腰椎骨盤リズム 評価と筋へのアプローチ

腰椎骨盤リズムとは、体幹屈曲、もしくは伸展していく際の腰椎と股関節の運動学的関係性のことを指します。

 

腰椎骨盤リズム

簡単に言えば、それぞれの動く割合。

  • 体幹屈曲:股関節屈曲+腰椎屈曲
  • 体幹伸展:股関節伸展+腰椎伸展

腰椎や股関節に可動域制限があると、この腰椎骨盤リズムは崩れます。

 

分かりやすい例で言えば、立位前屈(FFD)で指を床につける際、ハムストリングスが短縮していると、股関節の動きが制限され、腰椎や骨盤帯の代償が出てくるというものです。

通常は、腰椎屈曲約40°と股関節屈曲約70°の組み合わせによってこの動作は行われますが、以下の画像を見て頂ければ、それぞれに制限がある場合の動きのパターンが分かります。

 

(画像参照 筋骨格系のキネシオロジー,原著者:Donald A.Neumann,監訳者:嶋田智明 ,有馬慶美,医歯薬出版株式会社)

 

前述のハムストリングスが短縮している股関節屈曲制限のパターンは図B。

図Aは通常の腰椎骨盤リズムによる屈曲、図Cは腰椎屈曲制限のパターンとなります。

 

腰椎骨盤リズムの評価とアプローチ

リハに来られた患者さんで、これらの動きが観察された際、どのようなプログラムを行えばよいでしょうか?

そもそもこのような可動域制限が起こってしまう原因は何でしょう?

本日は、腰椎骨盤リズムの評価からその原因に対するアプローチについて。

 

股関節屈曲制限

前述のハムストリングス短縮による腰椎骨盤リズムの崩れは、股関節屈曲制限の一つの要因でしかありません。

他の要因は何でしょう?

 

その一つが関節包の硬さによる制限。

 

股関節が屈曲する際、凹凸の法則により、大腿骨頭は後方へ滑ります。

関節包が固くなって制限があると、骨頭は滑ることが出来なくなり、股関節は屈曲出来なくなります。

 

FFDで指が床に付かない理由は、ハムストリングスの短縮によるものだけではないということになります。

 

ハムストリングスは短縮しやすい筋肉ではありますが、特に高齢者の場合、関節包の制限と並行して問題となっている場合が多いです。

ハムストリングスだけでなく、股関節の動きを制限している因子、今回で言えば関節包の問題にもアプローチしなければ、動きは変わらないかもしれません。

 

腰椎屈曲制限

写真の通り、腰椎の屈曲制限が起こると股関節は過度な屈曲の代償を求められます。

高齢の方で多いのは、反対の伸展制限ですが、中高年に多いこの腰椎屈曲制限。

 

何故起こるか?

 

一つの要因は、腰椎に過剰な負荷が掛かることで炎症が起き、腰椎を固定せざるを得ない状態。

急性腰痛症(ぎっくり腰)の患者に多いパターンです。

前傾すら出来ない患者が多い急性腰痛症ですが、腰椎の屈伸共に過剰な筋緊張で固定しているというパターンが多いのも特徴です。

 

そして、もう一つ臨床場面で多いと感じるのが、腸腰筋の機能不全によるもの。

ほとんどの急性腰痛症の患者さんが、この腸腰筋の機能不全を持っていると言っても良いかもしれません。

 

腸腰筋の機能不全

腸腰筋は、大腰筋と腸骨筋に分かれ、それぞれ大腿骨の小転子から腰椎横突起と腸骨に付着します。

特に大腰筋の硬さは、腰椎を固定してしまい、体幹屈曲での腰椎の動きを制限する因子となります。

大腰筋と腸骨筋間の滑走が無ければ、大腰筋は機能性を失い、結果腰椎が固定されてしまって腰椎骨盤リズムは崩れてしまうことに繋がっていきます。

 

参考:「大腰筋のアプローチについて」

 

変形性股関節症

腰椎屈曲制限に対して過剰な股関節の動きを続けた場合、股関節に掛かる圧迫力が増大する可能性があると言われています。

特に変形性股関節症のような既往がある場合、痛みや変性を助長するリスクが高くなります。

適切な腰椎へのアプローチが必要になるということです。

 

< 大腿骨頸部骨折のリハビリテーション 〜機能解剖の理解から術後から退院までの評価とアプローチ〜 >

大腿骨頸部骨折

・第1回 10月18日(火)
「骨折の疫学と術式の基礎知識 〜筋への影響から脱臼肢位まで〜」
・第2回 11月1日(火)
「リハビリの方向性と介入方法 〜急性期から回復期まで〜」


 

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