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バイタルチェックとしてポピュラーなSpO2
日常的に計測するバイタルサインとして、体温、血圧、酸素飽和度(SpO2)はよく使われます。
特にSpO2は呼吸に関連する項目として簡便にみれる数値として重宝されています。
しかし、SpO2は万能な数値ではなく、
- その数字が持つ意味を知っているかどうか?
- 血球データや心機能に左右されるということを分かった上でみているのか?
が重要になってきます。
バイタルサインとしての呼吸数
SpO2を呼吸の良し悪しの指標とする場合、98%以上の数字が出ると私たちは安心します。
しかし、上記のように、血液データ等に左右されるので98%という数字が、実際の換気状態を反映しているか?
ということとは別物になります。
そこで追加したいのが呼吸数(正常値は12〜20回/分)です。
例えば、COPDの患者さんで、SpO2 96%で呼吸数が25回以上(頻呼吸の定義)の場合。
(*血球データは正常で、貧血や心機能の影響は受けなていない前提で考えます)
SpO2が96%だと、「数字は正常範囲内だから安心」となりがちです。
しかし、ここに呼吸数の評価を加えて、頻呼吸であるという状態がわかると意味が変わってきます。
つまり、呼吸数をあげることで96%をどうにか保っている(代償している)ということです。
ここで考えられることの一つが、呼吸性アシドーシスの代償による頻呼吸。体の中にCO2が溜まってくると、体は酸性に傾きます。そこで呼吸数を上げて、換気を改善させるよう代償的します。
このCO2濃度やpHの変化により、身体は換気を促進したり、抑制したりします。換気を促進したければ、呼吸数は増えますし、換気を抑制したければ呼吸数は減ります。過度な運動をしていないのに頻呼吸になる場合、体内にCO2が溜まっている(吐けない)状態である可能性があります。
換気の促進と抑制
換気の促進要因(呼吸数が増える)としては
- CO2の増加(最大の刺激要因)
- pHの低下(アシドーシス)
- 代謝促進(運動)
- 低O2
などが挙げられます。
換気の抑制要因(呼吸数が減る)としては
- O2の増加
- CO2の低下
- pHの上昇
などが挙げられます。
通常はCO2の増加が換気の促進要因になるので、呼吸数が増えれば体内のO2が増加しCO2が減るため、換気が改善されます。
しかし、COPD患者さんなど低換気状態にある人は、常に高CO2、低O2状態に慣れています。
よって換気の促進要因としてはCO2の増加より低O2の要素が強くなります。
この状態の患者さんが何らかの原因でSPO2が低下した場合、酸素投与は適切な判断でしょうか?
CO2ナルコーシスに注意!
低O2が換気の促進要因になっている(呼吸数を上げる要因が低O2によるもの)場合、不用意に酸素投与をすると、
O2増加により換気が抑制され呼吸数が下がり、結果的にCO2が排出できず、「CO2ナルコーシス」になります。
そのため、酸素投与後は呼吸数に変化がないか一定の時間観察が必要になります(+高C2血症の症状が出ないかどうか)。
つまりSpO2が下がったからO2投与、もしくは流量UPしましょうという単純な発想では危険であるということです。
一見SpO2が正常範囲でも、呼吸数を追加してみることで、そのSpO2は換気が十分なされている結果なのか?、呼吸数による代償で結果的に換気が保たれているだけのか?(実質的な低換気状態)その後のリスク管理に関わってきます。
長らく在宅で酸素療法を取り入れている方の中にも、SpO2が正常範囲内でも呼吸数が多くなっていれば低換気状態になっている可能性が高いです。うかつに流量を上げるとCO2ナルコーシスに移行するリスクを秘めていますので、呼吸数を必ず評価に追加しておきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀