目指す歩行はどこにある?〜正常歩行という考え方に疑問を持つ〜

正常歩行とは?

理学療法士であれば、リハビリの目標として「歩行再建」を掲げて介入することが多いと思います。
その際、「正常歩行」により近づけるというのが最大のテーマになっていると思います。

正常歩行とは、現代ではランチョ・ロス・アミーゴ方式で伝えられるものが主流となっており、力学的にも効率の良い歩行形式ということで療法士の間では一般的になっています。

正常歩行の獲得が目的?

正常歩行は力学的にも効率の良い歩行とされており、楽に歩くためには必要な要素です。

しかし、そこで一つの疑問が生じます。それは、そもそも健常者全員が正常歩行で歩いているのか?という疑問です。

療法士であれば一種の職業病かもしれませんが、職場のスタッフや、街ゆく人の歩行や動作を何気なく動作分析目線でみる癖があると思います。そこで、改めて歩行ウォッチングをしてみましょう。

きっと、色々気になるところが出てくるかと思います。その気になるところというのが正常歩行の形から逸脱した部分です。
少なくとも、正しいといわれている「型」からはズレているのはわかると思います。

では、皆さん正常歩行ではないので「正常歩行の型」通りに修正した方が良いと思いますか?答えは「NO」です。

目指すべき歩行はどこにある?

街ゆく人々をよく観察するとわかりますが、それぞれ条件が違います。
急いでいる人、荷物を持っている人、ヒールを履いている人、革靴の人、スニーカーの人、老若男女、それぞれの生活背景に沿った条件に合わせて「歩行」の形を変えています。

つまり、条件に合わせて形を変えられることが「正常」であり、「正常歩行の型」通りに歩けるのが「正常」ではないのです。

「歩行のかたち」は環境に適応しながら変化を続けています。病気が怪我の影響によって歩容が変わるのもその適応の一つです。ただ、病気や怪我によって変化した歩容になると、境に対して適応(変化)できない」ため苦労が生じます。

私たちが日常的な動作を意識せず実行できているのは、「環境に対して変化する能力」があるからです。
「正常歩行の型」にこだわりすぎて、型の反復練習に時間を費やしていませんか?
フォームも大切ですが、その前に動ける身体の構築が先です。そのためには機能解剖の知識が必要になります。

歩行に必要な関節は何処ですか?そこの可動性や筋力は十分ですか?これらと力学的知識と合わせることで歩行をみるということに対する思考の幅が増えると思います。「正常歩行」という概念にちょっとだけ疑問を持ってみてください。その疑問が、解決の糸口になっていきます。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀

 

 

 

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