患者さんの分析の前に、自分で動けますか?〜自分の寝返りを内観してみよう〜

正常運動パターンを自分で再現できますか?

療法士にとって動作分析は欠かせないスキルです。そして各動作には一応教科書的な「正常運動パターン」があります。

代表的なのは正常歩行(ランチョ・ロス・アミーゴ方式)ですが立ち上がり、寝返りにも正常運動パターンは存在します。

普段は患者さんの動作を見ながら不足している部分をサポートしたり、口頭指示をしたりして、
今できるであろう理想のパターンへ導きながら、運動学習を狙って反復練習すると思うのですが、
そもそも指導役の私達療法士は患者さんに提示するようなパターンで動けているのでしょうか?

自分の動作をみて、内観してみよう

先日自分の歩行動画を撮る機会があり、その動画をみると、自分では普通に歩いていたつもりが
右肩下がり。かつ、なかなか前に進まず足を前に投げ出しているような歩行でした。

私自身、ボディーイメージとの乖離がかなりあったので、改めて他の動作で身体の動きを内観をしてみようということで
最も簡単であろう「寝返り」をチョイスして試してみました。

寝返りの正常パターンは頭頸部の屈曲回旋を皮切りに起こる上半身の回旋運動が下肢に波及していく「屈曲パターン」。
知識としては知っています。では自分の寝返りはどうでしょうか?

ズバリ、私は正常パターンでの寝返りができません。頭頸部の屈曲より先に、下肢の活動が入ります。
つまり、下肢の屈曲回旋から、上半身に立ち直りが波及する「伸展パターン」になってしまいます。

そこで、頭頸部の動きからスタートする屈曲パターンでの寝返りを試みると、途端にギクシャクした動きになります。
意識しないとヘッドアップできない、肩甲帯の屈曲に左右差がある、上半身が回旋しても骨盤がついてこない・・・
などなど、自分の体の動かしにくいところが手にとるように感じます。

内観することの意味

内観ができるようになると、どこの可動性を出すともっとスムーズに寝返りできるのかな?どのタイミングでどこに力を入れた方がいいな、など、自分が動くために自分は何を感じて、何をしているのか?ということを意識下に持ってくることができます。
その経験は患者さんに指導する際、うまくいかない場合に何を頼りにして動作をすればいいかを伝えることができます。

つまり「そのやり方は違う」「そうじゃなくてこう」「正しいやり方だとこうです」という「知識」だけで動作指導するのではなく、知識+体感・体験による感覚的なアドバイスもできますし、きっとここが動きやすくなるとスムーズになるかも?というサポート部分もみえてきます。

動作を指導するなら、まず自分で体感・体験してみる。まずは寝返りから内観してみてはいかがでしょうか。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀

 

関連記事

  1. 肩関節周囲炎の評価ポイント⑤

  2. 精神療養病棟で疾患別リハを始めたい!令和2年診療報酬改定案を具体的に考えてみる【作業療法とは?】

  3. うっ血性心不全〜合併症・既往歴にあった場合、注意すること〜

  4. 集団療法の構造2

    【作業療法士の苦手克服講座】集団療法の組み立て方(2)「基本のほ」で学ぶ集団療法の構造とは?

  5. ハンドリングを疎かにしない〜操作ではなく、動きを感じる〜

  6. 糖尿病だけど、痩せているなら問題ない?〜肥満≠糖尿病と運動の必要性〜