糖尿病の患者教育が難しい1つの理由

【糖尿病】と聞くと、皆さんどんなイメージを想起するでしょうか?

  • 「生活習慣病」
  • 「太っている人がなる」
  • 「食事制限が必要」
  • 「運動不足」

など・・・。

糖尿病の厄介な点は、上記のネガティブイメージと「自覚症状がない」というところで、なかなか糖尿病ということ自認できず、初期治療に参加してもらいにくいことにあります。

糖尿病治療の第一選択肢は「食事療法と運動療法」。

投薬はこの初期治療がうまくいかず、血糖コントロールが不良になった段階で始まります。

 

逆に、食事と運動のコントロールがうまくいけば投薬せずにすむ可能性が高い疾患でもあります。

そのため、「糖尿病教室」などの患者教育が糖尿病のコントロールに欠かせない取り組みとして、多くの病院で行われています。

 

しかし、糖尿病(疑いも含め)患者は年々増加傾向にあります。

 

特に年代別に見ると、60、70代の世代が総数の大半を占めています。

 

 

ここからは私見にはなりますが、糖尿病性腎症から透析になる患者さんをみていると、比較的頑固というか、我が道を行くタイプの方が多いように感じます。

糖尿病教室に通ってたけど、食事内容などほとんど気にせず好きなものを好きなだけ食べていた方が多い印象です。

 

ではなぜ、糖尿病を疑われたり、透析にいたるような状況にもかかわらず、「糖尿病教室」などで手に入れた正しい情報を活用しながら食事療法や運動療法に取り組めないのでしょうか?

 

ポイントは年齢層にあると思っています。

糖尿病が多い60代以上の世代が、どのような時代背景で過ごされてきたかが1つのヒントになるかと思います。

 

その時代背景とは「戦後の復興と高度成長期」この時代の食に対するイメージは

「腹一杯食べて、働くための活力にする」
「腹一杯食べられることが幸せ」
「腹一杯食べること=元気になる」

そんなイメージです。

今でいう「飲みニケーション」「大事な話は食事をしたあと」

腹を満たすことで満足させ、物事を進めていく。

 

そんな時代だったと思います。

なので冒頭に書いたとおり、糖尿病のイメージに「食事制限」があると、そこに対する抵抗感が非常に強く出るかと思われます。

 

腹一杯に食べられることが幸せだったのに、「その幸せを制限すること」が病気の治療につながる。でも自覚症状はない。

でも合併症による症状がいつ、どのような経過で出るのか?もはっきりしない。

なら、いつ出るかわからない合併症を気にして生活するより、腹一杯食べて幸せを感じて生活したい。

 

そんな気持ちになっても不思議ではありません。

 

衣・食・住を満たすことが幸せの時代背景があり、その真っ只中を駆け抜けた現在の60代以上の方々。

正しい医療・知識の植え付けだけでは、糖尿病の治療行動にはつながりにくいです。

いかに食事を楽しみながら、量とカロリーを調整するのか?余暇活動を生かして運動量を確保するのか?

患者さん個人の背景に沿った関わりが必要になってくると思います。

 

我々セラピストは、疾患別リハとしては糖尿病に関わることはできません。

 

でも、他の疾患別リハをしながら、併存疾患としての糖尿病には間接的にアプローチができます。

 

何より、個別に関われ、個人間の信頼関係を作りやすいという大きなメリットがあります。

 

患者さんの生きた時代背景も含めて、考えることで糖尿病の治療継続を進めるきっかけになるかもしれませんね。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。
国際統合リハビリテーション協会
理学療法士 中嶋 光秀

 

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