*2019年5月の記事を加筆修正しています。
動作分析の難しさをあげるとすれば、それは「対象が動いているから」と言うことができます。
目で追わないといけない部分がたくさんあるのに、対象が動いてしまうので、どこを見たらいいかわからなくなってしまう。
そんなことがありませんか?
対策として「姿勢観察をする」ことを提案します。
この記事では、姿勢観察によって得られたことを考察する方法についてお伝えします。
動作分析にも通じる部分がありますよ。
◇姿勢観察から考察へ
姿勢観察の結果を考察する際に、どんな考え方をベースにするかで、方向性が変わってきます。
数ある考え方の中から、今日は「力学」をベースにして考えてみます。
力学と聞くだけで、距離を置きたがる方もいるかもしれませんが、私程度が説明する力学ですのでさほど難しくありません。
臨床でも活かしやすい考え方ですので、参考になるかと思います。
対象者の姿勢観察から評価考察する際に、姿勢をそのまま取り扱うのは困難を極めます。
なので「単純化する」という作業を一番初めに行います。
人間の体を剛体モデル化して図示することを、ここでは「単純化する」としています。
(極めて簡単に表現すると、「確認できたことを絵に描く」ということです)
その単純化のために、ランドマークの触診が必要なのです。
◇姿勢観察の結果を紙に書く
単純化は人体の部位を各分節に分けて行います。
頭部
体幹
上肢(上腕、前腕)
骨盤
下肢(大腿、下腿、足部)
どういう風に単純化するかは好みですけど、○とか□で十分です。
そして各部位にどのような力がかかっているかを推測していきます。
*圧縮と伸張の組み合わせがほとんどです。
重力も考慮に入れて、対象者が主訴を訴えている部分にどのような応力が生まれているかを推測していきます。
同じ姿勢だとしても、各部位にかかる応力は異なります。
例えばこの図の姿勢でも
右と左ではこのように異なります。
どの部位に働くどんな応力が、どの組織に加わって主訴になっているのかを推測します。
◇原因なのか結果なのか
現場では、いわゆる左右対称で正中化した姿勢を「基準」にしてどのくらい逸脱しているかで「不良姿勢」かどうかを判断していると思います。
その姿勢が
・主訴の原因を作り出しているのか
・主訴を和らげるためなのか
で、プログラムの方向性は変わってきます。
何かの機能制限を代償するための姿勢であった場合、単純な正中化は主訴の軽減に結びつきません。
なので、対象者の姿勢を「原因と結果」に分けることが重要です。
つまり姿勢をアウトカムにするのです。
方法は単純です。
★(術者が)対象者の姿勢を他動的に正中化する。
その結果
と考えることができます。
これでプログラムの方向性が決まりますね。
◇仮説、予測、考察
プログラムの方向性と主訴の元になっている応力がわかったら、その応力が「どの組織」に加わっているかを特定していきます。
問診や触診や検査が必要です。
相手が(深さを含めて)どの辺にどのように感じているかを聞き出せれば、主訴の責任部位(組織)が予想できます。
さらに炎症が起きているか、浮腫なのか、筋攣縮なのか、神経症状なのか、複合的なのかという「状態」も予想できてきます。
特定するために徒手的な検査を行うことでその信ぴょう性は増します。
(最近はリハビリ室でもエコー検査が行える場所もあるようですが、ほとんどの場合そうではないので、やはり徒手検査の水準は高めておきたいです)
◇目的は診断ではなく治療介入する対象の特定
姿勢観察や徒手検査をすることは「診断」が目的ではなく、「機能制限の原因の特定」が目的です。
主訴を訴えている部位にどのような変化が起きているのかを総合的に判断するために、療法士も徒手検査を行うのです。
例えば、前十字靭帯損傷(または断裂)を鑑別するテストに「前方引き出しテスト」や「ラックマンテスト」があります。
これらのテストを非麻酔下で行うことの信頼性はかなり低いです。
しかし、術者の手には関節動揺が「感じ」られます。
その感触と運動分析を絡めて、予後予測やプログラムの遂行に生かすわけです。
まとめ
姿勢観察を行い、人体を単純化(剛体モデル化)して、力学の概念を使って考察していく方法を紹介いたしました。
こういった姿勢観察の評価は「止まっている」ものを考察するので比較的やりやすいです。
では動作分析(運動分析)だといかがでしょう?
ハードルが上がりますね・・・
しかし、静止姿勢とは連続している運動の一部分を切り出したものと捉えられます。
そのため姿勢には運動(動作)の特徴が現れます。
静止姿勢を考察するということはとても有意義な評価です。
止まっている状態で評価しますし、紙とペンがあればできるので、ぜひ取り入れてみてください。
デジタルデバイスが進化して、スマホとアプリケーションだけでもかなり分析はしやすくなっています。
静止画像や動画を使って解析するソフトも以前より手に入りやすくなってきました。
しかし、リアルタイムに捉えるという意味では、その場で観察して考察できるに越したことはありません。
(書籍の紹介:「観察による歩行分析」)
評価結果を検証し、対象者の日常生活に行動変容を促す手段として「徒手介入」または「運動指導」が必要になります。
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