エビデンス、サイエンスの活用法

リハビリテーションの領域でも「エビデンスが大事」と言われて久しいです。

 

「この方法にはエビデンスがあります。」

と言われると、なんだか凄そうに聞こえますし、信頼できそうな雰囲気はあります。

リハビリの臨床場面で、エビデンスやサイエンスをどう位置付けたら良いのか。

その点についてまとめました。

 

 

エビデンスレベル

エビデンスレベルというものをおさらいしてみましょう。

「日本理学療法士協会」が引用されていたものを、さらに引用します。

(引用:http://www.japanpt.or.jp/upload/jspt/obj/files/guideline/03_determination_and_classification.pdf

「エビデンスがあります」という言葉の中には「患者データに基づかない専門委員会や専門家個人の意見」の場合も含まれるのです。

 

それが良いとか悪いとかではありません。

 

専門家や専門委員会の「たぶんこうじゃないか?」という発想がスタートで、そこから研究が始まり、大規模調査が行われ、まとめられた「介入方法や評価方法」であれば、推奨レベルが上がります。

 

「エビデンスがあります」という発言の裏にある、

研究のどの段階か?

研究デザインは?

データをどのように解釈した研究か?

と、いう部分が重要です。

 

科学の位置付け

インターネットの普及により、論文に触れる機会は増えました。

論文を読むことのハードルは下がりました。

情報として、データとして、手に入りやすくなりました。

そのデータを試験の勉強のように頭に叩き込んでいる人を見聞きしたことがあります。(試験の勉強なら良いのです)

エビデンスがあると言われる方法が唯一の正解であると誤解しているように。。。

 

 

リハビリを含め、一般的にはエビデンスを構築する方法として「科学(サイエンス)」が用いられます。

科学というのは、「ある現象についての法則を実験によって明らかにしていこうとする」作業です。

つまり「知るための方法」の一つと言えます。

 

 

実験を用いるため、条件を一定にします。

反証を可能にするためです。

科学という方法で本質に迫るためには、できるだけ多くの目が必要になります。

だから、実験方法を開示して、多くの関係者で実践することを可能にします。

そこから得られたことを法則のレベルまで整理していきます。

 

最大の目的は「知る」ことです。

 

科学的であること

ここで気をつけなければいけないのは、「科学的である」ことを過信しすぎないということです。

特に「他者の」行った実験データを根拠として用いる時は。

 

 

その実験の対象は、あなたの発言の根拠となり得る対象か?

その実験の方法は、あなたの発言の根拠となり得る方法か?

その実験の考察は、あなたの発言を裏付ける考察か?

 

哲学の視点とは

科学で表現される世界は、限定的な条件の中で描かれる他者の世界とも言えます。

その世界の情報を取り扱うにあたっては、自分の世界に一度落とし込むことが必要です。

 

そうやって、自分自身のこととして深く考えていくことは哲学の領域です。

哲学も知るための方法の一つですね。

 

「他者の視点」を科学とすれば、「自己の視点」が哲学と言えます。

もうお気づきだと思いますが、リハビリの領域では両方必要ですね。(リハビリに限らないでしょうか・・・)

 

 

自己の発見から始まり、一般的な法則の発見に到達できたとしても、その活用には再び自己が求められる。

そしてまた自己の発見がある。というスパイラルですね。

 

 

知る、という作業に終わりはあるのでしょうか???

 

 

科学にしろ哲学にしろ実践が大切であるわけですので、論文読んでいるだけでは学問の力を活かしきれていないのです。

 

科学を活用する意味

全ての事象について自己を通過させるわけにいかないです。

そのために科学を利用できます。

科学との付き合い方は、そのようなスタンスが良いかな、と感じます。

 

 

自己の経験、体を通すと、発言の質が変わります。

自己の神経系を働かせ、自己の思考と知覚を動員した発言は特に「運動指導や生活指導」で威力を発揮します。

 

科学をベースにした情報への接触が簡単になってきたからこそ、体験を通した(自己の哲学を通した)指導は重宝されると臨床場面で私は感じます。

 

 

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