心腎連関①〜心臓が悪くなると腎臓が悪くなる?〜

身体の機能は繋がっており、1対1対応ではない

疾患別リハビリテーションという枠で日々仕事をしていると、どうしてもオーダーにある主病名に対する介入を考えがちです。しかし、身体の機能というのは全て繋がっており、1つのトラブルに対して、2つ、3つと関連した障害が出てきます。そのため、考えることが増えたり、その関係性が複雑になり思考停止してしまうこともままあると思います。ただ、一見複雑に見える関係性でも、各々の機能や解剖を理解すると、実はそんなに難しいことではなかったりします。

心腎連関について

その中の1つとして心臓と腎臓の関係があります。端的にいうと、「心臓が悪くなると、腎臓が悪くなる」、「腎臓が悪くなると、心臓が悪くなる」ということです。

まずは、解剖学的な繋がりで見ていきましょう。心臓は全身に血液を送るポンプの作用を持っています。心臓から送られた血液は動脈を介して各臓器に行き渡るのですが、その中でも腎臓は全体の約20%の血液が集まります。腎臓だけで20%ということは、それだけ腎臓と血液の関係が深いということです。【心臓が悪くなると、腎臓が悪くなる】という背景には、①心臓のポンプ機能が低下することで(心不全等)、腎臓への血流量が減り、腎機能そのものが低下するということです(血液が入ってこないので機能が低下する)。また、②体静脈のうっ血により、静脈還流が悪くなり、腎静脈もうっ血し、腎静脈の血圧が高くなることで、腎臓に負担がかかります液が出て行かないので機能が低下する)

心不全の仕組み

そこで心臓のポンプ機能低下の結果である心不全のざっくりとした概要を考えてみます。
心不全には左心不全と右心不全があり、主に左心不全は「拍出機能の低下」右心不全は「拡張機能(全身の血液を心臓に受け入れる)の低下」とされています。

心筋梗塞を例に取ります。冠動脈の閉塞により左室のポンプ機能が低下し、心拍出量(全身に血液を送る量)が減ります。すると腎臓は血流量の低下を感知して血圧を上げ、血流量を増やすように作用します(レニン・アンジオテンシン・アルデステロン系)。そのほかにも交感神経系が働き、心拍数をあげて血流量などを増やそうとします。しかし、それが長く続くと心臓への負担が大きくなりますます心拍出量が低下していきます。心臓の代償機転)

拍出量が低下するということは、左室から血液が外に出にくい状態なので、その前にある左房、肺静脈、肺にどんどん血液が渋滞していき、肺うっ血になり左心不全の症状が出ます。

次に左心不全の状態が続くと、拍出出来ないために起こるうっ血が、肺よりも前の経路に出てきます。つまり肺動脈、右室、右房とうっ血し、心臓内が血液で満タン状態になり全身からの血液を受け入れることが難しくなるので体静脈がうっ血していきます(右不全症状)。

 

このように心臓が悪くなった結果、入ってくる血流量が少ない、流れが悪くなって血管全体がうっ血して高血圧状態になってしまうことで腎機能が低下していきます。

「腎臓が悪くなると心臓が悪くなる」ことについてはまた次回にしたいと思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師
理学療法士 中嶋 光秀

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