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変化する国家試験
2月末に言語聴覚療法を皮切りに、理学療法・作業療法の令和2年度国家試験が行われました。セラピストを目指す学生さんにとっては重要な2日間だったと思いまます
私自身も平成11年度の国家試験を受け現在理学療法士として働いていますが、私が受験した20年前とは、国家試験の内容が大きく変わってきています。流石に20年前の詳しい内容自体は覚えていないのですが、前回の第55回理学療法国家試験の問題をみると、その範囲の広さ、知識の深さや思考力が求められていることに驚きを覚えました。
令和元年度 第55回理学療法・作業療法国家試験
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp200414-08_09.html
国家試験からみえること
特に違いがあるのが、各設問で「考える」ということが試されているということ。単純な暗記では対応できない設問になってきています。
もちろん、脳画像やグラフから病状を予測するなんて設問は私の時代にはほとんどありませんでした。
設問の多くが「疾患について理解している前提」での問いが多く、「文面から何を拾って、どう判断するか?」いわゆる考える力が求められている、そんな感じがしています。
またその範囲が広さから、スペシャリストよりもジェネラリスト(単に浅く広くではなく、それなりの深さを求めてる)の素養を持つ人材を育成していきたい、そんな思惑がみてとれます。
臨床現場の変化
ではなぜこのような変化が起こってきているのでしょうか?もちろん、「療法士のレベルの底上げ」を狙っているのは当然です。
1番に感じるのは臨床現場の変化です。IAIRでは「マルチファクター」という表現をしていますが、簡単にいうと、患者さんの背景が多様性に富んできているということです。
人生100年時代と言われて久しい昨今、私の肌感でも80歳以上の高齢者の入院が増えています。つまり、高齢になるまで入院しなくても生活できていたという反面、高齢になって入院してくるということは、【多くの併存疾患を抱えた上で】本疾患のために入院してくる割合が高いということです。
「TKA術後の患者さんが心疾患を抱えてる」「脳卒中ですがインスリン注射しています」「主病名は脳卒中ですが透析をしています」等。整形のオーダでも内科・循環器・呼吸器疾患のフォローをし、かつ年齢的な配慮、退院後の生活や家族の問題と一人の患者さんの抱えているものが非常に多くなってきています。
国家試験最強説?
私も含めて、国家試験の設問に対し、さらっと回答できる人ってどのぐらいいるでしょうか?現場に即して試験が変化しているならば、現職の私たちはこれぐらいの知識があって当たり前という位置まで私たち自身が登らなければなりません。
セラピストの卵に求められているなら、現職者はできて当然。知ってて当然。そんな下からの押しあげを感じています。
ただ改めて思うのは、国家試験の内容を網羅できていれば、現在の臨床における多様性への対応も安心して対応できるだろうなということ。
もちろん私たちも人なので「忘れます」。全てのことを記憶はできません。だからこそ、国家試験問題を利用して振り返ってみてもいいのかもしれません。
スペシャリストの多い現職者の中には、国家試験以来、ほとんど触れていない科目や疾患もあるはずです。患者さんの疾患・生活背景が変化し、国家試験内容が変化しているならば、私達自身も変化に対応していかなければなりません。
年に一回の国家試験。私たちも自戒をこめて過去問と向き合ってみませんか?
最後まで読んでいただきありがとうございます。
リハカレ認定講師 理学療法士 中嶋 光秀