糖尿病治療にかかせない食事療法。
「糖尿病だから糖質の摂取を
控えた方かいい」というのが
一般的なイメージかと思います。
しかし、「糖質を摂取する=高血糖になる」
という、単純な思考でだけで糖質制限をする
ことに意味があるのでしょうか?
私達の身体にとって、糖質(グルコース)は
必要不可欠なエネルギー源です。
食事から、炭水化物・タンパク質・脂質
を取り込み、消化分解し、様々な経路を
辿り(解糖系・TCA回路など)
身体活動に必要なエネルギー、
ATPを産出します。
ATPを産生するために最も効率がよく、
かつ全身で使うことのできる材料が
「糖質(グルコース)」です。
骨格筋細胞でグルコースを代謝して
ATPを産出するには細胞内にグルコース
を取り込む必要があり、その際に
「インスリン」が必要になります。
しかし、人体の中で一番グルコースが使われる
機関は筋肉ではありません。
グルコース消費の最優先は「脳」です。
そして脳・神経系はグルコースを代謝する際
「インスリン」は必要ありません。
脳はグルコースのみを栄養源にするので、
優先的に使用しやすい仕組みになっています。
ここで糖質制限について考えてみましょう。
食事による炭水化物の摂取量が低下すると、
低血糖になります。
脳・神経のエネルギー源はグルコースに限定
されているため、「低血糖」という状態は
脳にとって非常にまずい状態です。
臨床症状で見られる低血糖症状が、
全て神経系の症状なのはそのせいです。
そのため、血糖コントロールのホルモンは
低血糖を防ぐため、グルカゴンをはじめとして
血糖値を上げるためのホルモンが数多くあります。
(下げるのはインスリンのみ)
また、マラソンやトライアスロンで、
競技の後半に見られる「ハンガーノック」
といわれる現象も「低血糖による脳機能障害」
です。(脳に必要なグルコースが少なくなる
ため、脳の働きが低下して運動できなくなる)
アスリートの場合は身体活動レベルが高く
エネルギー消費量自体が多いので、適切な
量の糖質補給をしなければ、ATPを産出できなく
なりパフォーマンスの低下につながります。
かつ、ハンガーノックの原因にも。
糖尿病の患者さんは、高血糖状態なのに(グルコースが
沢山ある)、細胞の中に入りにくい状態(インスリン作用低下)。
細胞の中にグルコースが入らず、材料不足のため
ATP産出量が減るので結果的に身体活動レベルが下がります。
つまり高血糖なのにエネルギー不足の身体です。
その他にも、細部内のグルコース不足を補うために
「糖新生」を行い、体内のタンパク質(筋肉)や
脂肪を分解してグルコースを産生します。
外から入らなければ、自分の身体を分解して
エネルギーを調達するんです。
アスリートなら、エネルギー不足を
起こさないために適宜糖質の摂取が
必要。
糖尿病患者でも、運動療法が開始になった
段階で、運動するために必要なエネルギーと
しての糖質摂取は必要。(血糖値と相談しながら)
結局は「足りなすぎても、多すぎても困る」
のです。
世の中には「糖質off」の商品や
「糖質制限ダイエット」など
低糖質=健康に良いという間違った
イメージが一人歩きしています。
あくまでも、肥満や病気になった人たち
が、「過剰な量の糖質」を摂取している
場合、制限が必要になるだけです。
メタボ検診で引っかかってちょっと気になっている
方はご自身の糖質量がどのぐらいなのか、書き出して
みると良いかもしれません。
*例 昼食:ラーメン+小ライス、
おやつ:ドーナツ1個など。
明らかに摂取量が多い人だけ糖質制限を考えましょう。
ちなみにラーメンライス(半チャーハン含む)、
焼きそばパン、ナポリタン+パンorご飯など、
ご飯のおかずとして麺類を摂取するのが好きな人は
糖尿病になりやすいので要注意です。
本日も最後まで読んでいただき
ありがとうございます。
国際統合リハビリテーション協会
理学療法士 中嶋 光秀