脳血管疾患に限らず、高齢者を対象とすることが多い
私たちにとっては、バランスの評価というものは
重要な評価になっています。
メジャーな評価スケールでは、ボルグバランススケール
(BBS)、ファンクショナルバランススケール(FBS)、
単体では、ファンクショナルリーチテスト(FRT)、
片脚立位時間、タイムドアップ&ゴーテスト(TUG)
など、
また、評価機器としては重心動揺計と、バランス評価と
いってもさまざまなものがあります。
上記の評価バッテリーの良いところは、見える化、
数値化できること。数値化できることで経過を追えて、
かつ対象者に対してわかりやすく成果を伝えることが
できることです。
数字自体の比較や、グラフで見せられると、バランスが
よくなっているということに説得力が増します。
しかし、臨床の場面で効果判定をする場合、毎回BBSや
FBSなどのスケールや、重心動揺計に乗ってもらうわけ
にはいかないですよね?
簡単に取れそうなFRTもそれなりに準備が必要ですし、
片脚立位も、片脚で数十秒耐えるという能力が、
対象者の生活に求められているバランス能力なのか?
という疑問が残ります。
そこで、バランスが取れている、安定しているという
状態は、対象者にとってどんな状態なのか?を
考えます。
多くのバランステストは不安定場面を提供して、
その場面で安定して動けるか?スムーズに可能
であるか?限界まで踏ん張っていられるか?
をみています。
しかし、本来であれば、バランスは取れて
当たり前です。
座っている状態でも、立っている状態でも、
その姿勢を保ち、そこから動き出すこと、
何不自由なく作業をすること。
それがバランスが取れているということです。
実はここがポイント。
当たり前の座位、立位から簡単に
動き出せるかどうか?作業が遂行できるか?
それだけのバランス能力を今有しているか?なんです。
その分かりやすい指標が、「上肢の重さ」
人はバランスが悪くなると、上肢でバランスを
取ろうとします。(平均台の上や雪道を歩くときに
上肢に力が入りますよね?)
なんらかの原因で制御できない不安定感を感じると、
身体は固定しようと反応します。
そのときに、手っ取り早いのが上肢での固定です。
要は何かに掴まればいい。
ものがあれば掴まりますが、なければ外転反応や、
重心が極力動かないように固定しようと身体に力を
入れます。
つまり、座位や立位の場面で対象者の上肢をランダムに
いろんな方向に誘導したときに、誘導方向に対しての抵抗
が強かったり、早かったり、触れた手にもたれかかって
きたりした場合、「その姿勢でいること自体がバランスが
悪い状態」であることの証明になります。
なので、リハビリの効果判定として、リハビリ前と後で
同一姿勢での上肢誘導に対する抵抗感を用いると分かり
やすいです。
最も簡単なのが、上肢から誘導してウェイトシフトをさせ
る方法。対象者の手を持って、ゆっくり外側に誘導して
いきます。
通常なら、誘導されるがまま、バランスが取れる範囲まで
頸部体幹の立ち直りも駆使して上肢を遠くに伸ばしてくれます。
しかし、バランスの悪い対象者は上肢だけ外転位になり、
どんなに誘導しても、ウェイトシフトができません。
とても分かりやすい反応です。ただ1つだけ注意点。
それは、「あらかじめ何をするかの説明をしない」こと。
あくまでもみたいのは、「自動的な反応」です。
対象者に随意的に意図して動いた結果の姿勢を
をみたいわけではありません。
私たちは全ての活動の中で
バランスを自動的に制御しています。
その「自動的な制御」が不十分な場面になると
戻ろうとしたり、その場を動こうとしなくなったり
します。
なので、課題となる姿勢の中で、誘導に対して上肢が
力感なくスムーズにリーチイン・アウトができるか
どうか?(かつウェイトシフトまでするか?)
というのは、身体活動を行うために十分なバランスが
取れているかどうか?の指標になり得ます。
この評価にリハビリ前後で変化があった時は、その後の
身体活動がスムーズになりますので、試してみてください。
あなたの介入した結果、対象者のバランスに寄与した
という、分かりやす指標になりますので、何に対して
どんな介入をしたか?を覚えておいてくださいね。
その後の統合と解釈、考察の材料になっていきます。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
国際統合リハビリテーション協会
理学療法士 中嶋 光秀