路、脊髄網様体路といったものを指します。
名前にある通り、末梢から上行してきた感覚情報が、視床や小脳を介して、大脳皮質へと伝わりますので、それぞれの部分に異常(梗塞・出血など)があると、感覚情報の伝達は阻害されてしまいます。
他にも、筋肉や関節が不使用によって硬くなってしまい、知覚自体に問題があることも多く見受けられます。
感覚障害とは、情報の「入力」の問題と言えます。
高次脳機能障害
この問題が何故荷重練習に関係があるかというと、脳は全身の情報が集約され、それにリアクションすることで、手足を動かしたり歩いたりといった行動をとっています。
しかし、上行してきた情報に対して、脳はすぐにリアクションするわけではありません。
大脳皮質は、その集約された情報に対して、
- 「これは経験したことがあるか?」
- 「この動きをするためにはどの程度の力が必要か?」
- 「これはやってもいいことか?」
など、行動のためのお伺いを脳内の各器官にしないといけません。
でなければ、軽く手を伸ばすだけの動きに異常な力が入ってしまったり、その場に相応しくない行動をとってしまったりします。
この脳内で情報が行き来することを「ループ」と表現されています。
具体的には「大脳皮質基底核ループ」や「大脳小脳神経回路」といったものがあります。
今回は詳しくは書きませんが、このあたりの情報の連絡網を知ると、運動療法に対する介入の仕方が変わってきます。
これらから分かるように、高次脳機能障害とは、情報の「統合」の問題と言えます。
入力・出力・統合の問題
荷重できない原因はどこにあるのか、この3つの観点から患者さんを評価すると、アプローチがより効果的になります。
逆を言えば、感覚障害が顕著である患者さんに対し、ファシリテーションテクニックを繰り返し行って出力の改善を図ろうとしても、大きな効果は得られないかもしれません。
高次脳の問題に対して、末梢の知覚をフィードバックし続けても、効果は得られないでしょう。
患者さんの情報処理過程のどこに問題があるのかを把握し、それに対応したアプローチを選定することが、脳卒中リハを効果的に行うためには大切です。
脳卒中包括的リハビリテーションアプローチ【CCRA】では、これらの問題点へのアプローチを整理してお伝えしています。