糖尿病の運動療法 〜正しい情報と継続できるかは別〜〜

 

糖尿病の治療ではインスリン治療が
最初に思い浮かぶ方が多いかもれませんが、

 

実は食事と運動療法が治療の第一選択肢。

 

その後、食事・運動療法でも血糖コントロール
が不良の場合、経口薬が処方。

 

食事・運動+経口薬でもコントロール不良なら
インスリン注射となります。

 

薬を飲めば治ると思っている患者さん
が多いので、薬を欲しがる人や、薬を飲んで
安心してしまう人がいるのは患者心理として
はよくわかります。
(そんな私達も、風邪薬を飲んで安心してます
から、糖尿病気質って呼ぶのはナンセンス)

 

ですが、糖尿病は慢性的な高血糖
状態が引き起こす血管障害による
合併症が主な症状となるため、

 

高血糖にしない(食事)、
血糖を消費する内臓脂肪を減らす(運動)

 

この2つが投薬が始まっても不可欠です。

 

私達が関わるであろう運動療法については
すでにガイドラインで指針が示されています。
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

 

しかし、問題が1つ。
有酸素運動、レジスタンス運動双方が有効と
されていますが、ガイドラインで示された
条件では継続が難しい

 

 

【有酸素運動】
150分以上/週(週3日以上、2日以上間を開けない)
運動強度は中等度〜強度

【レジスタンス運動(筋トレ)】
週2〜3日、8〜10種類のメニューを
1セット10〜15回からスタート

 

 

このガイドラインで示された条件を見ると、
エビデンスがあるのは十分承知していますが、
「継続は可能か?」という点ではかなり
疑問です。

 

また、高強度インターバルトレーニング
という最近だとタバタ式やHIITという
ような運動が有効だという研究もあります。

 

何れにせよ、統計上糖尿病患者数が
最も多いのが60才以上。(全体の7割)

 

この対象者に上記の運動を処方・継続
してもらうのはムリがあります。

 

若くて健康な私達でもこの内容を習慣づける
のはかなりの努力と意志が必要です。

 

どんなに医学統計的に優位とされる方法
でも、継続できないなら意味はありません。

 

そこで最近注目されているのが
「日常生活活動でのエネルギー消費」

 

つまり家の中の生活で、座りすぎていないか?
どの程度活動しているのか?が血糖コントロール
やその後の心血管イベントに影響してくるという
報告が出てきています。

 

そうゆうことなら、私達セラピストの出番です。
患者さんから生活状況を詳しく聞けるのは、
私達セラピスト。そして患者さんも、私達
に話してくれることが多くあります。

 

これは医療職の中でもリハビリ職種の強みです。

 

一定の時間患者さんと2人で共に時間を過ごす
ためラポール形成がしやすく、患者さんの
生活背景や環境、人生の物語などを話す
機会が多くあります。

 

そこに踏み込めると、日常生活活動の
どこにエネルギー消費を増やせる場面が
あるのか?

 

そこに趣味活動を取り入れたり、ただ散歩
するにも、楽しい目的(病気を治すではなく、
どのような生活を送りたいか?など)を作ることで
結果的に身体活動量が増え、血糖コントロールに
つなげるような試みが重要になってきます。

 

もしかすると、PTよりOTのほうが向いてる
かもしれませんね。

 

ただの散歩も、スマホ片手に道端の花の写真
や風景を撮ったり、バードウォッチングしたり、
ペットの散歩を日課にしたり、趣味、楽しみの
中に運動要素を取り入れて、楽しく継続する。

 

テレビの前のソファーで1日中過ごしているなら、
特に男性なら、トイレは必ず座ってする(トイレにい
く回数だけ立ち座り動作が増える)とか、自分の食器は
自分で洗うとか、家事の一部を担うのもあり。

 

この辺の具体案は、患者さんの個人・環境因子に左右
されるので正解はありません。

 

そこはデータや文献ではなく、
患者さんとのコミュニケーションがものをいいます。

 

ガイドラインに沿った正しい情報はDrから説明されます。
だからといって私達が、ガイドラインに沿った方法に固執
して、「正しい方法で運動しましょう」一辺倒では、
糖尿病患者さんは減りません。

 

患者さんが生きてきた生活背景・環境、人生の物語。
ぜひそこからアプローチを導いてみてください。

 

そのほうが、お互い楽しい時間が過ごせると思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

国際統合リハビリテーション協会
理学療法士 中嶋 光秀

 

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