腰椎椎間板ヘルニアの評価指標として良く用いられるSLR。
正式名称はStraight Leg Raising(下肢伸展挙上)で、頭文字を取ってSLRと臨床では簡略して使われます。
仰向けに寝た状態で、真っ直ぐ一方の下肢を持ち上げて、その角度を観る検査法。
ヘルニアだけでなく、腰痛全般や膝に痛みがある患者さんでも硬いことが多いですし、CVA患者さんでも制限があることがあります。
その原因については、大腿後面の筋肉「ハムストリングス」の短縮...と言われていますが。
私は正直これは正確ではないと考えています。
間違ってはいませんが、正確ではないです。
ハムストリングスへのストレッチ
臨床で必死にハムストリングスをストレッチしている場面を多く見かけます。
確かに硬さはありますが、多くのセラピストは「何故硬くなるのか?」という視点が抜けているような気がします。
硬いからといってストレッチやマニュピレーションを行うだけでは、また同じように硬くなるのを防げません。
「何故硬くなるのか?」という視点がないと、いくらアプローチをして柔らかくなっても、その場しのぎで多くの場合次の日には戻っています。
ハムストリングスが硬くなる原因
ハムストリングスに限らず、身体の筋肉は「使わないと硬くなる」性質があります。
廃用で使われていない筋肉は、細く硬く短くなっていきます。
フニャフニャに柔らかいケースもありますが、例えば糖尿病などの疾患を持っている患者さんの筋肉は柔らかい場合が多いです。
では、ハムストリングスが使われる場面とはどんな時でしょうか?
主動作としては膝の屈曲ですが、この動き自体は通常の生活においてそれほど強い筋活動を伴いません。
骨の構造によって曲がる場面が圧倒的に多いですから。
それ以上に注目すべき作用は「股関節の伸展」動作。
もっと言えば「骨盤の前方推進」の動きです。
骨盤の前方推進
股関節の伸展の動きを、股関節を視点にした場合、骨盤が前方へ動きます。
この動きは、「歩行の立脚相」に相当しますね。
少しずつ見えてきたでしょうか?
現代人の多くは、移動に車や電車を使うことに慣れ、歩く機会が減ってきているといわれます。
実際私が住んでいる鹿児島は、車社会ですので、200-300m離れたお店にも車で移動している人がほとんどです。
すると、歩かないことによって下肢の筋肉は使われる機会が減り、痩せて硬くなってしまいます。
ハムストリングスの機能不全
骨盤を下から支えるハムストリングスが硬くなって機能しなくなると、骨盤は途端に下に落ちます。
骨盤の後傾です。
この姿勢の患者さん多いですよね?
骨盤が後傾すると、後方へグラつきやすくなりますので、その分重心は前に移ります。
姿勢のイメージが出来るでしょうか?
- 骨盤後傾
- 重心が前方移動
...お腹が前に出っ張っていませんか?
前面の腹筋群は働かなくなり、腹腔を支えるコアが機能せず、タプンと前にたるんでいる。
今回のタイトルにもなっていますね。
「SLRが固い人は、お腹はたるんでいる」
太っているからではなくて、身体のアンバランスによって、そのような姿勢になってしまうという意味です。
歩くときに働くハムストリングスが、歩く機会が減ったことで使わなくなり、硬くなった結果、姿勢が変化し、腹が前に出っ張るようになる。
この状況でハムストリングスを入念にストレッチする意味は何でしょうか?
原因はハムストリングスを使っていないことです。
原因ではなく、結果に対してアプローチしていて、根本原因は解消できていません。
動作指導をすべきではないでしょうか?
患者さんに「歩きましょう」ということではなく、ハムストリングスを使うような動作方法をお伝えするということです。
効率的にハムストリングスを機能させ、出来るだけ短期間に成果を上げるのが我々セラピストの役割ではないでしょうか?
歩くのが体にいいなんて誰でも知ってます。
何故それをするのかを明確に説明し、しかも効率的にやる方法を伝える。
それがリハビリのプロフェッショナルだと私は考えます。
効率的に下肢の筋肉を機能させる。
もっと言えば全身の筋肉を使えるようになるためには、適切なアプローチが必要です。
そういった視点を身に付けませんか?
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