【組織滑走法®】About TGA

IAIR conceptとは、解剖学・運動学・生理学などの基礎的な知識と、個々の心理面や生活背景を含めた個別性を重要視し、複雑に絡み合ったクライアントの要因を抽出して「統合と解釈」していく考え方です。

ICFで提唱される生活機能モデルの3つのレベルである「心身機能・構造」、「活動」、「参加」に制限が生じている時、どのレベルでも関連するキーワードは「不動(不活動状態)」と考えます。(1)

慢性疼痛のように原因が複雑化した症状に対してのアプローチでは、心理社会的な対応が重要視されています。(2)しかし、これは慢性疼痛に限ったことではありません。

ICFの概念に則ったリハビリテーションの提供には、生物心理社会モデルとしてアプローチしていくことが重要です。

そのため、IAIRでは「触れること(徒手アプローチ)」にとても大きな価値を見出しています。

「触れること(徒手アプローチ)」で生物心理社会的な要因の不動状態やその原因に対して変化のきっかけを生み、クライアントやその家族と対話を重ねゴールに向かっていくことがIAIR conceptです。

組織滑走法®( TGA : Tissue Gliding Approach )はIAIR conceptを表現した徒手アプローチと言えます。

人体を巡る血液・間質液・リンパ液などの循環不全は各細胞の代謝活動に影響を及ぼし、筋活動のみならず、神経伝達・内臓の働きにも影響を与えることが明らかになってきています。(3)

皮膚、脂肪組織、毛細血管、神経、筋組織、骨、臓器といった各器官をつなぐ結合組織の存在(線維組織ネットワーク)は、マイクロスコープ下で組織を貫く部分も確認されています。(4)


Photo by National Center for Advancing Translational Sciences

線維組織ネットワークの振る舞いは、各組織に働く応力の分散にも寄与していると考えられます。Thomas W. Myersが著書Anatomy Trainの中でも触れているTensegrityモデル(Richard Buckminster Fullerが提唱)が、それを説明しています。

Richard Buckminster Fuller

外科医であるJean-Claude GUIMBERTEAUはマイクロスコープを用いて、線維組織が応力に対応する様子を撮影しています。そこでは線維組織が「伸張、移動、分離」をしている様子が収められていました。

各組織間の線維組織が、その交点をずらしながら動くことで滑走を可能にして、生体としての連続性を保っている様子をIAIRは「線維性組織運動(Fibrous Tissue Motion)モデル」と呼んでいます。


FTM Model from 国際統合リハビリテーション協会 on Vimeo.

この線維組織の振る舞いが、生体内で毛細血管や神経組織を含めた各器官の連続性を保ちながら、自動および他動運動を可能にしているとIAIRは考えます。

TGAは主に皮膚、筋、関節に運動を加えます。その運動によって線維組織ネットワークに機械的な刺激が伝わり、線維組織に囲まれた微小空胞の形状が変化します。

The illustration that went viral in media reports about the interstitium. Jill Gregory, ©Mount Sinai Health System.

線維組織ネットワークの変化が各結合組織間の滑走を可能にし、その結果として液体の移動が起こります。

液体の移動と組織の剛性の変化については動物による実験が行われ(6)、運動器への影響だけでなく免疫機能への関与についても示唆されています。(3)

線維組織ネットワークは各器官を繋ぐ(安定性)だけではなく、組織間の滑走を生み出す(運動性、応力への対応)役割を担うであろうことから、運動の改善(不動の解消)に向けて鍵になる器官であると考え、TGAは組織間の滑走を重要視します。

局所的な不動状態を指す関節可動域制限や、全体的な不動状態を指す活動性の低下は、運動の過不足、誤った運動、栄養の過不足、といった生活習慣や環境要因、さらに心理的要因が複雑に絡み合った「個々の原因」があると考えられます。

TGAは「線維組織ネットワークが作る結合組織の滑走」を手掛かりにして、生活習慣、環境要因、心理的要因へ働きかけていきます。

触診によって得られるこわばった感触や、関節を他動的に運動させた際に感じる抵抗感は、結合組織間での滑走が生まれないことで現れている現象であるとIAIRは考えてます。

結合組織間の滑走と液体の移動という関係で見ていくと、浮腫、線維化、瘢痕化の病態の理解に繋がり、その症状に対する対処法が導かれます。

それらの現象に対してTGAでは具体的に、皮膚のスライドや押圧、関節運動を組み合わせて、深層・表層の結合組織間の滑走を促します。

弾性軟骨の結合組織


腱の結合組織

疎性結合組織


TGAを可能にする押圧や運動負荷量は「クライアントの状態」が決定します。つまり、クライアントにとって最適な刺激量によってTGAは行われます。そして、それはクライアントにとって快適な刺激となります。

TGAとは体表から、あるいは関節運動から得られた応力により線維組織ネットワークが作る微小空砲の形状を変え、毛細血管や神経組織を含めた運動の獲得を目指していく方法です。同時に快刺激により心理面への働きかけを可能にします。

骨の周辺に存在する深層の結合組織間の特徴は密性に結合していると言えます。深部の線維組織ネットワークに対しては体表(皮膚上)から加える応力に関節運動を組み合わせます。

浅層に存在する結合組織間の特徴は疎性に結合していると言えます。深層と比較して滑走が起こりやすく、皮膚のスライドなどで線維組織ネットワークの形状の変化が確認されます。


IAIRの技術を学んだ方々の声

IAIRのセミナーを受講し全身の筋や関節の触り方・テクニックが学べたことは勿論のこと、自分の姿勢や意識の向け方などで反応を感じ取る能力を身につけるきっかけとなりました。どんな疾患でも反応を感じ取れないと評価や介入が画一的になってしまうので、目の前の患者さんに対して個別的な介入を行うにあたって非常に重要な能力だと思います。

CCRA脳卒中包括的リハビリテーションアプローチ代表

脳梗塞リハビリセンター 赤坂センター長

福田 俊樹


ある患者さんの股関節伸展可動域を二人のセラピストAさんとセラピストBさんが計測しました。その結果、Aさんの結果は伸展20度、Bさんの結果は0度でした。その時患者さんから「申し訳ないけど、Bさんにやってもらうと私のカラダの力がうまくリラックスできなくて、カラダを預けられない感じです…」との感想でした。

このような違いがある二人のセラピストが徒手アプローチを行ったとしたら治療結果に大きな差が出ると思いませんか?

セラピストAは、効果的な施術には、セラピスト自身の心身の状態が影響することを知っていて、日々そのための努力を積み重ねていました。

臨床で結果が出る関わりをするために、心身の調整をする、そして、結果が出ないときは、まず自分自身の心身の状態を振り返る。その必要性、重要性をAセラピストは、IAIRと出会って学びました。

ちなみは、セラピストAは私です。「もっと早くIAIRに出会っていたら」とも思いますが、過去は変えられませんので、今後さらに精進していきたいと思っています。

一般社団法人 赤羽総合腰痛研究所 代表理事

選択理論心理士
国際マッケンジー協会認定療法士

赤羽 秀徳

(1)ICF(国際生活機能分類):第 1 回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会 参考資料
(2)慢性疼痛治療ガイドライン, 真興交易(株)医書出版部
(3)Structure and Distribution of an Unrecognized Interstitium in Human Tissues,Scientific Reports8, Article number: 4947 (2018)
(4)人の生きた筋膜
(5)ANATOMY TRAIN
(6)Strain hardening of fascia: Static stretching of dense fibrous connective tissues can induce a temporary stiffness increase accompanied by enhanced matrix hydration
(7)The microvacuolar system: How connective tissue sliding works
(8)European Fascia Research Project Report
(9)Transcapillary exchange: role and importance of the interstitial fluid pressure and the extracellular matrix
結合組織写真:Berkshire Community College Bioscience Image Library

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◆登録商標に関する記述◆

組織滑走法は
一般社団法人 国際統合リハビリテーション協会(IAIR)の登録商標です。

組織滑走法
登録商標第6186401号

IAIR(ロゴ)
登録商標第5779518号
登録商標第5779519号