糖尿病だけど、痩せているなら問題ない?〜肥満≠糖尿病と運動の必要性〜

糖尿病=肥満のイメージ

糖尿病といえば、過食や運動不足による肥満が元で起こる病気として、一般的には認知されていると思います。糖尿病には1型と2型という分類があり、1型が先天的なインスリン分泌不全による糖尿病であるのに対し、2型は生活環境・習慣の悪化+遺伝的要素による血糖値の上昇が原因とされています。

糖尿病の仕組み

1型糖尿病は、「インスリンがそもそも分泌されない」ので、血液内の糖を細胞に取り込むことができません(糖はエネルギー源であり、インスリンは糖を細胞の中に取り込むために必要なホルモン)。血糖をエネルギー源として細胞内でATPを産生したいのに、インスリンが分泌されず糖が入ってこないため、代わりに「糖新生」という仕組みを利用して、体内の脂肪細胞やタンパク質(筋肉等)を分解して、血糖以外のところから糖を作り出し、エネルギーとします(結果として痩せます)1型の場合は、インスリンさえ補充できれば血糖を細胞内に取り込めるので、「インスリン注射」は必須ではありますが、肥満との因果関係はありません。

2型糖尿病では、「過食・運動不足による肥満などが原因となり高血糖状態が続く」ことで、インスリン抵抗性というインスリンは出てるけど、細胞側が上手く結合できない状態、高血糖による膵臓機能の障害でインスリンの分泌自体が低下することで、高血糖となります。

2型糖尿病でも痩せる?

2型糖尿病の発症早期は過食・運動不足を起因とする肥満がインスリン抵抗性を高くしたり、膵臓機能低下を招くので、一般的な「糖尿病=肥満」というイメージもあながち間違えではありません。しかし、糖尿病を長く患っていくと状況は変わります。1型の「インスリンそのものが分泌されない」、2型の「インスリン抵抗性が高くなる」のどちらにせよ、結果的には細胞内に糖を取り込みにくい状態になることには変わりがありません。その結果、細胞内のエネルギー不足を補うために「糖新生」を行うため、脂肪細胞・タンパク質の分解が進み痩せていきます。

2型で痩せているなら注意が必要

つまり、2型糖尿病で「痩せている」患者さんは、糖尿病の罹患歴が長く、かつコントロール不良状態が続いている可能性が高いので、合併症を引き起こす可能性(もしくはすでに多岐に影響を受けている)が非常に高いです。当然、運動療法による介入時のリスク管理もしっかりしなければなりません。

痩せているから運動は必要ない??

高血糖状態が続いていること自体と肥満かどうか?は関係ありません。糖尿病は「インスリンの欠乏・分泌不足、抵抗性の増加等により血糖をエネルギーとして細胞内に取り込みにくい」状態なので、インスリンに依存しない方法で細胞内に血糖を取り込む必要があります。

そこで運動が必要になります。インスリンが細胞に結合した際、細胞側から「GUTL4」というホルモンが分泌されて初めて血糖が細胞内に取り込まれるのですが、このGUTL4はインスリン依存性だけではなく、「筋収縮」の刺激に対しても分泌されます簡単にいうと「運動すればGUTL4が分泌されて、血糖をエネルギーとして利用可能になる」ということ。糖尿病に対する運動療法は、肥満の解消ではなくGUTL4の分泌による血糖の消費を狙っています。目的が「高血糖状態の是正」にあるので、肥満であるか、痩せているにかかわらず、運動療法が必要になります。

糖尿病に限らず、「なぜ病気になるのか?」「どういう仕組みで病気になるのか?」ということを知ると、療法士としてどんな介入をしていけばいいのが見えてきます。リハビリテーションの方法を探す前に、疾患に対する学びを進めてみるといろんな気づきが出てくると思いますので、ぜひ頑張ってみてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

リハカレ認定講師
理学療法士 中嶋 光秀

 

関連記事

  1. 出し惜しみするな!失墜しない最後の行動【目考!リハ科経営塾2020】(207)

  2. 腰椎骨盤リズム 評価と筋へのアプローチ

  3. 触診を上達させるためのポイント②

  4. 集団レクの仕組み

    【作業療法士の苦手克服講座】OTが伝える集団レクの仕組み[まとめ]

  5. 精神科で疾患別リハをする条件

    精神療養病棟で疾患別リハを始める条件。令和2年診療報酬改定「精神療養病棟におけるリハビリテーションの推進」より

  6. うつ病のリハビリ

    【作業療法士の苦手克服講座】身近で知らないココロのハナシ(5)うつ病のリハビリ3つの方向性