生活史をどう活かす?

前回はBPSDに対しての薬物療法は”非薬物的介入で改善がみられない場合に薬物療法を検討する”という注意点について整理してみました。
療法士としては、その人が落ち着ける環境をいかに提供できるか?についてしっかりその人の状態を観察していくことが必要です。
では、具体的にどのような観察をしていけばいいのでしょうか?
本日は、その関わり方について整理していきましょう。

1 認知症の記憶障害とは?

記憶は大きく3つに分類される。
・即時記憶(数十秒以内)
・近時記憶(数分〜数十日)
・遠隔記憶(数ヶ月〜数十年)

認知症が初期の場合、近時記憶の障害がみられるものの、即時記憶や遠隔記憶は保たれています。
徐々に進行するエピソード記憶、意味記憶、手続き記憶の順に傷害され始めるが、震災体験やうれしいことなどの情動を揺さぶられる経験は記憶に残っていることがあります。

これらのことにより、”認知症を持つ人は昔に生きている”と言われ、その人がどの時代の記憶が残っているのか?どのようなことが嬉しいのか?が把握できてきます。

2 どのような心理状態なのか?

認知症が発祥すると、記名力だけでなく、注意力や遂行機能にも障害が生じます。
そのような状態に対して、当事者はどのように感じているのでしょうか?

オーストラリア在住で認知症当事者のChristine Brydenは以下のように自分の状態を表しています。
『世界は私たちのテンポより速く、目の回るようなスピードで動いているというのに、私たちは、やれこれをしろ、速く答えろ、ゲームをしろ、グループ活動に参加しろと言われている。あまりにもスピードが早過ぎるので本当は向こうに言って欲しい・・・・』
(引用:認知症をもつ人への作業療法アプローチより)

つまり、認知症を発症し、遂行機能や判断力も低下しているのに、自分たちのペースで活動ができず、常に急かされているような感情を持っている様子です。
私たちにできるのは、今その人がどのくらいの判断力があり、その人が落ち着いて実施できるスピードに寄り添うことです。

3 臨床でのポイント

上記の内容を整理すると、
・その人がどの時代の記憶が残っているのか?
・その人のペースは?
を把握することが非常の重要です。

では、”その人がどの時代の記憶が残っているのか?”はどのように判断すればいいのでしょうか?
そのヒントになるのがその人の生活史です。
その人が今までどのように生きてきたのか?を時系列で把握し、その時の話題をしていき、反応を観察します。
地道ですが、これが重要です。
そのためには、ご家族様、相談員、ケアマネージャーなどにその人の生活史をしっかりと共有してもらいましょう。

4 まとめ

いかがだったでしょう?
認知症をもつ人との関わりの極意は相手の状態に合わせることです。
そのためにもしっかりと相手の観察、生活史の聴取を地道にやっていきましょう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

作業療法士 加藤淳

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