関節可動域制限を甘くみない。〜40肩を経験して〜

関節可動域を広げることはポピュラーな介入

ROMexやストレッチ等、関節可動域を広げるための手技は数多くあります。

療法士にとってはポピュラーな手技であり、どんな患者さんにもプログラムに組み込まれていることが多いと思います。

関節可動域といえば、日整会の参考可動域が基準となり、ROMexで目指す可動域の1つの目安となります。

例えば肩関節。正常の可動域は以下のとおりです。

出典 http://www.japanpt.or.jp/upload/jspt/obj/files/publiccomment/4_rom_20140612.pdf
日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会(1995 年)
日本整形外科学会雑誌 69,240-250,1995.リハビリテーション医学 32, 207-217, 1995.

正常可動域は必要か?

肩関節の可動域は屈曲・外転ともに180°あり、内旋80°、外旋60°と、非常に広い範囲です。

ただ、日常生活で使用する可動域を考えると、ここまでの可動域が必要か?となると疑問が持たれていました。実際、過去にもその様な議論がされてきたと思います。

日常生活動作で必要な可動域は検索すればたくさん出てくるのでここでは割愛しますが、やはりフルレンジは必要ありません。
印象で言うと7割程度の可動域があれば日常生活に困ることはない様です。

自身が可動域制限を経験して

私自身、恥ずかしながら左肩が40肩となり半年が過ぎました。時々痛みがありながらも、日常生活や通常業務の中では特別支障がなかったので肩関節の可動域については特に気にかけていませんでした。

しかし肩甲骨周囲の違和感を覚え始めた2ヶ月前から急激に痛みが増え、可動域が低下し、気がついた時には自力では屈曲100°、外転70°が限界になっていました。(代償込みなので正確にはもっと少ないはずです)

そうなると、途端に日常生活動作に支障が出始めます。特に更衣動作が中心で、上着の袖通しや、ズボンをあげて裾をしまう時など何気なく動かした瞬間、痛みや代償動作がでてスムーズさと正確さに欠けてしまいます。

日常的に行っていた動作はなかなか抜けないため、動作をしてから、あれ?届かない?とか、痛みがでる可動域まで動かして、痛みで悶絶したりと苦労しています。

患者さんには「可動域の許す中で、かつ痛みの出ない範囲で活動してください」なんて、よくアドバイスをしていましたが、実際にはそれを意識して生活するのはとても大変です頭でわかっていても、とっさに出る動きは、痛みの出ない可動範囲内での動作ではなく、しっかり代償動作を使っています。代償動作で対応できる範囲を超えて痛みが出ることも。

毎日、毎時間ちょっとした動作で意識をしなければ動かせないという状況はかなりのストレスと時間を奪います。

1関節の可動域制限を甘くみない

私自身、肩の可動域制限を体験して感じたのは、「1関節の可動域制限を甘くみない」ということ。

上記に書いた以外にも、肩を庇うように身体が反応しているようで、バランスが悪くなったり、躓いた時のステップ反応や外転反応がうまく出なくて足がもつれる場面などもあります。

可動域制限に対する介入は、ポピュラーであると最初に書きました。

しかし、一度可動域制限を作れば、途端に生活に支障がでます。1関節の可動域制限をきっかけに身体の使い方が偏り、環境への適応が困難になります。

ポピュラーな介入でも、しっかり結果を出す。可能な限り正常可動域を目指して。

ほんの少し可動域が変化するだけでも、身体はそこを使って適応できる幅を広げていきます。より「楽に動く」ためにも、関節可動域に対する介入はしっかりやっていきましょう!

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。
理学療法士 中嶋 光秀

 

 

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