【作業療法士の苦手克服講座】グラフィック・メディスン(4)マンガは読みやすいのか問題?!

マンガは読みやすいのか問題

「グラフィック・メディスン」シリーズ第4回目。

グラフィック・メディスンとは、いわゆる「医療マンガ」をコミュニケーションのツールとして、とりこぼされがちな「個」にも注目し、相互理解を深めていこうというものです。

前回は「医療マンガを使ったワーク」を紹介をしました。

グラフィック・メディスン(1)医療マンガはひとを救うのか?
グラフィック・メディスン(2)医療マンガで医療教育は変わるのか?
グラフィック・メディスン(3)マンガをつを使うワークを紹介!
グラフィック・メディスン(4)マンガは読みやすいのか問題?!

 

今回は「マンガは読みやすいのか問題」の紹介をします。

 

■マンガは読みやすいのか?

皆さんに質問です。マンガって、読みやすいと思いますか?

「そう訊いてくるということは、読み辛いんでしょ?」
とか言わず、あなた自身の感覚を教えて欲しいんです。

どうですか?
読みやすいと思いますか?

 

■マンガは障害を持っていても好まれる!

先の質問に回答すると、マンガは読みやすいと言えます。

実際、知的障害を持っている方に「好きな本」についてアンケートをした結果(LLマンガへの招待より)によると、

      • 回答人数399名
      • 回答数544件
      • マンガが好き118件
      • 絵本99件
      • 乗り物の本61件
      • 上記3ジャンルで全体の51%

となりました。

読みやすさがあるから好まれているようです。

 

■マンガは読みやすい……基本的には。

コマ割り
先ほど、「マンガは読みやすいと言える」と言いました。
知的障害に限らず、聴覚障害、読み書きの障害を持つ方もマンガを好むそうです。

ですが、細かい部分に目を向けると、必ずしも読みやすいわけではありません。

実はマンガには、暗黙の了解がたくさんあります。
別な言葉で言うなら、マンガのお作法があるんです。

もしかして、気にしていませんでしたか?_

 

■マンガのお作法って何?

効果線
では、マンガのお作法にはどんなものがあるか紹介しますね。

      • 日本のマンガは右上から左下に向かって読む。(英語圏は逆など)
      • マンガには特有の記号表現がある。(例:ちびまる子ちゃんの困惑時に出る顔の縦線など)
      • 同じキャラクターの頭身が突然変わる。(シリアスでは7頭身、ギャグでは2頭身など)
      • 効果線が使われている。(動きのある表現や、キャラを注目させるなど)
      • コマ割りがある。(シンプルなものも複雑なものも)
      • 時系列がコントロールできる。(突然ラストシーンから物語が始まるなど)
      • 比喩表現が多用される。(背景に心情表現をするためのパターン化された絵が書き足されるなど)

などなど。

普段からマンガを読む人には当たり前すぎますよね。

ですが、これまでマンガを読んでこなかった方や、障害を持つ方などには解釈違いの元、あるいは理解できないものになる。
つまり、ハードルになることがあります。

 

■マンガのお作法が人によってハードルになる

比喩
マンガのお作法が人によってハードルになる場合があります。
マンガは様々な情報を削ぎ落とし、伝えたいことだけ伝えるものです。
ですが、削ぎ落とし方によっては、意図しない解釈を与えてしまうことがあります。

ずっとお話ししている「グラフィック・メディスン」の教育的側面では、そのような解釈の多様性が推奨されます。
ですが、思考や記憶、認知や判断に障害を持つ方には、作者が何を伝えようとしているのかを読み取ることが難しい場合があります。
青年誌(ヤング系)よりも少年誌(ジャンプ・マガジン・サンデー)、少年誌よりも学童向け(コロコロ・ボンボン)が「疲れない」と言う方は、解釈の余地が大きいマンガに疲れているのかもしれませんね。

 

■様々な理由のある人たちへの取り組み

ここまで色々としょうかいしてきました。

今回参考に朝ていただいた本は、

障害のある人たちに向けた LLマンガへの招待 はたして「マンガはわかりやすい」のか
吉村和真・藤沢和子・都留泰作[編著]

です。

「LLマンガ」って何?と思いましたよね。

「『LL Book』という、知的障害や自閉症などで読書活動が十全にできない人たちでも読める本が北欧にある。『LL』とはスウェーデン語のLättläst の略語で、『やさしく読める』という意味。そのマンガ版となる『LLマンガ』を日本で作ってみよう!」

つまり「やさしく読めるマンガ」ってことですね。

先の引用部分が動機で「LLマンガ研究会」を著者らが立ち上げ、まとめたものが今回参考にさせていただいた書籍です。

 

■まとめ

これまで紹介してきた「グラフィック・メディスン」は「医療教育」に偏重してお伝えしてきただけに、患者さんやそのご家族に伝えることを主としたとき、「やさしく読める」ことが大切になりますね。

マンガのお作法は「常識」とも言える内容なので、あらためて「常識を疑う」ことも僕たち医療人には必要かもしれませんね。

つづく

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リハカレ認定講師 齋藤 信

 

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参考文献

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