歩行分析の前に姿勢からみよう!〜構えとしての立位〜

動いているから難しい

実習生の頃から悩まされる歩行分析。免許を取得してからも、ずっと課題になっていると思います。
特に歩行・動作分析を難しくしているのは「対象が常に動いている」から。

1箇所に視点を置くとその他の場所が疎かになり、一度見逃すと変化を追うことができなくなって焦ってしまう…。
全体を見ようとすると、細かいところが分からず、なんとなくしかみえていないような気がする。
一緒に観察・分析した同僚・先輩の意見を聞くと、自分がみれていないところをみていて不安になる。

そんな日々を過ごしている方も多い方と思います。

では「動いているから難しい」なら、「止まっているなら簡単」なはず。
そこで簡単に「止まっている状況」を作り出せるのが動画撮影。何度も巻き戻し、コマ送り。
これは確かに便利ですし効果的です。

しかし、臨床の現場ではその場で観察・分析をし、仮説を立てて介入しなければなりません。
動画をじっくり見てから介入している時間はないのが現実。(勉強のために動画を使うのは有効です)

そこで動作の中で「止まっている状態」の部分をまず観察することから始めます。

動作の開始と終了は止まっている

どこをみるか?というと、歩行でいえば歩行開始前の「立位姿勢」。歩行前の立位姿勢はスポーツでいう「構え」の部分。
剣道などは構えの位置によって太刀筋の得手不得手が決まります。上段の構えから胴は打ちにくいですよね?
上段の構えなら面を打つのが一番スムーズ。つまり「構え」はその先に起こる運動の準備として起きています。

構えがわかると運動がわかる?

では下図の立位姿勢を見て、どんな歩き方をするか想像してみましょう。

細かい分析はぬきにして、猫背で姿勢が悪いのはわかります。
ではこの立位姿勢の方がこのように歩く姿は想像できますか?

どちかかというと、こっちの方がしっくりくると思います

先程の構えの話の通り、立位姿勢による影響を色こく反映させて歩行が始まる方が自然です。
つまり、動作を変えたければ、運動前の構えの姿勢を変えること。運動中に動作を修正するのは難しいのです。

立位姿勢が違えば、身体にかかってくる外力(回転モーメント)も変わってきます。
当然正常歩行のような関節モーメントを使って歩行するのは困難です。

細かい歩行分析の前に構えとしての立位をみることで、どのように歩くのかのイメージができます。
また、「構え」としての立位姿勢が変化すればその先の運動(歩行)に変化が出るのも想像できると思います。

歩行分析が苦手で歩行への介入に苦手意識のある方は、まずは「構えとしての立位」を
より直立位に近づけるように介入してみると、歩行が変わるかもしれません。
あとは臨床で試して、仮説検証してみましょう!

最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀

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