姿勢分析の基本②
前回は
・動作は姿勢の連続であり、開始姿勢の影響を受ける
・基本姿勢として背臥位から見る
・背臥位の基本は重力除去位であり、全身の素のアライメントをみるのに最適
という内容でした。今回はその続きです。
背臥位の力学的特徴
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まずは力学的特徴から。簡単にいうと、支持基底面が広く、重心が最も低い姿勢です。
物体としては安定している状態で、反面、動くためには筋力が必要です。
「歩けるけど、ベッドから一人では起きれない」という患者さんが多いのはそのためです。
寝返りも起き上がりも、抗重力活動のため筋力低下が動作に直結します。
また、患者さんの中には「背臥位が安定しない」という方もいますし、私たち健常者間でも
目立った可動域制限がないのに背臥位に左右差やねじれがあることも多くあります。
力学的に考えると安定した状態なのに、一体何が起こっているのでしょう?
筋緊張の分布をみる
片麻痺のある方は非常に分かりやすいですが、筋緊張の分布によって背臥位の安定が変わってきます。
単純に右半身筋緊張が低いという前提にすると、筋緊張の低い右半身は筋肉の張りが失われることで
床面に落ち込んでいきます。平らなベッドに寝ているのに、右半身だけ沈み込んでいくような感覚が
入るのです。(右に転がりそうという方もいます)
そうなると、何をするか?というと、左半身で踏ん張ります。
よく見かける、背臥位なのにベッド端を掴んだり、踵や頭頸部を床に押し付けたりする反応は
この筋緊張の分布の左右左によって入ってくる偏った身体感覚からくる反応になります。
「力を抜いてください」と言ったり、「マッサージ」しても緊張が抜けないのはこのためです。
患者さんがこの状態になっているかどうかを確かめるには、緊張の低い右半身に補正が必要です。
簡単なのはバスタオル等を右半身に下に敷いて見た目の左右左を埋めてあげること。
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たいてい、水平面から見ると乳頭ラインや骨盤が右側に傾いているはずなので、まずはバスタオルで
見た目の傾きを補正してあげる。結果的に右に落ち込んでいく、転がっていくような感覚は薄れる
はずですので、その状態で左半身や頭頸部の押し付けるような緊張が抜けているかどうか?
を四肢や頭頸部を他動的に持ち上げた時の抵抗感で判断します。
(必ずバスタオルを敷く前に一度確認しておくこと)
従重力位である背臥位の時点で、筋緊張の分布の左右左による健側の押し付けがあるのなら、
抗重力位である座位や立位姿勢でも、「健側の力が抜けない」という現象は起こります。
それは「動作は姿勢の連続であり、開始姿勢の影響を受けて動作をし、終了姿勢になる」
ということと一緒です。力学的には安定している姿勢ですでに過活動があるのなら、
より不安定な姿勢でその活動をやめるなんて芸当はできません。
いつも何気なくみている背臥位にも、実はいろんな情報が隠れています。
一番安定した姿勢での、アライメント不良や筋緊張の分布異常。
もう一度分析し直してみてはいかがでしょうか?
次回は背臥位から動作を予想してみましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀
