高血糖は慢性炎症をまねく?〜糖尿病と慢性炎症の関係性について〜

糖尿病と慢性炎症

近年、糖尿病治療のトピックスとして、「慢性炎症」というキーワードがあります。
簡単にいうと、脂肪細胞から出るホルモンを原因とする慢性炎症が糖尿病の原因につながっているのではないか?
という研究が進んでいる最中です。

出典:慢性炎症の視点から見た2型糖尿病の成因 糖尿病54(7) 476~479 2011
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/54/7/54_7_476/_pdf/-char/ja

脂肪細胞の役割

体内に蓄積された脂肪細胞には、「内分泌系」という役割も持っており、脂肪細胞からもホルモンが分泌されています。


出典:https://www.fukui-kouiki.or.jp/tounyobyo.pdf

脂肪細胞にも2種類あり

  • 「皮下脂肪」と言われる小さな脂肪細胞
    (脂肪細胞の数が増えると皮下脂肪肥満になる)
  • 「内臓脂肪」と言われる大きな脂肪細胞
    (脂肪細胞のサイズが大きくなると内臓脂肪肥満になる)

に分けられます。

中でも内臓脂肪から分泌される炎症性サイトカインである

  • 遊離脂肪酸
  • レジスチン
  • TNF-α

はインスリン抵抗性を高める働きがあります。つまり、内臓脂肪が多いと糖尿病になりやすいということにつながります。

脂肪細胞が増える(サイズが大きくなる)原因

では、この脂肪細胞、なぜ数が増えたり、サイズが大きくなるのでしょう?答えはご存知の通り、高血糖(糖質過多)です。

通常体内に取り込まれた糖質(炭水化物)はグルコースに変換され、細胞に取り込まれてATPを産生する材料になります。
しかし、大量に細胞内に入ると、ATP産生でも消費しきれず余ったグルコースは、「脂肪細胞」として体内に貯蔵されます。

つまり、過食や運動不足を起因とした高血糖状態は脂肪細胞の蓄積を招き、その脂肪細胞から出る炎症性サイトカインがインスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病になる原因の一つとなっていると考えられています。

グルコースの過剰代謝による弊害

細胞内でグルコースが解糖系で処理される際、一部のグルコースはポリオール代謝経路という副経路にもまわされます。
この経路では代謝産物としてソルビトール、フルクトースが産生されます。これらが活性酸素の産生を刺激し、
血管障害を助長する
とも言われてるため、過剰なグルコースが副経路に多く回ることで糖尿病の合併症を引き起こす可能性があります。

出典:公営社団法人東京都医学研究所HP
http://www.igakuken.or.jp/medical/medical03/03-2.html

今後の慢性炎症を抑制する糖尿病治療薬の開発は、糖尿病治療における大きな飛躍となる
可能性があります。

しかし、慢性炎症の原因がもとを辿れば過食や運動不足による高血糖&脂肪細胞の蓄積
にあるのなら、食事コントロールや運動が慢性炎症の発生を抑える大きな一手になるはずです。

慢性炎症は糖尿病に限らず、代謝性疾患やさまざまな疾患の原因になっているというのが
最近のトピックスとなっています。

疾患を抱える前に、運動の大切さについて一般の方々に伝える必要がまだまだありそうです。
ホリエモンこと堀江貴文さんが独自に糖尿病についての啓蒙動画を公開されています。

私たち療法士も、知識を活かした一般向けの発信をどんどんしていく必要がありますね。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀

 

 

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